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非営利団体「気候変動イニシアティブ(JCI)」。日本政府に対して、パリ協定の国別温暖化対策公約(NDC)の目標引き上げを要請。温暖化進行で激化する被害の「直視」を求める(RIEF)

2020-02-06 23:36:43

JCI1キャプチャ

 民間企業や自治体、NGO、市民等で構成する「気候変動イニシアティブ(JCI)」は、日本政府に対し、パリ協定の目標達成のための国別温暖化対策公約(NDC)を改定し、目標を強化するよう求めるメッセージを送った。現状の各国のNDCを合わせても、パリ協定目標の2℃は達成できないことへの懸念が国際的に広がっている。欧州諸国はNDC強化に前向きだが、日本は、毎年のように温暖化の影響で激化する自然災害を経験しているのに、政府は全く動きをみせないことを批判した形だ。

 

 日本がパリ協定で公約した2030年の温室効果ガス削減目標は、2013年比で26%削減(2005年比25.4%減)というもの。EUなどが基準とする京都議定書の基準である90年比では18.0%。NDCは各国が自主的に定めたもので国によって基準や指標などは異なっている。これらのNDCによるすべての国の削減公約を合計しても、パリ協定の目標を上回る3℃前後になるとされる。

 

 しかし、すでに世界では、温暖化の影響による気候変動、自然災害の多発・激化が各地で発生している。オーストラリアで今、燃え盛る森林火災、ブラジル・アマゾンや米カリフォルニア州での森林火災、日本の昨年の台風15号、同19号などによる洪水・がけ崩れ被害と毎年激化する集中豪雨、東アフリカでのバッタの異常発生等。枚挙にいとまがない。

 

COP25でもNDC強化が求められた
COP25でもNDC強化が求められた

 

 こうした温暖化の負の影響がすでに顕在化し、激化している、との認識は科学者だけでなく、一般の人々にも共有され始めている。そうした中で、EUはパリ協定で公約した30年目標(90年比40%削減)を、50~55%に引き上げ、さらに2050年にはネットゼロとする目標確立を進めている。昨年のCOP25では約80カ国がNDC強化を宣言した。しかし、日本政府は全く音なしの形だ。

 

 こうした状況に危機感を抱いたJCIは、日本政府に向けて、「各国は、今年11 月の COP26 の前に2030 年までの温室効果ガス排出量削減目標等を含むNDCを改めて国連に提出することが求められている」と指摘。世界全体で、2018 年 10 月のIPCC特別報告書が示した1.5℃以下に抑えることの必要性に言及した。

 

 そのうえで、現在、日本を含む世界中で現実に発生している、熱波、山火事、干ばつ、洪水などの異常気象の多発と、甚大な被害が相次いでいることに懸念を示した。「日本も例外ではなく、2019年の台風 15 号と 19 号など、これまで経験したことのない気象災害が自然と財産を破壊し多くの国民を苦しめた」とし、日本が温暖化被害の渦中にあることを直視するよう政府に求めた。

 

JCIが昨年開いた日本サミット
JCIが昨年開いた日本サミット

 

 年々、気候危機が深刻化し、対策強化を求める世界の声が高まる中で、「もし日本が現状の目標を据え置きにすれば、日本の消極姿勢を対外的に表明することになるばかりでなく、困難な中でも削減目標・対策の強化を模索している他の国々の努力に水を指すことになる」と述べ、日本政府の「不作為の違法(あるいは「作為的」かもしれない)を非難した。

 

 また「(日本が)脱炭素化に後ろ向きな国という評価が広がれば、日本企業の世界的なビジネス展開への障害となり、中小企業も含めサプライチェーンからの除外という事態も招きかねない」と、NDC軽視の日本政府の政治姿勢が、日本経済の足元を危うくするリスクがあるとの見方を示した。JCIのメンバーに多くの企業が入っているのも、こうしたビジネスリスクの高まりへの懸念が広がっていることを映す。

 

 JCIはこうした指摘のうえで、JCIに参加する企業、自治体、NGO、市民らが、「これまで以上の決意をもって、自ら脱炭素化に取り組むことを宣言するとともに、日本政府に対し、温室効果ガス排出削減量改定を含む、国別目標の強化を求める」と要請した。

 

 メッセージには、1月31日時点で、JCIに参加する221メンバー(142企業、21自治体、58その他団体)が賛同している。

 

https://japanclimate.org/news-topics/callforndcenhancement/