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ポルトガル、2021年1月に国内の石炭火力発電所を撤廃。2023年の当初予定を前倒し。石炭火力発電所の経済採算性低下が最大理由。EUでは4カ国目(RIEF)

2020-07-16 21:35:51

EDP001キャプチャ

 

  ポルトガルのエネルギー大手EDFは、同国で唯一残っている石炭火力発電所を2021年1月に閉鎖すると発表した。当初の2023年の予定を前倒しする。発電所跡地では、再生可能電力を活用して電解水素を製造する「グリーン水素」事業を展開する予定だ。EU諸国で「脱炭素」を実施したのは、ベルギー、オーストリア、スウェーデンに次ぐ動き。

 

  (写真は、来年1月に閉鎖が決まったポルトガルの石炭火力発電所)

 

 EDFが閉鎖するのは、リスボンの南部のシネシュ(Sines)にある発電容量1180MWの石炭火力発電所。操業35年は経過している。当初予定では2023年に閉鎖の予定だったが前倒しする。 閉鎖を前倒しするのは、再エネ電力の普及とコスト低下が続く一方で、石炭発電のコストは上昇、EU-ETSで調達するカーボンクレジット価格も上昇するなど、経済的に採算がとれなくなっているためとしている。

 

 今回のシネシュ発電所の前倒し閉鎖の決定は、EDFが展開する「低炭素戦略」の一環。同社はポルトガルのほか、スペインでも電力事業を展開しているが、スペイン北部のソト・デ・リベラの火力発電所(発電量346MW)も来年中に閉鎖する。同発電所は再エネ電力の蓄電施設に転じる予定。

 

 EDFはこれらの石炭火力の閉鎖と、他の低炭素事業への転換に際して、EUが欧州グリーンディール(EGD)政策の軸となる「公正移行ファンド(Just Transition Fund)」からの資金供給を想定している。シネシュの「グリーン水素」設備の場合、港湾を利用して製造した水素を輸出できるメリットもある。

 

 EUでは2016年にベルギーが最初に脱石炭火力に踏み切った後、今年になってオーストリア、スウェーデンが相次いで国内の「最後の石炭火力」を閉鎖した。その他の国も、フランス(2022年)、スロバキア(2023年)、英国(2024年)、アイルランド(2025年)、イタリア(2025年)などが石炭火力廃止目標を設定している。

 

 EDPのCEOのMiguel Stilwell d’Andrade氏は「石炭火力発電の採算性はCO2排出コストの上昇と、天然ガス発電や再エネ発電の価格競争力の向上で減少は不可避だ。ポルトガルだけでなく、イベリア半島全体での石炭火力発電の閉鎖の進展は、エネルギー移行プロセスでの自然な結果でもある」と述べている。

 

 環境NGOの「Europe Beyond Coal Campaign」のKathrin Gutmann氏は「ポルトガルは当初、2030年の『脱石炭火力』目標だった。それを2023年に、そして今回2021年にと前倒しを続けてきた。エネルギーシステムのクリーン化のスピードが早まっていることを示す」と指摘している。

 

https://www.edp.com/en/news/2020/07/13/edp-anticipates-closure-coal-plants-portugal-and-spain