HOME10.電力・エネルギー |日米関税交渉で合意した対米投融資第一弾のガス火力事業。事前の環境影響評価(EIA)無し。国際協力銀行(JBIC)ガイドラインに「違反」。3メガバンクも「赤道原則」ルール無視。トランプ政権への「忖度」を最優先か(RIEF) |

日米関税交渉で合意した対米投融資第一弾のガス火力事業。事前の環境影響評価(EIA)無し。国際協力銀行(JBIC)ガイドラインに「違反」。3メガバンクも「赤道原則」ルール無視。トランプ政権への「忖度」を最優先か(RIEF)

2026-04-25 03:16:15

JBIC 2026-04-25 030141

 

 対米関税交渉で合意した5500億㌦(約88兆円)の対米投融資の第1弾のガス火力発電所や原油輸出ターミナル等の案件に、国際協力銀行(JBIC)と3メガバンクが約2500億円を融資を決めたとされるが、このうちガス火力案件は米側による事前の環境影響評価(EIA)が必要な事業にも拘らず、それが付されておらず、JBIC等の環境社会配慮ガイドラインに「反する」ことがわかった。民間の3メガバンクの融資についても赤道原則に当てはまらないとみられる。トランプ政権の強引な関税押し付けをなだめるために、官民の日本側金融機関が、自らのルールを無視して「不十分な案件」を丸呑みする格好だ。

 

 米投資の第1弾は、オハイオ州のガス火力発電所と南部テキサス州での原油輸出ターミナル、南部ジョージア州の人工ダイヤモンド製造施設の整備の3案件。3事業それぞれで官民金融機関が出資する特別目的事業体(SPV)を作る。これらSPVに、JBICと3メガバンクが協調融資をする。JBICと3メガ合計の融資比率は1対2とし、民間の拠出分には政府系の日本貿易保険(NEXI)が融資保証を付け、損失リスクを抑えるとしている。

 

 ただ、JBICおよびNEXIも3メガも、国際的な大規模なプロジェクトへの融資に際しては、事業者によるEIAの実施をルール化している。JBIC等の公的機関は、環境社会配慮ガイドラインで、融資の意思決定前にEIAの実施を含め、EIAの提出、公開とレビューを義務づけている。三菱UFJ銀行などの大手銀行も赤道原則に基づいて、融資判断を決める前のEIAを条件化している。

 

 第1弾の3件のうち、テキサス州の原油輸出ターミナルは、EIA必須の案件で、事業者からEIAが示された。だが、オハイオ州のガス火力事業もEIA必須事業に分類されていた。にもかかわらず、EIAは示されておらず、建設予定地もまだ決まらない段階で、今年2月18日の事業発表時点で、JBICは同事業への支援検討を決めている。

 

 JBICの環境社会配慮ガイドラインでは、ガス火力のような「環境への重大で望ましくない影響のある可能性を持つようなプロジェクト」は、融資の意思決定前にEIAの提出、公開とレビューを義務づけている。また、2022年のG7エルマウ・サミットでは、日本を含むG7各国が「排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を2022年末までに終了する」ことで合意したことにも明らかに反する。

 

 環境NGOのFoE Japanなどは、「2023年末のCOP28成果文書において、世界190カ国以上が『化石燃料からの脱却』に合意しており、関税交渉の『取引材料』として化石燃料インフラに公的資金を投じることは、この国際合意の精神にも真っ向から反する」と批判している。高市政権によるトランプ政権への『忖度』で、日本の公的金融機関のルールに無理やり、「穴」を開けさせたことになる。

 

 NGOによると、JBICの担当者は「今時点で環境レビューに足る書類はなく、後日レビューをする形で、例外的なケース」と説明した、としている。一方でJBICは、これまでの国内向けのガイドライン改訂に関するコンサルテーションでは、EIAを通常、融資前に行うような案件には例外規定は適用しない旨を表明していたという。したがって今回の事業に例外規定を適用することはガイドライン違反になる、と指摘している。「二重基準」ということか。

 

 NGOは声明で、「ガイドライン上定められた、意思決定前のEIAという原則を適用しないことは大きな問題だ。融資決定をした後にレビューを実施し、甚大な環境社会影響があった場合、直ちに貸付実行停止、借入期限前償還等の対応がなされる必要があるが、今回のように政治化された案件で後日の環境レビューで実際に中止できるのか大きな疑問が残る」ためだ。「忖度」による政治リスクを誰がとらされるのか、という疑念もある。

 

 公的機関だけではない。今回融資に加わる三菱UFJ、みずほ、三井住友の3メガバンクはそろって赤道原則に署名している。だが、同原則が参照する国際金融公社(IFC)の「環境と社会の持続可能性に関するパフォーマンススタンダード」では、EIAの実施、影響を受けるコミュニティへの情報公開と協議、温室効果ガス排出量の評価などを明確に求めている。NGOは「JBIC、NEXIと同様に(民間銀行も)適切な環境社会配慮を実施するべきであり、それを棚上げにすることは許されない」と指摘している。

 EIAの提出があったテキサス州の原油輸出ターミナル事業も、問題なしとはいかない。同ターミナル周辺では、長年、JBICが化石燃料事業を支援してきた。しかし、2022年6月8日には、同地域でフリーポートLNG爆発事故が起きている。同事故では3,400m³のメタンを大気中に排出し、 爆風で地域の子どもを含む複数人がけがをした。ターミナル自体も8カ月もの間、操業停止になった。今回のターミナル建設も、事故を起こしたターミナルと同じブラゾリア郡に建設されるという。現地では日本企業・銀行への信頼感は必ずしもよくないとされる。

                           (藤井良広)

https://foejapan.org/issue/20260424/29477/