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ロシア、パリ協定に批准。人間活動による気候変動の影響を重視。トランプ米政権と温暖化認識での違いを強調。北極圏での開発等には積極姿勢。残る未批准国は11カ国(RIEF)

2019-09-24 23:12:07

Putin1キャプチャ

 

  世界で4番目の温室効果ガス(GHG)排出国のロシアが遅まきながら、パリ協定を公式に批准した。国連の気候行動サミットに出席したロシアのプーチン大統領の気候アドバイザーが表明した。条約の批准権を持つロシア議会が承認、協定締結の法令も制定した。この結果、いまだ批准していない国は、イラン、イラクなど11カ国だけとなった。

 

 (写真は、北極圏のバレンツ海にあるフランツヨセフ諸島を視察に訪れたプーチン大統領㊨とメドベージェフ首相㊥、ドンスコイ自然資源相㊧、2017年3月)

 

 ロシアの副首相、アレクセイ・ゴルデーエフ氏は7月、同国の環境及び外務省に対して、9月1日までに議会で合意できるよう、パリ協定批准の準備をするよう指示したと明らかにしていた。https://rief-jp.org/ct8/91679 http://rief-jp.org/ct8/86898

 

 国連サミットに出席した大統領の気候アドバイザー、Ruslan Edelgeriev氏は、協定批准の国内手続きが完了したことを明らかにした。「ロシアは1990年比ですでに温室効果ガス(GHG)排出量の削減でリーダー的な役割を果たしている。排出量はすでにこの間、半減している」と、成果を強調した。

 

ヒソヒソ、ニヤニヤ
ヒソヒソ、ニヤニヤ

 

 ただ、ロシアは旧ソ連時代の1980年代後半から90 年までは計画経済時代の統計で排出量も高く計算されていた一方、91年12月のソ連解体以降、経済低迷期が続き、90年のGHG排出量をベースラインとして達成することは他の国に比べて容易だったとされる。

 

 Edelgeriev氏は「さらにわれわれは、グローバルなCO2排出削減と吸収の面で大きな貢献を続けている。それは亜寒帯のシベリア地域の森林源によるCO2吸収である。『地球の肺』を維持している」と強調した。ブラジル・アマゾンの森林伐採・火災が国際的な懸念を集める中で、「もう一つの肺」としてシベリアの森をアピールした形だ。

 

 ロシアの批准はプーチン政権の意向ではあったが、産業界の反対等が強く、サミットまでに政府・議会の合意を取り付けるのに時間がかかった。メドベージェフ首相が協定締結の法令に署名したのは、まさにサミットのその日だったという。

 

 ロシアの協定批准には様々な評価と疑念が漂うが、トランプ米大統領が協定から離脱した後に、ロシアが協定に批准したことは意味を持つ。WWFロシアの climate programme directorのAlexey Kokorin氏は「ロシアは気候問題の重要性を理解している。気候変化に対する人間活動の影響を否定していない。それだけでも重要だ」と評価している。

 

 Greenpeaceの気候担当者、Vasily Yablokov氏も「グローバルな気候変化による壊滅的被害を防ぐには、迅速に機会を逃さず行動する必要がある。旧来の化石燃料発電を維持しようとしたり妥協している時間はもうない。この点でロシアの行動は非常に重要だ」と指摘している。

 

 ロシアは温暖化のメリットとして、北極圏での資源開発や北極海航路の開設等を重視している。ロシアの協定批准の背景では、ドイツ、フランス、北欧諸国などのEUの国々が、ロシア政府に対して働きかけを続けてきたことも指摘されている。

 

 ロシアの協定批准で、残る未批准国は、アンゴラ、エリトリア、イラン、イラク。キルギスタン、レバノン、リビア、オマーン、南スーダン、スリナム、イエメンの11カ国となった。

 

http://government.ru/en/