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ロシア・モスクワは「異常に暖かい冬」。クリスマスでも雪は無し。植物園ではシャクナゲ等が開花。温暖化がもたらすプラス効果への期待と、広がるマイナス効果への不安(RIEF)

2019-12-27 08:07:42

Moscow1キャプチャ

 

 オーストラリアから猛暑と山火事のニュースが届く一方、ロシアの首都モスクワからは、「異常に暖かい冬」の便りが届いている。

 

 (写真は、雪の無いモスクワ市内)

 

 モスクワの今年12月の気温は、過去133年でもっとも高くなる見込みという。例年、12月後半は、クリスマスや新年を前にして、市内の街路は雪で覆われる。だが、今年は月末まで降雪はない予想だ。モスクワっ子たちは、「過ごしやすい冬だが、自分たちの冬ではないみたい」と妙な年の瀬の気分になっているという。

 

クリスマスツリーも雪のデコレーションは無し
クリスマスツリーも雪のデコレーションは無し

 今月24日のクリスマスイブの最高気温は6.2℃を記録。イブの気温としては過去最も高い日となった。ロシアでは気候変動についての話題は、あまり活発ではない。しかし、この「異常に暖かい冬」に直面して、さすがのモスクワっ子たちも、「ひょっとして、これが気候変動?」と気になっているようだ。http://rief-jp.org/ct12/97429?ctid=70

 暖冬をもたらしているのは、大西洋からの暖かい暖気がロシアまで覆っているためだ。そのため、例年ならば雪となるところ、雨が降っている。新年の天気も雨になりそうとの予報だ。

 

 この暖かさに、モスクワ州立大学の薬草庭園では、初春に咲くマツユキソウや、シャクナゲが春と間違って花を咲かせているという。

 

新年に備えたお買い物も楽だが・・
新年に備えたお買い物も楽だが・・

 

 同庭園の主任庭師のAnton Dubinyuk氏は「植物はこの暖かさに『騙されて』、もう春が来たと思っているようだ。しかし、本当の寒さが来ると、この花はたちまちのうちに、萎んでしまう」と指摘。早咲きの結果、本当の春の時には、花たちは色を落としてしまうだろうと懸念している。

 

 ロシアでは温暖化への関心が低いだけではなく、温暖化のプラス面の成果として、寒冷地の多い同国にとっては耕作可能地が増えて食料生産が向上し、生活も楽になるとの見方をする人が少なくない。北極圏等での石油・ガス等のエネルギー開発も広がるとの期待もある。

 

 プーチン大統領は先週の記者会見で、気候変動がロシアにもたらすリスクについての質問を受けた。大統領は、世界中で気温が上昇していると認めつつも、こうした気候の変化が人間の活動に由来するものなのかどうかに関しては疑念を示した。この点で、トランプ米大統領と見解は一致するようだ。

 

「温暖化の進行で、がっぽり儲けようぜ」
「温暖化の進行で、がっぽり儲けようぜ」

 

 ロシアは今年9月に、遅まきながら、パリ協定に公式に批准した。同月に開いた国連気候行動サミットでプーチン大統領の気候アドバイザーが表明した。ただ、これまでのところ気候変動への対策をスムーズに進めているとは言い難い。https://rief-jp.org/ct8/94244

 

 気候変動の経済的プラス面を享受したい思いが見え隠れするためだ。しかし、そのロシアもマイナスの影響から免れられない。今夏は北極圏で大規模な森林火災が再三発生した。火災による煙はロシアの10以上の都市を覆い、市民の健康に影響を与えた。

 

 温暖化でシベリア大地の永久凍土の溶解が急速に進み、CO2よりも温暖化係数の高いメタンの大量発生の懸念も指摘されている。永久凍土の溶融は、すでに各地で地盤沈下をもたらしている。北極圏での温度の上昇は他の地域より2~3倍速いと指摘される。想定外の気候変動の激化で、大規模な自然災害が発生する可能性も高まる。

https://edition.cnn.com/2019/12/25/europe/moscow-december-warm-weather-intl/index.html