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日本のバイオマス発電の主原料のベトナム産木質ペレットで、輸出事業者のFSC認証偽装が確定。事業者は制度から排除。偽装燃料で発電したFIT電力の扱い、問われる(RIEF)

2022-10-19 19:17:36

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 国際的な森林認証制度を運営するFSC(本部:ドイツ・ボン)は18日、日本のバイオマス発電向けに大量の木質ペレットを輸出しているベトナムの事業者がFSC認証を偽装していたことが確認されたとして、同社をFSC認証制度から排除した。認証偽装が確認されたのは2020年の販売分で、日本の主要な商社等が輸入し、JERA等が運営するバイオマス発電や石炭火力混焼発電等に利用されていたとみられる。いずれも固定価格買取制度(FIT)の対象で、これらの発電所からの電力は認証偽装分、高く買い上げられていたことになり、返還問題が生じそうだ。

 

 FSC認証を偽装していたのはベトナムのAn Viet Phat Energy(AVP)社。同社はバイオマス発電の燃料となる木質ペレットを年間60万㌧以上を日本と韓国に輸出してきた。同社のペレットに認証偽装がある疑惑については、RIEFが2020年5月以降、再三指摘してきた。https://rief-jp.org/ct4/102720 https://rief-jp.org/ct4/107574 https://rief-jp.org/ct10/121993

 

AVP社はベトナムの木質ペレット輸出事業者としてはトップだった
AVP社はベトナムの木質ペレット輸出事業者としてはトップである

 

 同社の認証不正疑惑は、ベトナム現地のNGO等が2020年以前から指摘していた。FSCはFSC認証の監査機関であるASI(Assurance Service International)と連携し、2021年3月にアジア地域でのFSC認証木質ペレットサプライチェーンの取引情報の照合調査を始めた。その結果、今年1月に偽証の懸念が高まり、同社に対して、FSC認証の管理証明(CoC)認証を一定期間停止措置をとった。

 

 その後、同社に伐採林を提供する事業者らの調査からも、認証材が提供されていないことが確認されたことから、ASIはFSCに対してAVPをFSC認証制度から排除することを勧告し、今回の措置となった。ASIの調査は、AVPを含め136の認証取得事業者からの購入・販売情報を収集して調べており、最終結果は今年末に発表する予定。AVP以外の問題が指摘される可能性もある。

 

  AVPに対する排除措置は、2026年春までの3年半にわたる。この間、同社の木質ペレットの商標ライセンスは取り消されるほか、同社は排除措置が解除されるまで、FSC認証の再取得を試みることもできない。同社の輸入ペレットを在庫に抱えるバイオマス発電事業者にとっては、同在庫燃料を使った発電をしても、FIT対象の電力とはみなされなくなる。問題は2020年等に燃料化した「偽装ペレット」によるFIT買い取り電力をどう扱うかだろう。

 

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 偽装したのは事業者であり、輸入業者や発電事業者は「被害者」の立場でもある。しかし、FIT電力の買い取り資金は賦課金として国民負担に回されている。電力消費者は、バイオマス発電として不適格な電力にも負担金を払わされてきたことになる。制度を運営する国(経産省)は、燃料のチェック等の制度運営責任を負うが、実体は業者任せで、制度運営者としての監督責任の不備の指摘は免れられないだろう。

 

 虚偽の「FIT発電」が横行していたわけだ。ベトナムでのFSC認証対象となる樹木のアカシア等の栽培面積を前提にすると、産出できる木質ペレットは全部でも、年間30万㌧程度とされる。ところが、実際にはその6倍近くが日本を中心にして輸出されてきた。最も多いのが日本市場だ。日本の杜撰な輸入・管理体制の足元が業者に見透かされていたともいえる。

 

 それだけではない。これらのFSC偽装燃料は、廃棄物等を混ぜてかさ増しし、いろんな不純物を含んでいるため、バイオマス発電の発電中に火災事故を起こすなどのトラブルが、日本でも頻繁に起きている。本来は、こうした事故を行政が分析すれば、木質ペレットの品質の低さがわかったはずだ。だが、輸入業者も、事業者も、そして監督官庁も気づかなかったことになる。https://rief-jp.org/ct4/107574

 

 AVPのサイトには、2020年時点では、同社が木質ペレット輸入等で取引等があるパートナーとして、多くの日本企業がロゴ付きで紹介されていた。三菱商事、三井物産、伊藤忠、双日、阪和興業、東京電力、商船三井、JFE等だ。これらの企業の中には、同社とのペレット輸入にかかわっていないと説明する企業もあり、サイト情報も「偽装」していた可能がある。現在はロゴは消去されているようだ。

 

 同社の「認証付き」木質ペレットを、商社から購入して燃料として活用してきたバイオマス発電所や、石炭火力発電への混焼事業としては、JERA(常陸那珂、武豊)、 常磐共同火力、オリックス(響灘、相馬)、出光興産(昭和シェル)(京浜)、IHI(七ツ島) 、九電(大分)、丸紅関電(神栖)などの名前が業界関係者の間で指摘されてきた。https://rief-jp.org/ct4/102720

 

 これらの発電所の燃料中に認証偽証ペレットが大量に紛れ込んでいた可能性があるわけだ。

 

FSCは、大量の木質ペレットについて虚偽表示を行ったとして An Viet Phat Energy社をブロック | Forest Stewardship Council

https://anvietenergy.com/