HOME8.温暖化・気候変動 |シェールガス・油開発で、水圧破砕法の代わりにCO2注入の実験。石油生産量4~20倍増。ただ、シェール増産で結局、温室効果ガス排出増につながるリスクも。中国の研究チーム(RIEF) |

シェールガス・油開発で、水圧破砕法の代わりにCO2注入の実験。石油生産量4~20倍増。ただ、シェール増産で結局、温室効果ガス排出増につながるリスクも。中国の研究チーム(RIEF)

2019-06-03 14:33:02

CO21キャプチャ

 

 シェールガス・油の生産に使う水圧破砕法(フラッキング)で、水の代わりにCO2を注入することで、石油の生産量が4~20倍に増えるという研究結果が公表された。石油生産の増大と同時にCO2の地中埋設効果も期待できる。ただ、生産したガス・石油はCO2を排出することから、温暖化対策には逆行するとの指摘もある。

 

 (上の図は、実験した5つのサイトでの石油の増産状況)

 

 米学術誌「Joule」に中国科学院のXuehang Song氏、Yintong Guo氏、中国石油大学(北京)のJin Zhang氏らの中国チームが中国東北部吉林省の油井5か所で実験を実施した。研究結果は、5月30日付の米学術誌「ジュール(Joule)」に掲載された。

 

 通常のフラッキング手法では、水と化学物質の混合液を注入する。今回それに加えて、CO2を混入する手法を実施し、両者を比較した。フラッキングは、地中の岩石層(帯水層:水を含む透水性の地層)に高圧で流体を注入して亀裂を生じさせ、石油やガスを含む頁岩を採掘する方法だ。

 

 水を使った水圧破砕法は技術的には確立している。だが、大量の水を消費するほか、水ともに注入した化学物質が地表に噴出する懸念や、土中の粘土質の膨張で含まれるミネラル分による周辺環境へのダメージ、破砕による連続的な地震発生の問題等が指摘されている。これらの諸点の克服が水圧破砕法のコスト低下のカベになっている。

 

 そこで、研究チームは、水を注入する代わりに、CO2を注入する実験を行った。CO2の回収貯留(CCS)の開発への貢献も目指した。その結果、5つの調査地点での石油生産量は水圧破砕法の場合に比べてCO2を注入した場合の方が4〜20倍に増えたことがわかった。

 

 CO2だと、水に比べて帯水層の汚染が少ないほか、水圧破砕法で問題になる地震発生の規模も小さくて済むという。さらにCO2注入が安定的に図れるようならば、CCSを代替する低コストのCO2回収に活用できるとの期待もある。

 

 ただ、生産したシェールガス・油によりCO2排出量は増大する。それを上回るCO2削減効果が得られないと、結局はCO2削減対策にはならない。シェールガス・油の採掘に伴うCO2排出量の一定の圧縮効果に限定されるとの見方が多い。

 

 英エディンバラ大学のハンナ・チャーマーズ(Hannah Chalmers)氏は「CO2フラッキングによる最終的な環境上の利益が水によるフラッキングを上回る可能性はある」とする一方、「CO2フラッキングが総体として世界の温室効果ガスの排出削減につながるかを確定するのに必要な分析は、今回の研究に含まれていない」と慎重な見方を示している

https://www.cell.com/joule/pdfExtended/S2542-4351(19)30216-8