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除染水処理で溝 相馬市「より慎重に」vs.環境省「簡易で十分」(河北新報) 環境省は 地元の不安一掃を最優先すべき

2012-11-02 09:25:39

除染水の浄化装置を使って放射性物質濃度を下げる担当者
除染水の浄化装置を使って放射性物質濃度を下げる担当者


福島第1原発事故の除染で出る放射性物質を含んだ水の処理をめぐり、環境省と福島県相馬市の見解が分かれている。同省は「放射線量がある程度低ければ排出して構わない」との立場。市は「放射性物質濃度を極力下げないと市民が不安がる」と異を唱える。除染水の排出基準がなく、両者が一致点を見いだせずにいる。

相馬市は放射線量の比較的高い玉野地区を中心に住宅の除染を行っている。対象は約150軒でうち約100軒(10月26日現在)を終えた。屋根などを水で洗い流して排水を回収する。水は1軒200~300リットル必要で、放射性物質濃度は1リットル当たり300~400ベクレルに上る。

環境省は水の処理について「不純物を沈殿させ、水周辺の空間放射線量が低くなれば上澄みを排出して問題ない」(水・大気環境局)と簡易な処理で十分との考えを示し、市に伝えている。

市は慎重で、水をもみ殻とイオン交換物質に通して浄化する装置を独自に整備し、濃度を水道水の濃度基準に当たる10ベクレル以下に下げて地元の川に流している。立谷秀清市長は「排水は河川で拡散するので、ここまでしなくても安全だろうが、市民の安心感を得ることを優先した」と説明する。

浄化装置の整備費は約400万円。国は「過度な処理」と見なし、今のところ国費で賄う考えはない。このため、市は除染費全体をやりくりして整備費を工面した。「国は10ベクレル以下にしなくてもいいと言うが、住民感情は異なる。国の責任で予算化してほしい」(民生部)と要望する

除染は原発事故がもたらした新しい課題で、除染水の排出基準はまだ設けられていない。環境省は「基準を作れば、検査などで除染作業が遅滞する可能性がある」と策定に消極的だ。市は「基準と処理方法を明確にしてほしい」と言う。基準がないために両者が自己判断し、歩み寄りにくい状況になっている。

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/11/20121102t61011.htm