HOMERIEF Interview |『秋田発』再生可能エネルギーの新潮流(上) 木質バイオマス発電のボルタージャパン。フィンランド生まれの優れもの。駒田忠嗣社長に聞く(RIEF) |

『秋田発』再生可能エネルギーの新潮流(上) 木質バイオマス発電のボルタージャパン。フィンランド生まれの優れもの。駒田忠嗣社長に聞く(RIEF)

2017-08-30 21:10:08

 

 東北の豊かな自然資源を生かした新たな再生可能エネルギー発電の分野を、先端技術を駆使して開発する「本籍・秋田」のベンチャー企業が、全国から注目を集めている。小型木質バイオマス発電のボルタージャパンと、東北小水力発電の2社だ。両社のトップを訪ね、事業の手応えと展望、抱負等を聞いた。まずは、ボルタージャパンの駒田忠嗣氏から。

 

 ボルタージャパンは、フィンランドのボルター社が開発した小型のバイオマス発電設備(CHP:熱電併給システム)の輸入代理店だ。主力商品のボルター40は100kWの熱と40kWの電力を同時に供給できる。ガス化炉からフィルター、ガスエンジン、発電機、灰排出装置までのすべてのプロセスをコンパクトなコンテナ状にパッケージ化したデザインもおしゃれだ。本家ボルター社は、現フィンランド首相のユハ・シピラ氏が立ち上げたベンチャー企業でもある。

 

――フィンランド製のCHPということですが、特徴を一言で言うと?

 

Volter11

 

 駒田氏:フィンランドでは集合住宅などで、住宅向けの電気とお湯を同時に供給しているケースが多い。多くが自治体単位。街の中心にまず、ボルターを設置、エネルギー供給を前提に街づくりをするコミュニティもあります。まさに分散型・循環型のコミュニティ・エネルギー源です。

 

――小型のバイオマス発電のメリットはどこにありますか。

 

 駒田氏:大型のバイオマス発電は秋田県や青森県では、容量の大きい高圧のものは、発電しても系統連携が難しくなっています。50kW未満の低圧の発電ではこの系統問題に引っかかりません。また、通常、バイオマスの場合、燃料を安定的に確保できるエリアは、50km圏内といわれています。大容量だと燃料の木質チップが足りなくなる懸念があり、100km離れたところから仕入れるなどの無理が生じています。

 

 小型のバイオマスの場合、必要なエネルギーのある場所で、機器を設置することで分散型設置のメリットが働きます。またエネルギーの必要な場所の近くで発電するので、結局、エネルギーロスが少なくて済みます。

Volter12キャプチャ

 

――小型バイオマス発電に対する市場の期待は高まっているようですね。

 

 駒田氏:今年度から固定価格買取制度(FIT)では買い取り価格40円で3年間固定という制度がとられました。価格的にも太陽光発電の初期のころに近いので、それを前提に、投資を考えている動きがあるようです。導入を考えている顧客は大半がFITを利用するのが前提ですね。電気は売電、熱利用で農業ハウス用の補助熱源として使うか、給湯用の熱源にするなどのケースが主流です。

 

 ボルター40のモデルになって約4年がたちます。この間、ボルター全体での世界市場での納品件数は約110台です。日本では、秋田、宮城、岡山、熊本、宮崎などへ、すでに7台を納品しました。10月には新たに注文を受けている宮城、福島などの分が6台入ってきますから、日本だけで1割以上のシェアになります。

 

Volter13キャプチャ

 

――販売先は、秋田だけでなく、全国に散らばっているようですね。秋田に拠点を置く理由はあるのですか。

 

 駒田氏:ビジネスは基本的に、全国的から反応をいただいています。秋田は林業が盛んなところなので、みなさんになじみの深い「木」を材料に発信でき、いい理解が得られていると思っています。秋田は、元々、森林資源が豊富ということと、バイオマス発電に不可欠の燃料となる木質チップの供給体制が優れている魅力もあります。

 

 またこの事業は、東京などの都心よりも、地方から発信するビジネスモデルかなと、いう思いもあります。われわれが都心に会社を置いて、ボルター40を売っていても、顧客にはあまり普及できないのではという懸念もあります。ですので、ビジネスモデルとして「秋田」を考えました。地方から発信して、地方に機器を設置して、地方が元気になっていく姿を見せることによって、よりボルター40のイメージを持ってもらいやすくなると考えています。

 

――そうすると、秋田から全国に営業に出かけていくわけですね。

 

 駒田氏:そうですね。もちろん燃料となる木質チップの供給ができる森林資源の豊かな地域からのお話は当然いただきますが、それだけはなくて、これからどう森林を再生するかということを考えている地域からも、お話をいただくことがあります。週の半分は秋田以外に出かけていますね。拠点の北秋田市には空港もありますので便利です。東京にも一人、営業の人を置いていますが。

 

木質燃料チップを点検する
木質燃料チップを点検する

 

――バイオマス発電は大手企業が海外の燃料を輸入して大規模に発電するタイプも、最近は増えていますね。

 

 駒田氏:確かに、最近は海外から輸入するPKS(輸入ヤシ殻)を燃料とする大型のバイオマス発電もあります。しかし、本来は国内の森林資源を活用して循環社会を作るというのが目的のはずだと思います。大規模発電の良さもあるとは思いますが、今後、国内は小型のバイオマス発電機が主流になるのではという話が、与党や政府当局にもあると聞いています。

 

――ファイナンス面はどうですか。

 

 駒田氏:国とかの補助はありません。国内で小型のバイオマス発電を開発することは、過去にも大手が試みたことがあるようですが、コスト的に難しいのが現状です。ですので輸入に頼らざるを得ないのですが、フィンランドで製造してコンテナに入れて船で日本に運ぶことから、どうしても注文から納入までに5~6ヶ月かかります。在庫を持っていればいいのですが、そのコストがかかるので、注文があっても納品が半年ほど先になってしまうのが、正直、歯がゆいところです。

 

――在庫ファイナンスの確保にために、商社などと提携する考えはありませんか。

 

 駒田氏:検討はしました。しかし、ボルター40を安定稼動させるカギは、燃料となる木質チップの確保が一番大きい点です。商社の機能として、そこまでまかないきれないと思います。一台当たりの燃料消費量は年間500㌧ほど。製紙会社にチップを納めているチップ会社ならば、2~3日で製造できる量です。なので、そこが逆におろそかになる可能性があります。ボルター40はきちんとした燃料を供給してはじめて、その機能を発揮します。バイオマス発電につきものの、タールの発生も抑制することができます。そうした性能の確保は自分たちで判断することを重視したいと考えています。

 

――今後の市場の展望はどうですか。

 

ボルタージャパンの本社
ボルタージャパンの本社

 

 駒田氏:今、このクラスのバイオマス発電では、われわれと競合する相手はいないのが現状です。引き合いも増えています。今のうちに、自分たちの手で小型バイオマス市場をどこまで立ち上げられるかにかかっています。今後の3年間で、どれくらいの形を作れるかがポイントですね。

 

 自治体などでは、ボルター40を10台つなげて、売電するという案件もあります。また熱だけ供給するという案件もあり、電気はわれわれのほうで売電するケースもあります。引き合いの中心は中小企業関係者が多いですね。価格的にも、チップの乾燥機等を加えたりする場合でも他社比較でローコストを実現しているので、投資効果を見込み易いということだと思います。従来、再エネなどに関係してこなかったところが増えています。たとえば、農業や林業の担い手などのように自分たちで燃料を作れる先や、産廃系なども多い。ただ、太陽光発電の初期の投資ブームのような感覚で来られるのは違うと、お伝えしています。

                        (聞き手は藤井良広)

 

 

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ボルタージャパン(VOLTER JAPAN)

本社、秋田県北秋田市 資本金2000万円、社長:駒田忠嗣氏http://www.volter.jp/

 

 駒田忠嗣(こまだ・ただつぐ) 京都市出身、国会議員秘書、オリックス・ファシリティーズを経て、2015年10月 ボルタ―ジャパン株式会社設立に参加。2017年同社代表取締役就任。