HOME8.温暖化・気候変動 |翼に客室も燃料タンク等もすべて組み込んだ新デザインの航空機「フライングV」開発にKLMオランダ航空が参画。燃費効率20%改善。2040~2050年に実用化の見通し(RIEF) |

翼に客室も燃料タンク等もすべて組み込んだ新デザインの航空機「フライングV」開発にKLMオランダ航空が参画。燃費効率20%改善。2040~2050年に実用化の見通し(RIEF)

2019-07-20 17:53:14

KLM1キャプチャ

 

  オランダのKLMオランダ航空は、同国デルフト工科大学の研究チームが考案した、客室や燃料タンク、貨物室を全て主翼に組み込んだV字型機体の低燃費旅客機「フライングV」の開発支援を公表した。同規模の乗客搭載能力を持つエアバスA350に比べて燃費効率が20%改善でき、CO2排出量削減につながる。実用化は2040~50年頃の見通し。

 

 フライングVは、ユストゥス・ベナド(Justus Benad)氏が独ベルリン工科大学在籍時に考案した。その後、オランダのデルフト工科大学の研究チーム(プロジェクトリーダーはロエロフ・フォス氏)が発展させた。

 

   チームは、今年9月にフライングVのスケールモデルの試験飛行を実施する計画。さらに10月にはアムステルダム・スキポール空港で開催されるKLMオランダ航空の創業100周年記念イベントで、新デザインの客室のモデルルームを公開するという。

 

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 航空機はCO2排出量の多さが指摘されている。現在、グローバルなGHG排出量の2.5%が航空機から排出されている。現状のままだと、2050年には排出量は43G㌧になり、比率は5%に倍増する見通しだ。航空機の場合、CO2の排出と同時に窒素酸化物(NOx)も大量に排出する。

 

 国際民間航空機関(ICAO)は、国際線の航空機が飛行中に排出する温室効果ガス排出量を、2020年の水準で維持する基準を導入。21年以降の増加分については排出枠の購入を各航空会社に義務づけるルールを決めている。ルールが守られるとCO2排出量は安定するが、削減にはつながらない。http://rief-jp.org/ct4/64928

 

 研究チームは将来的にはカーボンフリーの航空機を目指すが、フライングVをそこに向かう中間的な機種と位置付けている。同機の定員は314人で、エアバスの新型機「A350」の300~350人とほぼ同じクラスとなる。ただし、燃料消費量はフライングVがエアバスA350-900型機に比べると約20%少ないという。

 

おしゃれな感じでもある
おしゃれな感じでもある

 

 フライングVが燃料効率を高めることができるのは、客室等を主翼に組み込んだV字型機体の設計が空気抵抗を低減できる点が大きい。また機体の軽量化も燃料効率の向上につながっている。

 

 フライングVの翼幅はA350と同じ65mで、空港の既存のインフラをそのまま利用できる利点もある。

 

 航空機のCO2排出量を抑制するため、自動車と同様、電気飛行体に切り替えるアイデアもある。ただ、研究チームでは、「電気飛行機は機体が非常に重くなるため、乗客を乗せて大西洋を横断することはできない。今は無理だし、2030年以内の実現も無理だろう」としている。

 

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 既存の技術を積み上げて燃費消費量を減らす方式は、自動車のハイブリッド車の開発にも似ている。

 

https://www.designboom.com/technology/flying-v-airplane-klm-tu-delft-06-03-2019/