HOME9.中国&アジア |ベトナム原発計画 日本の原発支援の建設予定地 混迷状態に置かれる住民たち(メコン・ウォッチ) |

ベトナム原発計画 日本の原発支援の建設予定地 混迷状態に置かれる住民たち(メコン・ウォッチ)

2014-01-23 12:41:18

ベトナムで日本が建設する予定の第二原発建設予定地の看板
ベトナムで日本が建設する予定の第二原発建設予定地の看板
ベトナムで日本が建設する予定の第二原発建設予定地の看板


ベトナムの原発開発について続報です。南部のニントゥアン省にはロシアと日本の援助で2か所の原子力発電所が作られる計画で、建設予定地の住民には立退きが宣告されています。しかし、先日お知らせしたように、ズン首相は第一原発の計画延期を示唆しています。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20140120_01.html

日本はニントゥアン第2原発に支援を確約しています。今までの経緯はこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/vietnam/npp.html

この第2原発予定地では、公的資金が投入され調査が行われました。しかし、国際環境NGO FoE Japanや山本太郎参議院議員の問い合わせに対し経済産業省は、調査報告書を所持していないことを明らかにしています。詳しくはこちらのブログをご覧ください。

ベトナム原発の建設調査に国税二五億円――復興予算流用!使い道不透明
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/25-6c31.html

以下、原発輸出国のなりふり構わない推進の意向に翻弄されるベトナム現地の住民は、移転時期も決まらず、住んでいる家の修復や生活のために必要な投資もできず、置き去りになったまま、というショッキングな現地の報道です。しかし、今まで原発に関して厳しい言論統制がしかれていたベトナムでこのような現状が報道されたのは画期的とも取れます。同国の変化の兆しを期待するとともに、日本政府のでたらめな対応を注視していかなければなりません。

以下、匿名の翻訳者の協力でお伝えします。

 

原発はいまだ支離滅裂:



住民移転の正確なタイミングは知らされず


 

 

2014年1月19日 7:24(グリニッジ標準時+7)
『トゥオイチェー・オンライン』

 

ニントゥアン省人民委員会によると、2つの村の住民が正確にいつ、原発のために退去しなければならないかは分からない状況だ。建設計画次第なのだが、その建設計画自体がいま支離滅裂になっている・・・。

 (写真説明:ニントゥアンの海外沿い道路。第二原発計画のためにタイアン村から移転する住民の再定住区を横切っている。ヴァン・キー撮影)

ニントゥアン第一原発と第二原発の両者を建設するため、ヴィンチュオン(ニントゥアン省トゥアンナム県フォックジン社)とタイアン(ニントゥアン省ニンハイ県ヴィンハイ社)の二村は、完全に退去しなければならない。

 

■倒れかけの家に住む!

ヴィンチュオン村のグエン・トーさんの家は、ひび割れがそこここに走り、10センチの隙間が開いているところもある。針金を使って倒れないように補強している状態だ。家の土台も陥没して大穴が開いている。「海岸に近く、風の強い日は4人家族全員で親戚の家に避難させてもらっているんだ、家が倒れそうで。」とトーさんは言う。

「もし、建設計画に当たらなければ、もうとっくにこんな家は壊していただろう、痛み方があまりにひどいし。土地はすでに国が接収してしまった。今、私がこの家を修繕しても、すぐに移転になって修繕費用が補償されなかったらカネの無駄になってしまう。でも、原発の着工が延期になり、移転の時期も延びるのなら、国はちゃんと責任を取って住民の生活を保障してくれなくちゃ。私たちはこんな倒れかけの家に6年間も住んでいるわけにはいかないよ。」

グエン・タイン・ズー(ヴィンチュオン村長)は、村じゅうに15軒くらいの家が同じような痛んだ状態で存在しているという。ズー氏によると、土地の接収が終わった2010年末以来、家屋の建設や村のなかの工事はもう許可されなくなった。多くの若夫婦が新居を持つこともできない状態だ。多くの人々が養魚池を作りエビの養殖に投資しようと考えるが、移転の正確な時期が分からないため小規模にしかできない。生活の経営が困難になっている。

「会合に行くと、全村が土地を接収され退去しなければならないと言われた。ここに建設資材だけを専門に運び込むための港を作るらしい。2014年には原発建設を着工すると聞いていた、そしてその後、噂でそれが2017年まで延期されたとも聞いていた。それが今度は、首相が2020年になるかもしれないと言っているとか。こんな風に待っているばかりでは、住民はまったく落ち着かない。」とズー氏は正直に言う。

一方、グエン・タイン・フォン氏(タイアン村長)は、タイアン村住民の心理として、原発計画のために土地を明け渡して移転しなければならないと聞かされてからというもの、投資をして儲けようと言う気持ちが失せてきているという。そこへさらに6年も待たされるとなると、家計の経営に与える影響は非常に大きいと言う。

「2年前、ニントゥアン省人民委員会は移転準備のために新たな住宅建設を禁止した。これをさらに2020年まで延長するなんて、住民にはひどい話だ。住民に住宅建設を許可したとしても、どうせ長く住めずすぐに壊して出て行かなければならない。さらにひどいことに、タイアン村の住民の大部分はまだきれいな水が使えない。ここの地下水はミョウバンが混じっているので、住民は他所で降った雨水を飲まなくてはいけない状態だ・・・」とフォン氏は話す。

 

■住民の退去と再定住・・・いまも順調に展開

グエン・マイン・フン氏(ニントゥアン原発計画管理委員会副委員長)は言う。「ベトナム電力公社(EVN)の予測では、2017年末もしくは2018年初には原子炉の最初のコンクリートを流し込み、ヴィンチュオン村の第一原発の工事が正式に開始されることになる。これを行うためには、その約2年前、すなわち2016年初にまでさかのぼって、地面を平らにし、基礎を固めて建設の準備をしておかねばならない。周辺の関連施設や専用港の建設も同様だ・・・だから、土地の明け渡し、退去、再定住などの準備作業は、以前の計画と変わりなく展開しなければならないと思う。」

ドー・フー・ギー氏(ニントゥアン省人民委員会副主席)は、土地の明け渡し、退去、再定住の作業はいまも順調に展開されていると言う。「目前の2014年には、墓地2ヶ所と再耕地の整備を進める。その後で、再定住区の建設だ。土地明け渡しと再定住区の作業は、原発ができる2ヶ所の地区で並行して進んでいる。」とギー氏は言う。

でも、いつになったら再定住区ができて、住民が移転するのですか?この質問に答えて、スー・ディン・ヴィン氏(ニントゥアン原発住民移転計画管理委員長)は言う。委員会では現在、計画の立案中であり、2014年第1四半期には首相に提出して批准を得たい。「首相がニントゥアン原発住民移転再定住計画を批准し終わって初めて、土地の見積もり、補償、明け渡しを始めることができる。」とヴィン氏は述べる。

この計画で、首相が批准して再定住の作業の実施を始めるタイミングはいつになると見積もっているのかという質問に答えて、ヴィン氏は言う。「2014年12月、もしくは2015年の初めだろう。現在、2ヶ所の原発を建設する位置はまだ正式に公報されていない。具体的な境界が定められて初めて、全体の計画地域が分かる。だから我々も待つしかない。そして、2ヶ所の再定住区の境界もまだはっきりと示されていないので、とりあえず接収する土地の測量を行ってはいるが、まだ補償には取り掛かっていない。」
(ズイ・タイン-ヴァン・キー)

 

原文(ベトナム語)はこちら:
http://tuoitre.vn/Chinh-tri-Xa-hoi/590925/dien-hat-nhan-con-ngon-ngang-chua-biet-chinh-xac-thoi-diem-doi-dan.html
(21/01/2014)

(文責 メコン・ウォッチ)

 

http://mekongwatch.org/resource/news/20140123_01.html