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報告書「中国2060年ネットゼロ表明の背景と今後の見通し」(金振、劉憲兵、田村堅太郎)

2021-10-25 14:54:40

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 本稿は公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の研究員による中国の「温室効果ガス排出量ネットゼロ戦略」の分析と今後の見通しを展望したものである。国連の気候変動枠組み条約第6回締約国会議(COP26)を控えて、世界最大の温室効果ガス排出国である中国の政策分析は極めて重要だ。

 

 概要によると、中国の習近平国家主席は、2020年9月の国連総会で「2030 年より前にCO2排出のピークを達成し(2030 年ピーク目 標)、2060 年より前に炭素中立(ネットゼロ、2060 年目標)を達成するように尽力」す ると表明した。報告書は、「2020 年 がもつ戦略的タイミングの意義」、「2060 年目標設定の背景にある戦略的思考」、「今後の見通し」、の3点を軸に分析している。

 

 主な結論としては、「2060 年目標宣言は、単なるパリ協定枠組みへのコミットメントではなく、『脱炭素社会の実現(脱炭素成長戦略)』を2050年までの次なる成長エンジ ンとして選んだことを意味し、脱炭素成長戦略は、2017 年に習主席が宣言した『高質な経済発展モデル」への転換方針と方向性が一致する点を指摘している。

 

 「2060年目標を設定した戦略的思考」としては、「脱炭素社会の実現は国益につながる」との認識の定着化があると指摘する。その根拠として、中国では国際気候変動枠組みとして実施されているCDM(クリーン開発メカニズム)事業の半分近くが行われ、発行された CER(認証排出削減量)も過半を超えるといった事実をあげている。再エネルギ―の生産規模、同関連雇用数のいずれも世界第1位の再エネ大国でもある。


  また中国は、持続可能な産業発展モデルへの転換という大きな課題に対処するため、 「時代遅れの生産設備」の淘汰政策と「戦略的次世代産業」の育成政策を進めており、それらは、中国の産業構造の脱炭素化に貢献している。

 

 2017年に習政権が提唱した「高質な経済発展」モデルへの転換として「三新経済」の育成に力を入れており、それは「グリーン・低炭素・持続可能 な経済体系の構築」に貢献する等を指摘している。

 

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