HOME |東電福島第一原発の汚染処理水海洋放出問題、中韓に加え、太平洋を隔てたチリも懸念。東電の情報開示も不十分。コロナ感染不安に加え、日本が新たな「不安」を周辺国にばらまく形に(各紙) |

東電福島第一原発の汚染処理水海洋放出問題、中韓に加え、太平洋を隔てたチリも懸念。東電の情報開示も不十分。コロナ感染不安に加え、日本が新たな「不安」を周辺国にばらまく形に(各紙)

2020-10-21 00:09:44

China001キャプチャ

 菅政権が、東京電力福島第一原子力発電所で増え続けるトリチウムなどの放射性物質を含む汚染処理水の海洋放出を今月中に決めると明言していることに対して、国際的な懸念が高まっている。中国が「周辺国との協議」を求めた一方、韓国南部・チェジュ道の知事は、海洋放出を食い止める訴訟を日韓で起こすとの姿勢を示した。太平洋を隔てたチリも懸念を示している。海洋放出で他国の海域にも汚染水が広がることは明らかで、新型コロナウイルス感染拡大で国際的な不安が続く中で、日本政府が周辺国に新たな不安の材料を突き付ける形でもある。

 (写真は、日本の放射性汚染処理水の海洋放出に懸念を示す中国の報道官)

 中国外務省の趙立堅報道官は19日の記者会見で「日本政府には正確で透明性のある方法で情報を発信するとともに周辺国と十分に協議し、慎重に方針を決めるよう望む」と述べた。これに先立って、韓国政府も16日、日本政府に透明性のある情報共有や周辺環境と人体への影響を最優先に考慮するよう求めるとしたコメントを出した。

 韓国では南部・チェジュ(済州)道のウォン・ヒリョン(元喜龍)知事が20日、「放出された水は日本の海だけに流れ込むのではない」として、日本政府に海に放出しないよう求め、要求が拒否された場合には、沿岸住民などに呼びかけて日本と韓国でそれぞれ訴えを起こすことも辞さないとの姿勢を示した。

 

 また今月9日にロンドンの国際海事機関(IMO)本部で開いたロンドン条約/議定書締約国会議でも、汚染水放出問題が議論され、韓国に加え、中国、チリも憂慮を表明したとされる。

 

 国内では、福島県の59市町村のうち41市町村議会が、海洋放出へ反対もしくは慎重な意見書や決議を可決している。経産省が行ったパブリック・コメントには4000件超の意見が寄せられ、現在まで開示請求により公開されたもののうち7割は放出反対の意見という。さらに福島県内の団体が呼びかけて経産省に提出した反対署名は42万人超になっている。

 

 元々、政府は安倍政権の際に、福島原発問題は「アンダーコントロール(管理されている)」と国際的にアピールしてきた。事故から9年半が経過し、汚染処理水を支えきれなくなったというのは、これまでの政府の説明が間違っていたことになる。東電福島第一原発の敷地での保管が限界ならば、保管場所を東電の他の敷地などに求めるか、あるいは国が国有地を一時的に貸与するかなどの案も考えられるはずだ。

 

 万策尽きて海洋放出という事態になっているとは、多くの人の目に映っていないといえる。環境NGOのグリーンピースジャパンによると、菅政権が放出を目指している処理汚染水の7割は、トリチウムだけではなく、セシウム134、 セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が総量として基準を上回って残留しており、東電による「二次処理」の見通しや、総量等の具体的データも公開されていないという。

 

 新型コロナウイルス感染問題で、各国の関心がコロナに向かっているどさくさに、東電が持て余している汚染処理水の海洋放出を決断した場合、日本国と日本人全体が国際社会から「無責任な国」「無責任な民族」とみられる可能性は高いと言わざるを得ない。さらに、いったん放出すると、その事実は取り消せないことも十分に考慮する必要がある。

 https://storage.googleapis.com/planet4-japan-stateless/2020/10/e94c3ee9-20201020fukushimawater.pdf

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201020/k10012672951000.html?utm_int=news-culture_contents_list-items_001