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ロシア、9月までにパリ協定に批准へ。政府が公式見解表明。温暖化の進行に対して理解。同時に天然ガス等へのグローバル需要の増大に対応。再エネ傾斜には警戒(RIEF)

2019-07-10 12:37:30

Putin1キャプチャ

 

 ロシアの副首相、アレクセイ・ゴルデーエフ氏は同国の環境及び外務省に対して、9月1日までに議会で合意できるよう、パリ協定批准の準備をするよう指示したと明らかにした。ロシアは世界で4番目の温室効果ガス排出国だが、同協定に批准していない国の一つとなっている。

 

 (写真は、G20で立ち話したプーチン氏とトランプ氏。「パリ協定からあなたは離脱したけど、私は入りますよ」と耳打ちしたかどうか)

 

 ロシア政府はコミュニケを発表し、ゴルデーエフ氏の発言は政府の公式見解とされた。9月23日にニューヨークで開く国連気候サミットまでに批准を済ませる方針。政府方針に基づき、同国議会にパリ協定批准の法案を提出することになる。

 

 ロシアはパリ協定に署名はしているが、批准はしていない。ただ、年初以来、批准をめぐって政府内で調整を続けていた。首席気候アドバイザーのRuslan Edelgeriev 氏が協定批准問題に照準を合わせた論点整理の準備を行っていることを明かし、政府に分析結果を提出していた。http://rief-jp.org/ct8/86898

 

 パリ協定への未批准国は現在、ロシアを含め12カ国となっている。

 

 ロシア政府の発表によると、「国連の気候サミットまでに批准プロセスを始める必要がある」と述べている。協定への批准によって、ロシアがCO2削減に関する国際ルールづくり等の交渉に参加する機会を得ることができる、としている。

 

ロシアから欧州に延びる天然ガスパイプライン建設工事
ロシアから欧州に延びる天然ガスパイプライン建設工事

 

 さらに、温暖化対策がグローバルに求められているとともに、天然ガスなど低炭素なエネルギーへのグローバルな需要のシフトが起きていることを重視。「世界の電力産業は、より低炭素な方向に向かっている。このことは、よりグリーンなエネルギーを生産できる国にとって有利な状況だ」と、エネルギー政策との連動性を強調している。

 

 プーチン大統領も9日、エカテンブルグで開いた国際会議に出席、北極圏での気温上昇が地球の他の地域よりも急速に上昇していることを指摘。「自然と気候の悪化が進行している。さらに干害、農作物の不作、自然災害等がより急速に進んでいる」と危機感を強調した。

 

 一方でプーチン氏は、再生可能エネルギー重視の動きに一石を投じる発言をした。「再エネは原子力や化石燃料に完全に置き換えられるものではない。(再エネを絶対とするのは)簡単すぎ、目立つが、問題解決には非効果的なソリューションに過ぎない」と批判した。

 

 その理由として「だれもが風力発電は環境にいいと知っている。だが、バードストライキングでどれだけの鳥が風車によって死んでいるのかも知っているのだろうか。風車の振動によって、どれだけの地中の虫たちが間違って地上に出てしまうことを知っているのだろか。これはジョークではない」と問題を提起した。

 

 プーチン氏による再エネ発電へのけん制は、欧州の環境NGOなどが温暖化対策で石炭のみならず、天然ガスを含めてすべての化石燃料の利用を停止する主張を高めていることを意識したものと思われる。ロシアにとって、温暖化の進行を止めることは、北極圏等に豊富に存在する同国の天然ガス資源を開発・販売することと一体のようだ。

 

http://government.ru/news/37270/