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EU欧州委員会副委員長のカタハイネン氏、「気候変動対策にEU予算の4分の1を充当」と言明。民間資金を同分野に誘導(各紙)

2019-08-16 15:42:54

EU1キャプチャ

 

 日本経済新聞の報道によると、EU欧州委員会のカタイネン副委員長は、同紙に寄稿し、環境政策などを含む持続可能性の戦略を推進し、気候対策分野への民間投資を増やすため、EU自体が次期予算の4分の1を気候変動関連に充当する考えを示した。

 

 (以下は同氏の寄稿文より)

 

 サステナビリティ(持続可能性)は地球の最重要課題である。欧州のビジョンは明快だ。我々は質の高い職や活発なビジネス、技術革新、(温暖化ガス排出をゼロにする)気候中立を伴う持続可能な経済を追求する。科学的根拠は疑いようがない。世界の若者が断固とした行動を求めている。

 

 EUの欧州委はこの5年間、持続可能な経済に移行するため、世界で最も野心的な対応をとってきた。人々の心持ちを「使い捨て」から「サーキュラーエコノミー(循環経済)」に変えるため、欧州委は2015年に循環経済行動計画を採択し、プラスチックなどで成果を出した。この計画はごみを減らし、原材料をリサイクルし、水を再利用する道を切り開いた。

 

 EUは30年までに温暖化ガス削減や再生可能エネルギー、省エネの目標を達成するつもりだ。欧州委の長期ビジョンは50年までにEUがどのようにして排出がゼロの経済を構築するか概略を示した。この実現には多額の投資が要る。試算では30年の目標達成に年間1800億~2900億ユーロの追加投資が必要になる。

 

 目標達成に向けて投資を増やすための3つの方策を紹介したい。まず欧州委は21~27年のEU予算の4分の1にあたる3200億ユーロを気候変動関連に割くよう提言した。

 

 2つ目はすでにEUが提供する民間投資を促すために一部のリスクを補う公的手段だ。現行の「欧州投資計画」の多くは気候変動関連に資金を供給しているが、後継として提案されているプログラムは支出の30%を持続可能な分野にあて、2千億ユーロの投資につなげる。

 

 3つ目は民間の資金の流れを持続可能分野、気候変動分野の目標達成に向けさせることだ。何が持続可能な事業かの分類を明確にし、EUの環境債の発行基準をつくった。持続可能な金融商品を示すEUエコラベルもある。めざすのは、投資家に事業の持続可能性の透明性を与えることだ。

 

 持続可能性に投資することでEUは市場経済の強化と、気候変動の緩和を両立している。利益をもたらす経済と、持続可能性はともにある。我々はすでに経済成長と温暖化ガスの排出削減が矛盾しないのを目の当たりにしている。持続可能な経済の可能性は大きい。

 

 次期欧州委員長に決まったフォンデアライエン氏は自身の政策集で就任100日で「(環境関連の総合対策)グリーンディール」をまとめると表明した。これは世界で初めて排出ゼロの大陸になるという我々の約束を後押しするものだ。持続可能な投資をしやすい環境を整え、技術革新や研究開発により焦点を当てる。経済を再設計し、新しい産業政策を導入することが正しい道である。

 ユルキ・カタイネン氏(Jyrki Katainen) フィンランドの首相や財務相を経て、2014年から現職。成長や投資、競争力を担当する。47歳。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190816&ng=DGKKZO48612450V10C19A8FF8000