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新型コロナウイルスの拡散。中国の経済活動鈍化の影響で、直近2週間のCO2排出量は前年同期比25%減少、約1億㌧分の削減につながる。欧州研究機関の調査で判明(RIEF)

2020-02-21 12:28:01

korona1キャプチャ

 

  新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の影響が広がる中国は、工場の操業再開の遅れ等による経済活動に大きな影響が出ているが、その影響として、CO2排出量が急減していることがわかった。フィンランドの研究機関の調査では、直近の2週間で少なくとも昨年同期より25%減の1億㌧が減少したとみられる。これは、世界全体の同期間のCO2排出量の約6%に相当する。石炭火力発電や鉄鋼生産等、主要産業の操業にブレーキがかかっていることが大きいようだ。

 

 フィンランドの研究機関「センター・フォー・リサーチ・オン・エナジー・アンド・クリーンエア(CREA)」の研究員Lauri Myllyvirta氏の論文が19日、英情報サイトCarbonBriefに掲載された。

 

 中国の20日までの発表で、コロナウイルスによる死者数は2118人、感染者は累計で7万4576人とされる。中国政府は、春節(旧正月)の休暇が延長し、工場の再開等を見合わせるよう指導してきた。この影響で石炭・石油の需要が下がり、CO2排出量の激減につながったとみられる。

 

主要企業のCO2排出量の経年比較
主要電力会社の石炭消費量(日量ベース)の経年比較

 

 中国のCO2排出量は世界最大。直近の2週間での排出量は平年は約4億㌧。しかし、今年は約1億㌧が減り、全体で約3億㌧だったとの推測結果となった。平年の4分の1が減ったことになる。この数字通りだとすると、同期間のCO2排出量は、この数年間でもっとも低かったことになる。

 

 主な排出源別では、まず、石炭火力発電所での日量ベースの燃料炭使用量が過去4年でもっとも少なかった(上記の図を参照)。主要な石油精製業の生産水準も2015年以来でもっとも低かった。主要鉄鋼業の生産ラインは過去5年間で最低の操業率。CO2だけでなく二酸化窒素(NO2)排出量は昨年同期の36%減、人の移動も激減していることから、国内航空便は前月比70%の水準に減少等と、広範囲な産業・企業が影響を受けている。

 

 ただ、エネルギー消費やCO2排出量が限定した調査期間では、通常より4分の1も少なかったとはいえ、年間の総排出量に比べると、2週間分は1%でしかない。主要産業セクターの操業状況は、前年同期比15%~40%の削減が続いているが、今後の操業回復の度合いは明瞭ではない。

 

 目下の焦点は、中国政府が各工場の生産体制を通常に戻す、または、新型肺炎の動向によって、これまでの生産減少分を相殺する追加措置を、どこかの時点で打ち出す可能性がある点だ。中国政府はリーマン危機の後の景気後退期に、積極的な財政出動を実施したほか、2015年に株ショックで国内経済が低迷した際も、政府による市場介入で需要を創出し、危機を乗り越えてきた経緯を持つ。

 

 CO2排出量の減少は、経済活動の低迷によってではなく、エネルギー転換や再エネ電力の増大等によって、構造的な低炭素化の進展によって、進められることが望ましいのは言うまでもない。