HOME8.温暖化・気候変動 |2018年の温室効果ガス排出量、過去最高の553億㌧。「2.0℃目標」達成には、2030年時点で150億㌧削減、「1.5℃目標」達成には毎年7.6%ずつ削減が必要。国連環境計画が報告書(RIEF) |

2018年の温室効果ガス排出量、過去最高の553億㌧。「2.0℃目標」達成には、2030年時点で150億㌧削減、「1.5℃目標」達成には毎年7.6%ずつ削減が必要。国連環境計画が報告書(RIEF)

2019-11-26 21:33:54

UNEP2キャプチャ

 

  国連環境計画(UNEP)は26日、2018年の全世界の温室効果ガス排出量が前年比2.0%増の553億㌧(CO2換算)と過去最悪だったとの報告書を出した。気候変動の激化を防ぐための「2.0℃目標」を実現するには、2030年時点での温室効果ガス排出量を150億㌧削減する必要があると指摘。「1.5℃目標」達成のためには2020年~2030年の間、前年比で年7.6%ずつ減らす必要があるとして、パリ協定で各国が公約した国別削減貢献(NDCs)の大幅見直しを求めている。

 

 報告書は、「Emissions Gap Report 2019」。18 年までの10年間は毎年平均1.5%ずつ増えた計算だ。各国がNDCsを実践しても、2030年時点の排出量は560億㌧にまで増大すると予測。協定が目標とする産業革命前からの気温上昇を2℃に抑えるならば、30年時点で150億㌧、1.5℃に抑えるならば、320億㌧分を減らす必要があると指摘している。

 

UNEP3キャプチャ

 

 320億㌧の削減は、現状の排出量の約6割分の削減となる。UNEPは1.5℃目標の達成は厳しいものの、不可能ではないとしている。大幅な温室効果ガスの排出量削減のためには、1.5℃目標の場合、NDCsの対策は5倍、2℃目標の場合は3倍、対策を強化する必要があるとしている。

 

 達成のための政策として、各国での再生可能エネルギーの一段の普及拡大のほか、省エネの強化、ビルや運輸部門の低炭素化等をあげている。これらの事業を実現するには、グローバルベースで20~50年の間に、毎年1.6兆~3.8兆㌦の投資が必要になると主張している。

 

 温室効果ガスの排出量が最も多いのは中国。世界全体の4分の1(26%)を占める。中国の排出量は2014~16年の間は鈍化していたが、17年以降、増加基調に転じ、18年は前年比1.6%増で過去最悪の137億㌧を排出した。次いで米国13%、EU8.5%、インド7%。これら4カ国・地域が4大排出源で、排出量全体の55%を占めた。

 

低下する再エネコスト
低下する再エネコスト

 

 4大国に続くのが、ロシア(4.8%)、日本(2.7%)、国際運輸(航空、海運合計2.5%)。これらを合計した7大国・地域・機関の排出量は全体の65%に達する。

 

 報告書は各国のNDCsの達成見込みや対策についても分析している。日本のNDCsについては、目標よりも実際の排出量は0%~15%上回る可能性を指摘。

 

 そのうえで、環境省が発電部門の低炭素化促進のための3つの対策を打ち出したことに言及。そのうち、計画中の石炭火力発電事業に対するアセスメント強化策については、環境省は計画中の石炭火力事業を停止する効果的な権限を持たないため、そうした対策の効果が十分でないことを指摘している。

 

UNEP1キャプチャ

 

 再生可能エネルギー事業については、2020年4月から大規模太陽光発電の建設事業について環境影響評価法を適用するほか、経産省による固定価格買取制度(FIT)の適用対象見直し策を紹介している。

 

 報告書は「これらの日本の新ルールはビジネス規律の確保につながるだろうが、大規模太陽光発電事業の普及スピードを抑制するだろう」と、排出削減対策につながらないとしている。

https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/30797/EGR2019.pdf?sequence=1&isAllowed=y