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米カリフォルニア州など23州等、州の自動車燃費規制権限の維持を目指し、トランプ政権を裁判所に提訴。米地方自治の原則も揺らぐ。自動車メーカーは板挟みに(RIEF)

2019-09-23 07:47:38

California1キャプチャ

 

 米カリフォルニア州など23州とワシントンDC、ニューヨークとロサンゼルス市は、トランプ政権がカリフォルニア州の自動車環境規制権限をはく奪する方針を示したことの撤回を求めて、連邦裁判所に提訴した。トランプ政権の方針は、米国の環境規制や地方自治の原則を根本から問い直すことにつながるため、法廷での展開が注目される。

 

 トランプ政権は就任以来、オバマ前政権が導入した環境規制の緩和を進めてきた。今回は、さらに一歩進め、カリフォルニア州等がオバマ政権の施策を深めて、州法による自動車の燃費基準の強化策を標的にした。米環境保護局(EPA)が19日、自動車燃費基準の大幅緩和とカリフォルニア州の権利の無効化を発表した。

 

  カリフォルニア州の提訴は、こうしたトランプ政権の措置に対する対抗策だ。他の州も同様の影響を受けるとの懸念から、訴訟に参加し、「州vs連邦」の構図となった。カリフォルニア州大気資源局(CARB)のニコルズ局長は「我々にとって一生に一度の闘いだ。しかし、勝利を確信している」とコメントしている。

 

 トランプ政権による燃費規制の緩和策は「SAFE車両規則」。オバマ政権時代に定められた現行基準値の緩和を目指す内容。現行基準は、2026年型車まで1ガロン当たりの走行距離が54.5マイル(リッター換算21.1km)以上となるよう、年ごとに燃費改善目標を段階的に定めている。これに対しSAFE規則は、2021~2026年型車の基準値を、2020型車の目標値である37マイル(リッター換算15.6km)に据え置く、としている。

 

 カリフォルニア州は2013年に大気浄化法(Clean Air Act)209条に基づき、連邦の排ガス規制適用の除外(Waiver)が認められてきた。同州は1960年代から米国の環境規制の先頭に立ってきた歴史がある。今回のトランプ政権の方針は、こうした同州のWaiver権をはく奪し、連邦政府に先占権(preemption rule)を認めることになる。

 

 しかし、トランプ政権の主張は、米自治体の法的権限の基本である「ディロンの法則」を覆すことにもなりかねない。同法則は1868年に、当時アイオワ州最高裁の判事であったディロン(John F. Dillon)が示した判断。「地方自治体の起源は州議会に帰し、その権限はすべて州議会から引き出され る」というもの。トランプ政権はそれを超えて「すべての権限は連邦に帰する」方針を示したことになる。

 

 カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は同州の環境規制の歴史を無視し、米国の地方自治の基本原則も変更しようとするトランプ政権に対して強い不信感を示している。同知事は18日、「自動車排ガス問題に真剣に取り組まないと、効果的な気候変動対策にはならない。今回の訴訟は気候変動議論での転換点。カリフォルニア州だけの問題ではなく、世界のリーダーシップの問題だ」と訴訟の理由を述べている。

 

 国と州の真っ向からの対立の間に挟まれた格好になったのが自動車メーカーだ。このうち、フォード、ホンダ、フォルクスワーゲン、BMWの4社は、州との調整で自主基準を制定しようとして、米司法省(DOJ)から反トラスト法(独禁法)違反の疑いで調査を受ける事態も起きている。https://rief-jp.org/ct4/93636

 

 訴訟に発展したことで連邦政府と州の対立は長引くことが予想される。米系メーカー3社やトヨタ、フォルクスワーゲンなどで構成する米国自動車工業会(AAM)も身動きできない状態だ。全米一の自動車市場であるカリフォルニア州の自動車燃費規制を前提として、将来のゼロエミッション車の開発に力を入れてきたメーカーも、先が読めなくなっている。

 

https://www.theguardian.com/us-news/2019/sep/20/california-and-23-other-states-sue-trump-to-stop-ban-on-auto-emissions-standards