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ソフトバンク、スイスの再エネ貯蔵システムのベンチャー企業に、1億1000万㌦出資。再エネ電力を巨大な「充電レンガ」に貯蔵、タワーで保管。再エネ電力をベースロード電源に(RIEF)

2019-08-16 12:33:29

Vault1キャプチャ

 

   ソフトバンクは、傘下の「ソフトバンク・ビジョンファンド」を通じて、スイスの再生可能エネルギー貯蔵システム開発のベンチャー企業、「Energy Vault(エネルギー・ボールト:EV)」社に1億1000万㌦(約150億円)を出資した。同社のシステムは、再エネ電力を低コストで「タワー状」で貯蔵する仕組みで、再エネ電力を低コストのベースロード電源に変えることができる期待がある。

 

 (写真は、EVが構築する高効率の電力貯蔵システム。右のタワーが巨大な「充電レンガ」を積み上げた貯蔵サイト)

 

 ソフトバンクは出資とともに、ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーのパートナーであるAndreas Hansson氏が、EV社の取締役会メンバーとして参画する。

 

 太陽光や風力などの再エネ発電は、コスト低下によって世界中で広がっている。だが、最大の課題は発電量が日射や風況によって変動するため、需給調節が容易ではない点だ。課題克服のため、蓄電設備の併用が進むが、コスト面がネックとなっている。

 

Vault2キャプチャ

 

 EVの電力貯蔵技術は、発電した電力を貯蔵する点で蓄電設備と同様。だが、電力貯蔵と送電のシステム全体をAI等で自動化、送電網(グリッド)の状況や、天候の変化等についても独自開発のアルゴリズム等を活用して高効率で対応できる。

 

 再エネ電力自体は、これもEVが独自開発した一個35㌧(metric tons)の特別製の「レンガ」に貯蔵する。これらの「充電レンガ」をタワー状に組み立てて保存、電力が必要な時にクレーンでレンガを搬出する仕組み。レンガへの充電、貯蔵、搬出等はすべて自動化され、EVはこれらの開発・デザイン等を特許化している。

 

 EVの貯蔵システムの基本的な発想は、揚水発電システムに由来するという。電力の不要な時に揚水し、電力が必要な時に発電する伝統的な「オンデマンド」の発電システムを、アルゴリズム、AI等を駆使して、高効率、低コスト、安定的な電力供給システムに発展させた形だ。

 

 EVは、このシステムによって、再エネ電力自体が、電力システム全体を安定的にマネージでき、CO2排出量もなく、化石燃料発電に代わる安心・安定のベースロード電源になる、と説明している。

 

 同社2018年11月の設立と、極めて若い会社だが、すでにインドのタタグループの「タタ電力(tata Power Company Limited)」と提携し、北イタリアに最初の建設プロジェクトとなる35MWhの電力を供給できる設備を建設中という。

 

 また同社は、セメントメジャーとして知られるCEMEX(メキシコ)傘下のCEMEX Research Group AG(Switzerland)とも技術協力関係を結びとともに、CEMEXのベンチャーファンドからの出資も受け入れている。

 

 ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーのマネージング・パートナーのAkshay Naheta氏は「 EVは21世紀の素材科学、機械ビジョンソフトウェア等を活用して、環境負荷の少ない再エネ技術をさらに発展させる解決法を開発した。同社に出資することはソフトバンクグループのエネルギー・ポートフォリオに高く貢献するものであり、同社のグローバル市場での発展を期待している」とコメントしている。

 

 EVのCEOで共同創立者のRobert Piconi氏は「ソフトバンクのビジョンファンドとパートナーを組むことは、われわれのグローバルなプレゼンスを拡大することに大きく貢献する」と歓迎している。

 

https://energyvault.com/energy-vault-closes-series-b-funding-with-110-million-investment-from-softbank-vision-fund/