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大気汚染だけではない。 深刻化する中国の水質汚染、巨額の浄化費用も水の泡(Reuters)

2013-02-21 15:15:01

2月21日、中国では水質汚染も深刻さを増しており、政府は向こう10年間で8500億ドル(約80兆円)を投じて水質改善に取り組む姿勢を示しているが、その巨額投資も効果は薄いとみられている。写真は藻が大量発生した雲南省の湖。2009年5月撮影(2013年 ロイター)
2月21日、中国では水質汚染も深刻さを増しており、政府は向こう10年間で8500億ドル(約80兆円)を投じて水質改善に取り組む姿勢を示しているが、その巨額投資も効果は薄いとみられている。写真は藻が大量発生した雲南省の湖。2009年5月撮影(2013年 ロイター)
2月21日、中国では水質汚染も深刻さを増しており、政府は向こう10年間で8500億ドル(約80兆円)を投じて水質改善に取り組む姿勢を示しているが、その巨額投資も効果は薄いとみられている。写真は藻が大量発生した雲南省の湖。2009年5月撮影(2013年 ロイター)


[北京 21日 ロイター] 深刻化する中国の大気汚染。その一方で、同国では水質汚染も深刻さを増しており、政府は向こう10年間で8500億ドル(約80兆円)を投じて、水質改善に取り組む姿勢を示しているが、その巨額投資も効果は薄いとみられている。

ロイターが入手した資料によると、中国政府は地方の水質改善プロジェクトに2011─20年の10年間で総額4兆人民元(約60兆円)の投資を約束。これは、世界経済危機の対策として出された景気刺激策の規模に匹敵する。さらに、中国全土のさまざまな浄化プロジェクトに少なくとも2000億ドルを用意した。

新たな投資は必要不可欠だ。中国の河川や湖では、化学肥料の流出で藻が大量に発生しているほか、化学物質によって泡立ち、未処理の汚水が排出されている。政府のこれまでの記録から判断すると、最終的な浄化費用はその何倍も必要になってくる可能性がある。

2010年までの5年間、中国は水インフラに7000億人民元を投じてきたが、依然として同国の水のほとんどが飲用できない。また中国環境保護省は、11年にモニタリングした地点の43%で、人間の接触にも適さない水があるとしている。

南京大学の研究員、Zhou Lei氏は「汚染対策に巨額の費用を投じているのにもかかわらず、成果が乏しいのは、誤った都市化モデルに従っているからだ」と指摘する。

中国政府は拡大するエネルギー・農業需要に対応するため、年間の水不足量50BCM(BCM=10億立方メートル)の確保に取り組んでいる。ただ、公開されている資料を精査すると、環境面に関する熱意は乏しい。

同時に政府は、急成長がもたらす環境問題への対応を求める圧力にさらされている。1月に北部の都市を覆った大気汚染によって国民の怒りは増しており、政府に水質改善にも取り組むよう訴える声が、インターネット上で広がっている。

<汚染はビジネスチャンス>

Zhou氏は巨額の対策費用について、汚染の未然防止よりもむしろ、汚染処理に重きが置かれていると説明。産業の発達が優先され、汚染は新たなビジネスチャンスだと捉えられていると語った。

同氏は地元政府が水処理企業に提示する契約に言及。「彼らはいつも、環境劣化を経済的な問題にする。中国は汚染を資源としても利用し、新たに富を蓄積する手段として、環境劣化に対応する機会を利用している」と話した。

10年間の地方プロジェクトに加えて、中国は昨年、水資源の保護に2500億人民元を投じる方針を表明。さらに、小中規模の河川の処理に向こう2年で1300億人民元を充てた。

また、地方政府の投資額も膨らんでいる。南西部雲南省の湖「テン池」の水質の「明らかな改善」に向け、3年間で310億人民元を投じる計画もある。2007年に藻やシアノバクテリア(藍色細菌)が大量発生した東部「太湖」の対策には、5年間で700億人民元が充てられ、さらなる投資が見込まれている。

地方政府の公式サイトなどによると、両湖の浄化プロジェクトは、「人間の接触不可」を意味する「グレード5」から「工業利用のみ」の「グレード4」への改善を目指す。

人口は英国の20倍だが、水の供給量は英国と変わらない中国にとっては、このようなわずかな改善も重要になってくるかもしれない。

中国国土資源省のデータによると、1人当たりの水供給量は2100立法メートルで、世界平均の28%。政府は2030年までに年間水使用量の上限を700BCMに設定する方針だが、現在の年間使用量は約600BCMで供給量の大幅増が必要だ。

環境団体「中国水務危機」の代表、Debra Tan氏は「水供給の増加には、農業にも使えないグレード5の水を除去することが必要になってくる」とし、「グレード4の水では泳ぐのも安全ではないが、少なくとも利用は可能だ」と述べた。(原文執筆:David Stanway記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

 

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPTYE91K01S20130221?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0