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「ジョーカー」のホアキン・フェニックスさん。気候対策求める市民運動「Extinction Rebellion(XR)」のキャンペーン動画に「主演」。「地球は死滅しそう」と訴え(RIEF)

2020-02-08 14:37:07

瀕死の「地球」を救う医師に扮したホアキン・フェニックスさん

 

 映画「ジョーカー」に主演したハリウッド俳優のホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)さんが、気候危機への各国政府の対応を求める市民運動「Extinction Rebellion(XR)」が制作した2分間の動画に出演し、話題になっている。温暖化によってアマゾン、オーストラリア等での森林破壊と火災等が拡大、地球が死の淵にあることを強調する内容だ。フェニックスさんは、1月、気候変動対策を求める抗議デモに参加して逮捕されてもいる。

 

 (写真は、瀕死の「地球」を救おうとする医師に扮したホアキン・フェニックスさん)

 

 XRは英ロンドン発祥の気候変動対策の即時実施を求める市民運動。政府への警鐘のため、ロンドン市内の交通網を座り込み行動等で機能不全に追い込むなど、「過激」な行動で知られる。現在は、各国に支持者を拡大している。http://rief-jp.org/ct12/94760

 

 そのXRがアマゾンの熱帯雨林保護に取り組むNPO「アマゾン・ウォッチ」と共同で、森林火災や干ばつ等で破壊と生態系の喪失が進行する地球の病症を訴えるため、キャンペーン動画を制作した。フェニックスさんはその主演だ。

 

J10キャプチャ

 

 動画のタイトルは「ガーディアンズ・オブ・ライフ」(生命の守護者)。森林火災から逃れて緊急病棟に担ぎ込まれた患者を、医師役のフェニックスさんらは懸命の治療にあたる。だが、その甲斐もなく患者の心臓は止まってしまう。医師たちが手術室を去ろうとした際、看護婦の一人が突然、人工マッサージを施す。どうやら彼女は、先住民族の出身のようだ。

 

 しばらくして彼女はマッサージの手を止める。彼女が差し出した血まみれの手の下には、燃え盛る火の塊。よく見ると、それは森林火災を起こしているアマゾンであり、さらにはオーストラリア――。地球は今まさに燃えており、死滅しかかっている、とのメッセージが伝わってくる。映画は実際に、ロサンゼルスの救急病棟で撮影されたという。

 

 フェニックスさんが主演した「ジョーカー」は、9日のアカデミー賞発表にノミネートされている人気作品だ。「バットマン」の悪役として知られるジョーカーの誕生秘話を描いた。道化師として人々に笑いを広めていたジョーカーが、社会の矛盾に翻弄される中で、絶望から狂気に変わり、人々を恐怖に陥れる悪のカリスマに変身する物語だ。現代社会の偽善と虚飾を見抜いた作品として、世界中でヒットした。

 

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 気候変動問題も、富をひたすら追求し、生み出す負荷は地球に押し付け続けてきたわれわれの経済社会の歪みがもたらしたものだ。各国政府は、守れもしない「パリ協定」をアピールし、国連は難民、餓死者や戦争犠牲者等が何百万人もいるのに、「一人も取り残さない」とうそぶく。

 

 大企業と金融市場は、ESGを「特効薬」のごとくはやし立て、環境に、地球に、配慮する企業が増えているとの数字だけが独り歩きしている。SDGsは「新たなビジネス」の魔法の杖のように唱えられ、バッチは一種の免罪符としてビジネスマンの胸に飾られている。だが、森林火災も、台風・ハリケーン被害も、干害も洪水も、増えこそすれ、緩和する気配は全くない。貧富の差は拡大し、人々の間の憎悪と差別意識は増している。

 

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 スウェーデンの女の子たちが自分たちの将来に不安を覚えて、本気で怒り出しても、「心配しなくてもそのうち良くなるよ。子どもは学校でお勉強していなさい」と、したり顔している。映画の中のジョーカーが矛盾と絶望に陥り、狂気に走る舞台となった「ゴッサム・シティ」が、地球全体広がっているかのようだ。ジョーカーが各地で目を覚まし始めているかもしれない。

 

 「ジョーカー」のフェニックスさんは、XRの動画では、傷ついた地球を救おうと奮闘する側だ。フェニックスさんは、社会活動家としても長年活動してきたことで知られている。人権団体のアムネスティやピースアライアンスへの支援、南アフリカのソウェトでの学生への給食支給活動などのほか、動物の権利擁護活動にも熱心に取り組んできた。動物の皮等を使った衣装は一切着ない。完全菜食主義者(ビーガン)でもある。

 

気候変動対策を求める「Fire Drill」活動に参加したフェニックスさん。㊧はジェーン・フォンダさん
気候変動対策を求める「Fire Drill」活動に参加したフェニックスさん。㊧はジェーン・フォンダさん

 

 支援だけではない。今年1月10日に気候変動対策の強化をトランプ政権に求めるワシントンでの抗議行動に参加して逮捕された。同抗議行動は、グレタ・ツゥーンベリさんが気候変動対策を求める活動に共鳴した女優のジェーン・フォンダさんが、昨年10月以来、毎週金曜日にワシントンで開いている「金曜日のFire Drill(消火訓練)」と称する活動だ。https://rief-jp.org/ct12/95864

 

 Fire Drill行動では、毎週のように、誰かが「平和裏に」逮捕されている。グレタさんたちの「金曜日のSchool Strike(登校拒否)」行動が、子どもたちや若者のアピール活動とすれば、「Fire Drill」は大人の反抗といえる。

 

 動画に主演したフェニックスさんは「畜産、酪農業が気候変動に影響を与えていることへの関心を集めるために行動を呼びかけた。熱帯雨林の森林を皆伐し、焼き尽くす行動が、世界中に悪影響を及ぼしている。人々は、自分たちの生活パターンを抜本的に変え、行動しない限り、(地球を守る)時間がもう十分にないことに気付かねばならない。われわれは各国政府がこれらの問題を解決するのを待ってはいられないのだ。われわれ一人一人が自らの責任で転換に取り組まねばならない」と述べている。

 

 トランプの無策で、人々がジョーカーを引いてしまわないよう、一人一人が自らを変える行動に一歩、踏み出せるか。アカデミー賞の行方も気になる(2月11日追記:見事、主演男優賞を受賞した)。

https://mobilize.earth/

 

                              (藤井良広)