日本の再生可能エネルギーの開発計画は増えるが、系統連系は全体の3割弱。「ボトルネック」はコストリスクを開発業者に転嫁する原因者負担原則等の制度設計(政策由来)にあり(宮本美智代)
2026-05-19 08:35:30
(写真は、メガソーラー下部を草地化して炭素吸収・固定化機能を付与した岡山赤盤市での「プロジェクト」=一般社団法人ナチュラルキャピタルクレジットコンソーシアム(NCCC)から引用)
日本の再生可能エネルギーの開発計画は増大している。だが、申請段階から実際の系統連系に至るまでのプロジェクトの移行率は依然として低い。2025年12月時点で検討中の風力、太陽光、蓄電設備の容量約317ギガワット(GW)のうち、実際に系統連系されたのは約87GW(27%)にとどまる。計画段階のプロジェクトと接続済み容量との間の格差が解消しないのは、日本の再エネ発電のボトルネックが本質的に制度的なもの(政策由来)であることを示唆している。コストの透明性、プロジェクトの優先順位付け、および送電調整を改善する改革が行われない限り、再エネ開発の容量は、送電接続を求める「待機行列」として積み上がるだけで、電力システムが求められている大規模な変革にはつながらない可能性が高い。
日本の再エネ開発では太陽光発電の実現率が最も高く、接続容量は検討段階の約2.3倍に達している。対照的に、陸上風力、洋上風力、蓄電池の実現率はそれぞれ約14%、1%未満、0.35%と、著しく低い水準にある。
日本の系統連系におけるボトルネックは、3つの構造的な課題を反映している。すなわち、コストリスクを開発業者に転嫁する「原因者負担」原則に基づく改修費用の配分。限られた系統容量をめぐって建設準備の整ったプロジェクトと投機的なプロジェクトが競合してしまうような、「連系待ち」の規律の欠如。そして発電地域と主要な需要拠点の間に構造的なボトルネックを生み出す地理的な送電制約である。
送電網の混雑や系統連系の遅延は、世界中の多くの経済圏における再エネ発電への移行において、重大なボトルネックとして浮上しており、日本の問題もその例外ではない。しかし、日本の場合の課題は、送電資源の可用性よりも、政策由来の制度設計に根ざしている。
日本の再エネ事業のパイプライン(開発段階の事業)は拡大し続けている。しかし、特に洋上風力や蓄電池といった送電網への依存度が高い技術では、当該のプロジェクトが申請段階から実際の系統連系に至るまでの転換率が依然として低い。その結果、待機容量と電力システムに実際に統合される容量との間に、ますます大きな乖離が生じている。
つまり、日本の再エネ発電におけるボトルネックは、再エネ事業者の「野心」の欠如や再エネの資源制約といった問題ではないのだ。そうではなく、系統連系システムがコストを配分し、待機順守を管理し、送電網の拡張を調整する制度的仕組みが生み出す構造的な課題を反映しているのだ。 こうした制度的な課題が解決されない限り、再エネの容量は計画段階で積み上がっていくだけで、国内の電源構成を実質的に変えることは難しいだろう。
系統連系待ちリストの乖離
日本の系統接続を求める再エネ事業者が一般送電事業者に提出する申請データの増加は、日本の再エネ計画案件が拡大し続けていることを示している。その一方で、系統接続待ちの案件と、実際に系統に接続された案件との間には、格差が拡大し続けている。
2025年12月時点の日本の9つの送電系統運用者(TSO)のデータによると、技術種別における不均衡は顕著だ。系統接続を検討中の風力、太陽光、蓄電の容量約317ギガワット(GW)のうち、実際に系統に接続されたのは3割に満たない約87GW(27%)だけだ。 そのうち、太陽光発電は最も高い実現率を示しており、接続済み容量は現在の検討段階にある容量の約2.3倍に相当する。この高い実現率は、固定価格買取制度(FIT)の導入初期時代の建設ラッシュと、配電レベルでの太陽光発電プロジェクトの接続が比較的容易であることに起因している。
対照的に、風力および蓄電池プロジェクトは、計画段階から実際の系統接続に至るまでの転換率が太陽光発電に比べてはるかに低い。これは高圧送電網へのアクセスへの依存度の高さと、開発期間の長さを反映している。陸上風力発電は、計画段階の容量のうち、稼働資産に転換されたのはわずか約14%にとどまる。さらに、洋上風力になると、その転換率は1%未満となる。これは、入札から 建設までのリードタイムが長いことや、専用の送電回線が必要であることなどが要因だ。蓄電池は、すでに混雑している送電網地域において、限られた確定容量を巡ってプロジェクトが競合しているため、約0.35%と最も低い転換率を示している。

一方、化石燃料に依存する火力発電容量は、依然として電源構成において構造的に支配的な地位を占めている(上図参照)。接続済みの火力発電容量は計画段階の容量を5倍以上上回っている。これは大幅な新規拡張によるものというよりは、既存の発電基盤が維持されていることを反映している。
再エネプロジェクトが「待機行列」で停滞する理由
送電網の混雑は、日本特有の問題ではない。世界的に見ても、2022年には3,000GWの再エネプロジェクトが系統連系待ちの行列を形成している。欧州では、500GWを超える風力およびその他の再エネプロジェクトが、系統連系審査を待っている。 米国では、2,600GWを超える発電・蓄電容量が系統連系を申請していたが(これは設置容量の2倍以上にあたる)、そのうち80%以上が、高額かつ不確実な送電網の増強コストを理由に最終的に申請を取り下げている。
したがって、日本は制度設計こそ異なるものの、多くの先進国に共通する課題に直面している。欧州連合(EU)の電力市場および再エネに関する規則では、EU加盟国は、系統の安全性を確保することを条件として、再エネに対し、差別のない系統アクセス、優先的な接続および優先的な出力を提供しなければならないと定められている。 発電送電料金は1メガワット時(MWh)当たり0.5ユーロ(0.59米㌦/MWh)に上限が設定されており、補強費用の相当部分は規制された料金を通じて社会化されている。接続の待機リストは依然として存在するが、費用配分ルールと接続権は規制レベルで事前に定義されている。しかし実際には、遅延は物理的な送電網の制約や、より広範な実務上の課題を反映する傾向が強まっている。

対照的に、日本の系統接続のボトルネックは、相互接続枠組みの3つの構造的特徴、すなわちコスト配分、待機リストの設計、および地理的な送電制約によって形作られている。
コスト配分
日本では、地域間送電の増強費用は主に再エネの開発事業者が負担している。同業者は、送配電事業者から、新規接続費用の大部分を負担することが求められる。
系統連携プロセスにおいて、必要な補強費用は技術調査を経て送電事業者または配電事業者によって決定される。そのため、開発事業者はそうした補強費用負担の見通しについて確実性を欠いたままで事業を進めることになる。代わりに、開発事業者は調査段階終了後に費用見積りを受け取り、指定された条件の下で事業を進めるかどうかを決めなければならない。見積りがいったん決められると、その基礎となる費用負担枠組みを系統事業者と再交渉する余地は限られてしまう。
こうした系統連系枠組みは、プロジェクトの許認可や収益の確実性がしばしば不完全な段階で、アップグレード費用のリスクの相当部分を開発事業者に転嫁することになる。再エネ事業者は、それによって初期段階の財務的リスクが増大する。日本の系統連系枠組みは、系統連系に関連する送電網のアップグレードに対して、強力な「原因者負担」の原則を適用しているわけだ。
「待機行列」の設計
送電網への接続に関する課題は、接続待ちリストの仕組みによってさらに深刻化している。従来、日本の系統連系システムは「先着順」で運用されてきた。混雑している地域では、確約された送電容量が既存の設備によってすでに埋まっていることが多く、新規参入者は大幅な出力制御リスクを伴うノンファーム型の接続に頼らざるを得ない。同接続では、送電線の空き容量がない場合でも、混雑時に出力制御を受けることを条件として、再エネ発電を系統に接続する方式だ。
同方式での接続では、売電量が制限されやすく、かつ出力制御を受け入れる前提なので、売電収入の減少リスクが常にある。また出力制御は送配電事業者の判断で実施されるため、再エネ事業者は同制御の発動を「不確実要因」として、受け身で対応せざるを得ない。前述の地域間送電の増強費用の負担とほぼ同様となる。しかし現状では、多くの再エネプロジェクトは、系統接続の確保を優先して、ノンファーム型接続に依存している。
このノンファーム型接続に関しては規則の改革が行われたものの、待機順の遵守や優先順位付けは依然として不十分である。建設準備が整ったプロジェクトと、初期段階の投機的なプロジェクトが限られた容量を巡って競合する事態が生じている。その結果、送電システムの価値に基づいた明確な優先順位付けがなされないまま、接続容量が積み上がっている。
地理的な送電制約
再エネの潜在能力は北海道、東北、九州などの地域に集中している一方、需要は東京や関西といった主要な消費拠点に集中している。そのため、地域間の送電容量が限られていることから、再エネ電力が発電される地域と最終的に消費される地域との間に構造的なボトルネックが生じている。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)の送電網マスタープランは、地域間の送電回線の強化を目指している一方、電力政策を所管する経済産業省は、地域内の基幹ネットワークについて、より計画的かつ積極的な補強の必要性について議論している。
しかし、現在、相互接続待ちとなっている多くのプロジェクトは、地域間の送電制約や、プロジェクト固有の送電網強化の必要性によって依然として制約を受けている。これらは、リードタイムの長い送電網の拡張だけでは迅速には解決できない。
再生可能エネルギー統合への道筋
検討段階のプロジェクトと接続容量との間のギャップが拡大していることは、日本の再エネ電力普及のボトルネックが、根本的には現行の送配電システムの運営に関する制度的なもの(政策由来)であることを示唆している。現在の枠組みは、再エネ事業者に多額のアップグレードコストを負わせ、先着順の待機リスト管理に大きく依存させ、さらには、送電に依存する技術に対する優先順位付けも限定的である。
そうした状況を踏まえると、日本の再エネ発電の普及を阻んでいるのは、再エネプロジェクトが不足しているためではない。現行の系統連系構造を変更しないままの制度運営が続くと、再エネ事業者の申請と稼働容量への転換のギャップがいつまでも改善されないことから、再エネ発電の導入は引き続き遅れることになるだろう。つまり、コストの透明性、プロジェクトの優先順位付け、および送電調整を改善するための制度的な改革がなされなければ、再エネ発電の容量は「待機行列」のリストに積み上がるだけで、電力システムの脱炭素化、発電効率化、供給力拡大などの、日本経済の今後の成長に必要な、大規模変革にはつながらない可能性が高い。
(注)本記事は米国の非営利シンクタンクIEEFA(Institute for Energy Economics and Financial Analysis)のサイトで、同機関のエネルギー金融スペシャリストの宮本美智代氏が執筆した「Japan’s renewable integration is constrained by its grid connection framework(日本の再生可能エネルギーの系統連系への接続は、その連系枠組み制度によって制約を受けている)」の記事(May15 2026)を、同氏の了承を得て翻訳し掲載した。
(IEEFAの元記事)https://ieefa.org/resources/japans-renewable-integration-constrained-its-grid-connection-framework
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宮本美智代(みやもと・みちよ) IEEFAのエネルギー金融スペシャリスト。アジアのエネルギー市場、特に日本を専門とする。中央大学で環境経済学、公共経済学を専攻。英キングス・カレッジ・ロンドンで安全保障と国際開発の修士号を取得。主に日本および海外の政府機関等にも勤務、外交官および投資アドバイザーとして活動。持続可能なエネルギー市場調査に従事。

































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