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環境NGOの気候ネットワーク等、三菱UFJフィナンシャル・グループに対して、パリ協定に沿った投融資の決定と開示を求め株主提案。昨年のみずほFGへの提案に次ぐ気候議案の提出(RIEF)

2021-03-29 14:32:39

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  環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)と、個人株主3人は29日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の株主として、同社に対しパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示するよう求める株主提案を提出した。MUFGは石炭火力発電事業への新規融資停止等の方針を定めているが、内外で化石燃料や森林破壊事業への多額の資金提供を続けているとして、投資家がMUFGの投融資にかかる気候変動リスクを適切に評価できるようにする対応を求める形だ。

 (写真は、株主提案を提出したNGO関係者たち)

 日本の主要金融機関に対する気候関連での株主提案は昨年、KIKOがみずほフィナンシャル・グループに対して、パリ協定と整合的な経営戦略の開示を求める株主提案を行ったことに次ぐ。みずほへの提案は否決されたが、内外の投資家34.5%から支持を得た。KIKOの活動は、一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)が主催する第6回サステナブルファイナンス大賞のNGO/NPO賞に選定された。https://rief-jp.org/ct7/110824

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 今回の提案者はKIKOのほか、個人株主として福澤恵氏(マーケット・フォース)、川上豊幸氏(レインフォレスト・アクショ ン・ネットワーク:RAN)、横山隆美氏(350.org Japan)が加わった。いずれも環境NGOに所属している。

 KIKOらは株主提案の提出と同時に、MUFGの投資家に向けて、6月の株主総会で同提案への賛同を求めるほか、MUFG等への意思表明、MUFGへの気候リスク事業への投融資方針の強化と情報開示についての働きかけを求める書簡も発信した。https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2021/03/Final-0326-MUFG-investor-briefing-_JP.pdf

 KIKO等によると、株主提案内容は「定款の一部変更」。定款の中に「当会社は、パリ協定の目標に沿った投融資を行うための指標と短期、中期及び長期の目標 を含む経営戦略を記載した計画を決定し、年次報告書にて開示する」という条項を規定することを求めている。

 提案理由として、パリ協定の目標に沿う経営戦略を記載した計画を決定、開示することで、MUFGの気候変動リスクを管理し、 企業価値を維持向上することを目的とする、としている。

  さらに「MUFGは、環境、社会、ガバナンス方針を定めているが、依然、化石燃料拡大や森林破壊関連の事業等に多額の資金提供を続けており、パリ協定の目標と全く整合していない。これは、日 本政府が温室効果ガス排出を2050年に実質ゼロにする目標を掲げる中で、当会社にお ける深刻な投資及び評判リスクだ。よって、本条項を定款に加えることを提案する」と説明している。

 KIKOによると、MUFGの石炭産業への過去2年の融資総額は世界3位、化石燃料部門への過去5年の融資・引受額は世界6位、パーム油産業への過去4年の融資・引受額は世界7位と、気候変動を加速する事業に世界最大規模の融資・引受を行っている。こうした状況では、1.5℃目標の達成に不可欠な2050年ネットゼロを実現できず、パリ協定の目標とは全く整合していない、と指摘している。

 海外の主要金融機関は石炭火力発電事業への支援中止や投融資からの撤退が進んでいる。最近では、英HSBCが、2040年までに石炭火力発電や発電用石炭開発への融資を段階的に廃止する方針を決定し、5月の株主総会で戦略の策定・公表を提案する方針を打ち出している。米シティグループも、石炭火力拡大を計画する新規顧客への融資を2021年以降引き受けず、既存の石炭火力事業への融資も、今後20年間で段階的に廃止する計画を公表している。

 KIKO国際ディレクターの平田仁子氏は、「MUFGのポリシーは幾分かの強化が図られたが、現状ではパリ協定と全く整合していない。特にコーポレートファイナンスを含む全ての投融資をパリ協定に整合させるには、会社として、短期及び中期の目標を含む経営戦略を決定し、早々に実質的な行動を起こし、気候変動に伴う投資リスク・評判リスクを招かない対応が必要」と指摘している。

 提案者になったマーケット・フォースのエネルギーキャンペーン担当である福澤恵氏は、「2040年までに全世界の石炭火力発電所の稼働を停止させなければならない中、(MUFGの)プロジェクト・ファイナンスに限定した残高ゼロ目標は不十分」と指摘している。

 

 RAN日本代表の川上豊幸氏は「MUFGは、森林破壊や土地紛争といった問題を抱える『紛争パーム油』に最も多額の資金を提供している銀行の一つで、膨大な量の炭素を貯留する熱帯林と泥炭地の破壊に資金提供という形で加担している。しかし、気候変動への影響については一切開示していない」と強調。

 

 350.org Japan代表の横山隆美氏は「気温上昇を1.5度に抑えるのは時間との勝負であり、ネガティブ・エミッションなど今はない技術に頼ることは若い世代や将来世代に対する責任放棄と同じ。経済に対し非常に大きな影響力を持つMUFGは、気候危機問題に対し国連責任銀行原則に基づき、責任を持って解決に取り組む必要がある」と訴えている。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-03-29/MUFG-shareholder-resolution

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2021/03/Final-0326-MUFG-Shareholder-Resolution_JP.pdf

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