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豊富な天然ガスで業界変容 石炭不動の地位から転落(WSJ)

2012-04-11 18:38:34

PG&Eの天然ガス火力発電所
天然ガス価格の下落で米業界はこれまで見たことのない状況となり、西部の安価な石炭は火力発電の燃料としての不動の地位から転落しつつある。 10日の天然ガス先物相場は100万BTU(英熱量単位)当たり2.0331ドル(164年)と、2ドルをわずかに上回る、2002年1月以来の低水準で終わった。

PG&Eの天然ガス火力発電所




業界にとってのショックは今年夏に増大する可能性がある。米国では天然ガスの貯蔵スペースがなくなりそうなためで、これによって価格は何十年かぶりの低水準に落ち込む可能性がある。パイプライン運営大手キンダー・モーガンのフレッド・メッツガー副社長(ガス貯蔵エンジニアリング担当)は、状況は「間違いなく、前代未聞だ」と話した。

 天然ガスの余剰はさまざまな業界に影響を及ぼす。ガスを生産しているエネルギー企業の売上高は減少しており、より利益率の高い石油を探している。安いガスはまた、火力発電市場でのシェアを石炭から奪い、最も重要な顧客にそっぽを向かれた鉱山業界には陰鬱な空気が広まっている。

 石炭輸送が単一の収入源として最大である鉄道会社も打撃を受けている。原子力発電所建設業界、風力発電や太陽光発電設備の業界も不安定になったように見える。

 最大の勝利者は電力需要家だ。ボストンの公益事業会社NSTARは2月、経済界の顧客に対して、電気料金を今春、1キロワット時(KWH)当たり8.5セントから5.5セントに34%引き下げると伝えた。5月には家庭向け料金の引き下げも発表すると見られる。

 米国の多くの地域では、ガス価格の下落によって、電力卸売価格は1KWH当たり2~3セントに下がっており、これを受けて電気料金が引き下げられている。例えば、OGEエナジーの子会社オクラホマ・ガス・アンド・エレクトリックは伝統的に、ワイオミングとモンタナ両州にかかるパウダー・リバー盆地で取れた石炭を燃料にして、二つの火力発電所で発電してきたが、発電計画を担当するジョン・ウェンドリング氏によると、最近になってこれが変わり始めた。

 同氏によれば、二つの最も効率的なガス火力発電所が石炭を追い出して、顧客に利益をもたらしている。同社は、今年夏にはアーカンソーとオクラホマ両州での電気料金を引き下げる見込みだという。

サンフォードCバーンスタインのエネルギー業界アナリストは、電力会社は今年、ガスを使った発電量を4億5000万メガワット時(MWH)増やし、年間のガス消費量は3兆3000億立方フィート増えると予想している。これは昨年の米国の天然ガス消費量の13.5%に相当する。

 確かに、石炭は完全には姿を消さないだろう。一部の石炭火力発電所は重要な場所に設置されており、電力供給を維持するのに必要とされている。また一部の公益事業会社は契約で石炭引き取りの義務があり、これをやめれば多額の違約金を取られる。

 天候も予測不可能な要因で、発電での石炭とガスの消費を決定する最大の単一要因だ。気温が高く、エアコン使用が増えれば、公益事業会社は多くの発電所を運転し、そのガスと石炭の消費量は増大する。そうなれば晩夏までには天然ガス貯蔵庫が満杯になることが避けられる可能性がある、と一部の専門家は見ている。

 しかし、他の人たちは、貯蔵庫は既にいっぱいで、依然として過剰生産が行われていると述べている。

記者: Russell Gold、Rebecca Smith、Daniel Gilbert  

http://jp.wsj.com/US/Economy/node_424344?mod=WSJFeatures