HOME1. 銀行・証券 |三井住友銀行、「グリーン事業」に融資する法人向け「グリーン預金」取り扱いへ。欧州の同種預金を参考に。国内でも以前あったが、金融庁の「導入預金」懸念で立ち消えた経緯(RIEF) |

三井住友銀行、「グリーン事業」に融資する法人向け「グリーン預金」取り扱いへ。欧州の同種預金を参考に。国内でも以前あったが、金融庁の「導入預金」懸念で立ち消えた経緯(RIEF)

2021-03-07 21:51:53

SMBC001キャプチャ

 

 三井住友銀行は8日、サステナビリティクス・ジャパンと「グリーン預金適格ガイドライン策定」に関する契約を結んだと発表した。顧客から受け入れたグリーン預金をESG分野のうち、特に再生可能エネルギー事業等への融資に運用する。その運用状況をサステナビリティクスが第三者として評価することで、透明性を確保するとしている。

 

 新預金はドル建てで国内外の法人から募る。金利水準は通常の定期預金と変わらない。想定する再エネ事業は、太陽光発電や風力発電の再エネ事業のほか、グリーンビルディング等としている。預金を預ける企業・機関投資家は、既存の法人預金等をグリーン預金に移すだけで間接的に環境対策に貢献でき、自らのESG活動にカウントできる。

 

 サステナビリティクスが本拠を置くオランダでは、1990年代から、個人向けにグリーン事業への融資に活用することを前提とした預金(あるいは投資信託勘定)の仕組み(グリーンファンドスキーム)が運用されている。同制度をモデルに、日本でもかつて、ある地方銀行が、地球温暖化問題に資することを目的に集めた預金を原資に、温暖化対策に取り組む企業や事業向けに融資する仕組みを設けたことがある。

 

 だが、当時の金融庁は、この種の預金は「導入預金」に抵触する恐れがあるとの判断を示し、2か月程度の募集で打ち止めになっている。導入預金とは、預金者が上乗せ金利等の「特別の金銭上の利益」を得る目的で銀行に預金し、その銀行に対して、指定する特定の第三者への融資を約束させる行為をいう。

 

 そうした行為は「預金等に係る不当契約の取締に関する法律」によって禁じられている。導入預金に基づかなければ融資を受けられないような財務内容の企業に、銀行が融資をすることは不良債権リスクを高める一方で、銀行は預金者に「裏利」などの特別の金銭的利益を与えるため、貸倒れのリスクが高まることを封じるためだ。

 

 今回の三井住友銀行のグリーン預金については、金融庁が認可したとみられることから、今回、金融庁が法解釈で柔軟な姿勢に転じたのか、あるいは導入預金への悪用を防ぐ措置を設けたのか、その辺を明確にする必要があるようだ。

 

 同行の報道発表だけではよくわからないが、預金には「特別の上乗せ金利等」がないとされることから、預金面のリスクは排除されているといえるのかもしれない。融資面では、気候変動対策等のESG要因の改善という「良い事業」へ投じられるため、悪用の懸念が払しょくされると判断されたのか。仮に、グリーン融資だからダイジョウブとするならば、別の疑問が生じる。

 

 融資先の事業が「良い事業」かどうかを判断するには、金融庁はそうした尺度(グリーン事業等の分類:タクソノミー)を保有し、金融機関にも示す必要があると思われる。だが、同庁がそうした尺度を整備しているとは聞いたことがない。契約した第三者評価のサステナリティクス社はESG評価の専門会社なので、それらの知見は同社にはあると思われる。金融庁は「オープンな官庁」なので、同社に判断を委ね、それを尊重するという立場なのかもしれない。

 

 だが、法律での規定がある以上、それに抵触するかどうかの見極めは、本来、金融監督業務を担う行政が担当するものだ。それを、民間のコンサルの評価に委ねるというだとすると、ある意味で過度な規制緩和との批判も出かねない。否、金融庁の英断ということか。

 

 海外では、オランダ以外でも、英大手銀行のHSBCやスタンダードチャータード銀行が企業顧客向けに、「グリーン預金アカウント(Green Deposit Account:GDA)」を開発、提供をしている。インドのYES銀行も同様の預金商品を開発している。http://rief-jp.org/ct6/98619

 

 一方、米証券取引委員会(SEC)は今般、気候リスクを含むESG情報開示を企業に促すに際して、グリーンウォッシュやサステナビリティウォッシュに目を光らせるチームを発足させた。監視の対象は、企業だけでなく、企業に助言をするアドバイザー業(コンサルも含む)も入るとしている。わが国では「グリーンならば、『概ね良し』とする」という、おおらかな気持ちを尊重することを評価するのかもしれない。http://rief-jp.org/ct4/111667

https://www.smbc.co.jp/news/j602247_02.html

(本記事は、追加情報を受けて、2021年3月8日午後4時43分に更新しました)