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パリ協定発効確定、だが協定で約束した各国の対策を実行しても、世界の平均気温は2050年までに目標値「2℃」超え避けられず。専門家チームが報告書(RIEF)

2016-10-04 00:20:26

globalwarmingキャプチャ

 

 温暖化対策のパリ協定は11月中に発効するメドがついたが、パリ協定で各国が約束した温室効果ガス削減対策を実施しても、地球の平均気温は2050年までに「2℃上昇」の目標を上回る可能性が高い、と指摘する科学者の報告が発表された。

 

 報告書をまとめたのは、国連気候変動政府間パネル(IPCC)の元議長のSir Robert Watson氏を中心とする7人の科学者グループ。報告書は「The Truth About Climate Change(気候変動の真実)」と題している。

 

 報告書は「気候変動は今、起きている。予想よりもかなり早い速度で」と警鐘を鳴らしている。Watson氏は、「すべての主要な(温室効果ガス)排出者によるさらなる努力が伴わなければ、2℃上昇への到達はさらに早まるだろう。また1.5℃の努力目標を達成する見込みは、すでに”文字通りない”と言うのが妥当だ」と述べている。

 

 パリ協定では、産業革命以前からの世界の気温上昇を2℃未満に抑える目標で合意するとともに、気候変動への備えを強化するため、1.5℃未満に抑制する努力目標も定めている。しかし、今回の報告書では、すでに地球の平均気温は産業革命以前から1℃上昇しており、今後10年以内に1.5℃の上昇となる可能性もあると推計、パリ協定の目標の達成はすでに、相当、厳しいと指摘している。

 

 このままで気温上昇のトレンドが進むと2050年までには、気候変化は危険な状況になる可能性が高いと指摘している。Watson氏は「人々は気候変動を抽象的で先のことであり、議論の余地があるものかのように思っているようだが、実際はすでに地球は想定以上に早く過熱化している」と警告している。

 

 報告書通りだと、現在、生きている我々の大半が、過熱化して危険度を増した地球での生活を体験することになる。パリ協定は京都議定書(2008~12年)と違って、先進国だけでなく、途上国も温室効果ガス削減目標を自主的に約束するアプローチをとった。全署名国がカーボン削減に取り組む舞台に立ったわけだ。その一方で、各国とも自主的な削減約束なので、1.5℃削減努力や、2℃削減目標の実現を前提にして各国に削減量を配分していない。このため各国が公約通りに削減しても、目標を満たせないとの懸念は、当初から出ていた。

 

 CO2キャプチャ

 

 報告書は「パリ協定での各国の削減約束量を達成しても、地球の平均気温は2030年代の早期に、1.5℃上昇となり、2050年までに2℃上昇に達する」との推計結果を示している。Watson氏は、「パリ協定発効は重要なステップだが、温暖化を阻止するには、2倍も3倍もの努力が必要だ」と各国の追加的行動を促している。

 

 さらに、主要な排出国全体による追加的な削減行動が採られない限り、2℃目標をオーバーする時期は、より早くなる可能性もある、としている。過去に排出された温室効果ガスは大気や海洋に吸収されてゆっくり反応し続けており、0.4~0.5℃の追加的上昇もあり得るという。

 

 パリ協定に盛り込まれた途上国の削減約束も、実現するかどうかは、先進国が年間1000億㌦の資金供与を続けられるかどうかにかかっている。Watson氏は途上国の自主的削減目標の80%は先進国からの資金・技術支援次第、と指摘している。

 

 2℃目標の達成がほとんど不可能という推計の一方で、報告書は「大事な点は、2℃上昇の時期ではなく、それがもたらす気候変動の激化である。1990年以来、気候変動に伴う自然災害は倍増している。次の20~30年間の間に、2℃上昇を超えることは、気候変動に伴う災害がさらに倍増することを意味する」

 

 気候変動に伴うイベント増の影響は、風水害等の自然災害の多発だけではない。水資源管理の劣化、食料生産の不安定化、健康影響の広がり、都市や地域のインフラ機能の低下など、広範囲な問題が悪化・激化することを意味する。

 

 ただ、こうした2℃シナリオの前倒し実現は、避けられないわけではない、と報告書は付け加えている。エネルギー生産・使用を一気に再エネ主導に切り替え、自動車も電気自動車へ乗り換え、残る化石燃料発電所のCO2排出を吸収するCCSを普及させ、CO2吸収源の森林の伐採を制限、逆に植林を増やすなどの低炭素化促進策の実行だ。

 

 そうした抜本的改革を、パリ協定の発効後の対策実施の過程で、どれだけ迅速に、どれだけ深く、実現できるかどうか。「動き出すパリ協定の次」が、本当の試金石になる。

 

http://www.independent.co.uk/environment/global-warming-truth-about-climate-change-dangerous-2c-a7337871.html