昨年9月以来のオーストラリアの山火事の影響で、4億8000万の野生生物が犠牲に。コアラ8000頭が焼死。火災灰は2000km離れたニュージーランドにも飛散。豪大学研究者が指摘(RIEF)
2020-01-04 21:38:43
昨年9月以来、猛威を奮っているオーストラリアでの山火事の影響で、野生生物の犠牲が4億8000万体に上るとの推計が公表された。この中には、焼死したコアラが8000頭も含まれているという。オーストラリアのモリソン政権は、効果的な熱波・山火事対策を打ち出せないまま、年を越した。
膨大な山火事による生態系への被害推計は、シドニー大学の生態学者が推計した。野生生物の犠牲だけではなく、大気中に燃え上がった煙の影響で、オーストラリアから2000km離れたニュージーランドの氷河に煙の灰が降り注ぎ、氷河の表面がマダラになる現象も起きている。
オーストラリアを代表するコアラは、主要生息地のニューサウスウェールズ州で10万エーカーの自然林等の土地が焼失し、生息コロニーの30%が破壊されたことで、8000頭が犠牲になったとみられている。コアラは、樹上で生息するコアラは、樹木が燃えるなどの被害が起きると、木の先端に避難し、そのまま樹上で焼死するケースが多いという。
生態学者のNature Conservation Council所属のMark Graham氏は議会証言で「コアラは火災から逃げれるような迅速な動きができない。樹上生活をする動物たちは、火災があまりに早く、あまりに広い範囲で燃えさかるので、逃げることができない。その焼死体さえ、燃え尽きて見つけることができなくなる」と指摘している。
このため、野生生物を保護する「Wildlife Information, Rescue and Education Services (Wires) 」には、傷ついた野生生物の搬送自体が限られているという。多くがその前に焼死してしまったとみられる。
昨年9月以来、すでに消失面積は500万ha(5万㎢)以上となっている。日本の東京都の23個分、北海道の約3分の2とほぼ同じ広さの自然林が燃え尽きたことになる。これまでの人的被害は17人。
隣国のニュージーランドには、タスマニア海を隔てて2000kmの距離がある。ところが、夏の観光シーズンで同国の魅力の一つとなっている氷河の表面は、オーストラリアから飛来した山火事の灰が降り注いで、キャラメル状の色に変色しているという。
またソーシャルメディアでは氷河の頂上に立った旅行者が「ニュージーランドのクライストチャーチでも、燃えた匂いがする」と発信している。研究者は氷河の表面に降り注いだ灰が熱を吸収することの影響で、氷河の溶解が従来以上に進むと指摘している。
ニュージーランドには3000以上の氷河があるが、温暖化の影響で溶解が進んでおり、今世紀末にはすべてが消失するとみられている。
オーストラリアのモリソン首相は、山火事鎮火の国家的課題を背負っている。だが、1月13日には、インドを訪問するスケジュールに変更はないとしている。その後、同首相は日本も訪問する。インド、日本はオーストラリア産石炭の主要輸国であることから、山火事よりもビジネス優先の姿勢とみられている。(*その後、両国への訪問は延期になる)
オーストラリアが自国産石炭を他国の石炭火力発電所用に大量に輸出することで、地球全体の温暖化を加速し、その結果、自国で熱波と山火事が年々、活発化するという構図だ。石炭消費国の日本、インドもその片棒を担いでいるとの見方もできる。