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マレーシアのマハティール首相、エネルギー源としての原発を否定。「放射線被爆対策、廃棄物対策のメド立たず」。日本の「二つの悪い経験」も教訓に(RIEF)

2018-09-21 00:47:06

 

  マレーシアのマハティール首相は18日、クアラルンプールで開いた電力業界主催の会議で、「原発をエネルギーとして採用しない」ことを明言した。同氏はその理由として、「放射線被ばく対策と廃棄物処理の問題が解決していない」と指摘した。

 

 マハティール首相は同日開いた「電力供給産業会議2018」の開会式での基調講演の中で、「反原発」の政策スタンスを鮮明にした。

 

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 マレーシアでは、ナジブ前首相が就任直後の2009年6月、政府として2020年以降の発電オプションに、原子力を選択肢の一つとして打ち出した。これを受け、2011 年には「マレーシア原子力発電公社(MNPC)」を設立、2021年に同国第一号の原発の運転開始のほか、2030年までに原発2基導入する方針を示していた。

 

 しかし、マハティール首相は、これまでに日本の東京電力福島第一原発事故や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故など多くの原発事故が起き、多くの人々が放射能汚染に見舞われてきた、と指摘。「科学の進展にもかかわらず、放射能汚染とその廃棄物処理の対策はまだ見つかっていない。この点が、原発による電力価格が化石燃料よりも安くても、われわれが原発を利用しない理由だ」と明言した。

 

マハティール首相(左)と、環境・科学・技術・気候変動担当相の Yeo Bee Yin氏 (右)
マハティール首相(左)と、環境・科学・技術・気候変動担当相のYeo Bee Yin氏 (右)

 

 同氏はマレーシアが目指す電力構成として、原発抜きで、化石燃料、石炭は対象に含めた。そのほかは水力発電ダム、風力発電等とした。「いずれも安定的で環境にも優しい」と述べた。化石燃料等による温暖化への影響については言及しなかった。

 

 同首相はこうも語った。「私が反対する二つのことがある。一つは、スモーカーは私のそばに近寄ってはならない。もう一つは原発は発電の解決にはならない、ということだ」。演壇にはエネルギー政策を担当する「エネルギー・技術・科学・環境省」のイェオ・ビーイン大臣も同席した。

 同首相は、マレーシアで起きた「悪い経験」にも言及した。1980年代から1990年初めにかけてクアラルンプールの北、ペラ州イポー近郊のブキメラで日本企業が経営するカラーテレビ用のレアアース精錬工場が、放射性廃棄物問題を起こした事件だ。

 

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 レアアースを抽出するためにスズを処理する過程で排出される放射性トリウムの廃棄処理がずさんで、工場労働者や周辺住民に健康被害が出ただけではなかった。同廃棄物の埋め立てに1㎢の土地を半永久的に充てなければならなかった点だ。

 

 首相は「放射性残留物が環境を破壊し、住民に健康被害を与えた。マレーシアはこうしたことを絶対に繰り返してはならない」と述べた。当時の日本企業を名指しで非難はしなかったが、日本企業が引き起こした過去の「悪い経験」と、東電が引き起こした「現在の経験」が、同首相の反原発意識に大きな影響を与えたことは間違いなさそうだ。

 

 同首相は「我が国の5番目(アブドラ元首相)と、6番目(ナジブ前首相)のリーダーは、原子力エネルギーに賛同してきたが、今、私は反対する」と明言した。

 

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 「エネルギー・技術・科学・環境省」のイェオ・ビーイン大臣は、同国のエネルギーシステムの改革のため、官民一体の「MyPower Corp」と呼ぶ特別機関を設立すると述べた。同機関は、エネルギー産業の専門家10~20人で構成し、3年間の限定で活動するとしている。

https://www.nst.com.my/news/nation/2018/09/412608/malaysia-wont-use-nuclear-power-says-dr-m-nsttv