三井住友信託銀行、ESG・サステナブルファイナンス分野に、外部人材登用加速。環境NGOや世界銀行、メーカー等、多彩な経歴の持ち主が集まり「ESGの梁山泊」状態に(RIEF)
2022-04-14 17:10:29

三井住友信託銀行のESG、サステナブルファイナンス分野に外部から人材が集結している。環境NGO、世界銀行、メーカー、サービス業等、それぞれの分野で活躍した人たちが、サステナビリティの旗の下に集まり、「ちょっとした梁山泊状態」という。金融人と非金融人がサステナビリティ分野で融合することで、日本の金融機関の従来からの殻を打ち破る期待も出ている。
一昨年来、同行に加わったESG、サステナビリティ分野の外部人材の一人に、環境NGOの350.org Japanで活躍した古野真氏がいる。同氏は、オーストラリアのクイーンズランド大、国立オーストラリア大修士などを経て、同国政府の気候変動省(当時)に勤務した経験を持つ。

350.org Japanの日本事務所代表として活動した後、気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)プロジェクトマネージャーを経て、昨年、三井住友信託に入った。現在は、同行のESGソリューション企画推進部シニアマネジャーとして、活動している。NGO等で培った外部目線を、銀行のESG業務に反映させることが期待されている。
執行役員兼ESGソリューション企画推進部の部長を務める松本千賀子氏は、ワシントンで世界銀行と米州開発銀行で、国際開発金融とサステナビリティ分野の業務に約20年にわたって取り組んだ経験を持つ。国際金融のエキスパートだ。世界銀行が初めて発行したグリーンボンドや気候変動向け金融商品開発にも携わった経験があるという。その後、EY Japanに移籍し、一昨年、三井住友信託に入った。

イオンの環境・社会貢献担当の執行役を務めていた三宅香氏は今年、三井住友信託に移った。現在は、同部主管という肩書だ。同氏は長年、イオンのESG戦略を推進してきただけでなく、持続可能な脱炭素社会の実現を目指す産業横断的な企業グループである「日本気候リーダーズパートナーズ(JCLP)」の共同代表も務める。このため、このほど国連が立ち上げたネットゼロ公約を各国政府の規制や企業の経営戦略等につなげるための特別委員会のメンバーに、日本から唯一選ばれている。

このほか、サステナビリティ推進部に昨年設立された「テクノロジー・ベースト・ファイナンス(TBF)」チームは、全員理系の博士と修士号を持つメンバー。過去1年半でエネルギー企業やメーカー等から8名を採用した。
同行のサステナビリティ関連の部署も「増殖中」だ。本部のサステナビリティ推進部、カーボンニュートラル企画推進部、法人事業系ではESGソリューション企画推進部、情報開発部ESGコンサルティングチーム、不動産事業では不動産企画部ESG企画推進チーム、不動産ソリュ-ション部環境不動産推進チーム等。これらの各セクションの中心メンバーに外部人材が加わっているという。
同行で長年ESG分野を牽引してきた金井司氏は、サステナビリティ推進部所属のフェロー役員兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)。外部人材を幅広く集めている理由について、同氏は、「あえて整理すると、理由は3つほどに分類できる」と説明する。
まず、即戦力という点。銀行自体、サステナビリティ業務を急拡大させているが、社内人材だけではとても市場の拡大のスピードに追いつかず、優秀なプレーヤーを外部内部を問わず必要としている。
第二は、従来の三井住友信託の行風、カルチャーだけでは顧客のESG、サステナビリティに対する多様なニーズに対応できない点。顧客に対して、ESG関連のコンサルティングを提供する場合等には、提供する銀行側の多様な人材によるバックグラウンドのすり合わせが、提供するサービスのクオリティを格段に引き上げることが可能、と強調している。
第三は、日々発展するESG系の革新技術へのファイナンスには従来の銀行員の知識では対応が困難という点。従来、取ってこなかったESGリスクを金融の視点でとることは、外部の専門家を内製化することによって可能になる、と位置付けている。
ESG・サステナブルファイナンスの展開は、人的資本が決め手ということのようだ。
(藤井良広)