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異常高温の影響で北極圏での山火事、6月だけで100件以上。CO2排出量は歴史的な水準に。スウェーデンの年間排出量と同量。温暖化を加速する影響も。世界気象機関調べ(RIEF)

2019-07-13 22:40:46

arcticfire1キャプチャ

 

  世界気象機関(WMO)の衛星を使った観測によると、北半球の各地で続く例年にない高温と乾燥の影響で、北極圏での山火事が多発しているという。6月以降で100件以上も確認された。同月の山火事の影響だけで5000万㌧のCO2が放出された。このCO2量はスウェーデン一国の年間排出量と同じだ。

 

 (写真は、延々と燃え続ける北極圏での山火事)

 

 WMOの衛星監視システム「 Copernicus Atmosphere Monitoring Service(CAMS)」 の観測データでわかった。この夏は欧州各地で高温と熱波が相次いでいるが、北極圏のシベリアの6月の平均気温は1981~2010年の平均より約10℃も高かった。米アラスカ州でも観測史上、二番目に暑い6月となり、7月4日には32℃を記録している。

 

 CAMSによると、こうした異常高温の影響で、6月の北極圏での山火事から放出されたCO2排出量は、2010~18年の9年間の同月の合計排出量を上回ったという。つまり、今年同月は最近の平均排出量を9倍以上も上回るCO2量を森林火災によって引き起こされているということになる。

 

高温に見舞われている今年のシベリア、アラスカ地方
高温に見舞われている今年のシベリア、アラスカ地方

 

 山火事で発生するのはCO2だけではない。窒素酸化物や、光化学オキシダントの原因物質となる非メタン有機水素(NMVOC)、有毒な一酸化炭素(CO)、粒子状物質(OM)なども排出される。これらの有害物質も、それぞれ過去にはない規模で大気中に拡散されていることになる。

 

 北半球では毎年5~10月にかけて、山火事はよく発生する。しかし、WMOによると、北極圏のような高緯度で多数の山火事が発生するのは、例年にはない現象としている。同地域での山火事は周辺に消火体制が十分に整っていないため、いったん発生すると長期間燃え続けるという特徴もある。

 

 その結果、山火事による消失面積の範囲は通常以上に大きい。シベリアやアラスカでそうした大規模山火事が目立つ。観測データによると、山火事の中には、サッカー場10万個分の広さの焼け跡や、大西洋のカナリア諸島の観光地として有名なランサローテ島(Lanzarote:面積845.9 km²)よりも大きい場合もあるという。

 

針葉樹林帯の消失量は過去1万年で最も多い
針葉樹林帯の消失量は過去1万年で最も多い

 

 カナダのアルバーター州での山火事の場合、サッカー場30万個分以上の規模に達したと見積もられている。6月だけでなく、今年上半期だけで、CAMSは北極圏全体で400件の山火事を確認している。その後も、次々と新たな火災が発生している。

 

  北極圏地域は、地球全体に比べて温暖化の進展スピードが早いことで知られる。今年は平年に比べて気温上昇が著しいことから、森林全体が乾き、火災に反応し易くなっているという。最近のある調査では、北極圏周辺の針葉樹林の森林は、過去1万年間でもっとも高い比率で燃えていると指摘している。

 

 一方、山火事が温暖化を促進する影響も引き起こしている。山火事による煙が周辺にまき散らすスス等が北極圏の雪や氷の上に例年以上に降り積もることで、太陽光の吸収量が増え、海氷等の溶融を加速させるという影響だ。またシベリア等の永久凍土の溶融も進める。CO2よりも温暖化効果の大きいメタン類の放出を促進する懸念も出ている。

 

 温暖化の影響による熱波や高温が、森林火災を誘発、その火災の長期化・多発の影響で、北極圏の環境が悪化、温暖化を加速する物質や現象の増大・拡大でさらに温暖化が進む悪循環が始まっているともいえる。

 

 過去、北極圏の山火事では、2014年にカナダで発生した大山火事では、700万エーカーの森林が消失、1億300万㌧のCO2が排出された記録がある。これはカナダ全土の森林や植物が年間に吸収できるCO2量の半分相当分を失ったという。山火事による温暖化加速の悪影響は極めて大きい。

 

https://public.wmo.int/en/media/news/unprecedented-wildfires-arctic