京都・舞鶴市で、国内最大規模のパーム油100%燃料のバイオマス発電所計画。カナダ企業が推進。毎年、舞鶴市とほぼ同面積のインドネシアの熱帯雨林を燃料化。地元住民ら反対表明（RIEF）
2019-10-23 22:56:09
京都府舞鶴市の舞鶴港の府有地に国内最大規模の輸入パーム油を燃料としたバイオマス発電所の建設計画が進んでいる。事業者は、燃料は「持続可能なパーム油のための円卓会議（RSPO）」認証を得たインドネシアのパーム油に限定するとしているが、年間のパーム油使用量は同市の総面積の87%に相当する。毎年、同市の広さとほぼ同規模の熱帯雨林が失われることになり、地元住民らから反対の声が高まっている。
（写真は、パーム油農園造設のために皆伐され、焼き払われた熱帯雨林）
地元の報道などによると、このバイオマス発電事業はカナダのトロントを拠点とする再エネ事業会社Ampの日本法人。すでに事業会社として昨年7月、「舞鶴グリーンイニシアティブ合同会社（MGI）」を地元に設立している。同社のサイトによると、建設地は同市喜多地区と舞鶴港喜多埠頭の府有地計約3.8ha。
バイオマス発電所は日立造船が建設、運営保守も担当する。発電機は、バルチラ社製ディーゼルエンジン8台で発電する。発電量は6万5590kW、一般家庭約12万世帯の年間消費電力に相当。年間約12万㌧の輸入パーム油を燃料として利用する計画だ。
パーム油燃料のバイオマス発電としては国内最大規模で、2022年11月からの稼働を予定しているという。発電量は固定価格買取制度（FIT）を利用して全量を関西電力に売電する。
MGIが10月10日にHPで公開したデータによると、燃料調達は①経済産業省ガイドラインに従う「RSPO SG認証」を取得し、栽培工程までのトレーサビリティが確立された燃料に限定②インドネシアでの生物多様性の高い土地の保護、違法森林伐採や土地利用変化のないことを確認③GHG排出量削減に貢献する、としている。
建設予定地の西側には住宅地が広がる。このため、高さ10mの防音壁や同17mの煙突を建設。最寄りの民家から防音壁までは約90mの空間を設け、騒音や振動対策に配慮、市との間で、通常より厳しい規制値を定めた協定を締結する、などとしている。
ただ、地元の住民や環境NOG等は、RSPO認証のパーム油でも、大規模な森林開発を前提としているため、現地の生態系への影響、CO2吸収力の低下等の問題を長期に引き起こす懸念があると批判。今年7月、計画見直しと燃料の持続可能性基準の策定を求める要望書を国や府、市、日立造船に提出している。
こうした反発を踏まえて、MGIのサイトでは、「燃料調達は、経済産業省ガイドライン要件に従っている」ことや、GHG排出量の算定は、環境省のプログラムに従っていることを紹介し、制度的に問題がないことを強調している。
しかし、地元住民で組織する「舞鶴西地区の環境を考える会」では、同地に先行する形で、2017年に福知山市で建設されたパーム油発電所が稼働後、近隣地域への騒音、悪臭など環境被害が起きている問題点を指摘。舞鶴の場合、福知山の発電所の40倍の規模であることに懸念を深めている。
発電所は1基当たり940kℓのタンクにパーム油を貯蔵することから、台風や地震等でタンクが破損した場合に、最大1万5000kℓもの大量のパーム油が流出する懸念もあるとしている。住民団体らは「事業会社は、現時点で具体的な海洋汚染対策は示していない」と批判している。
バイオマス発電には、多様な燃料源が活用されるケースが多い。発電に際してGHG削減につながるとしても、生態系への影響や、燃料輸送・稼働時の事故リスク等への配慮を無視にはできない。欧州ではグリーン事業でも、他の環境・社会課題への影響を精査する「Do no significant harm assessment（DNSHA）」のルール化が進められている。「グリーン事業」が、実は「グリーンウォッシュ事業」に転じていないかどうかを、確認する必要がある。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/24179
Research Institute for Environmental Finance