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電力・ガス取引監視等委員会。関西電力と子会社の関西電力送配電会社に立ち入り検査。ライバルの新電力の顧客情報漏洩事件で。経産省の送配電会社分離政策の不備が露呈(各紙)

2023-01-25 21:43:03

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 各紙の報道によると、経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会は25日、関西電力とその子会社の関西電力送配電に対して、電気事業法に基づく立ち入り検査に入った。昨年末に、送配電子会社が持つ新電力の顧客情報を、関電の小売部門の社員が不正に閲覧していたことが発覚した問題での実態解明のためとみられる。送配電子会社はライバルの新電力の顧客情報を親会社の電力会社に漏洩していた問題は、東北電力等でも発生しており、経産省の電力政策の不公平さが露呈した形だ。

 

 (写真は、関西電力が家庭向けに新電力から関電への電力切り替えを促進するキャンペーンの一つ)

 

 電力会社の送配電会社は、の改正電気事業法で親会社から分社化された。経産省は同分離を「法的分離」と説明したが、実態は、電力会社傘下の子会社の位置にとどまっている。その一方で、送配電網を地域独占しているため、新電力各社の電力送電業務も担当する関係にある。

 

 こうした状況の中、昨年12月に、関電の内部通報によって関電送配電会社の情報が親会社の関電の営業担当者に漏洩しているという事実が発覚した。それによると、家庭向け電力を供給する新電力の契約者名や電話番号、電力使用量などがわかる状態だったという。12月中旬までの3カ月間で関電と委託先の社員計730人が1万4657件の新電力の契約情報を不正に閲覧し、一部では営業活動に悪用していたという。

 

 一方、関電ではこの間、新電力と契約している顧客向けに「電気切り替えキャンペーン」を展開しており(現在も継続中)、会社ぐるみの情報漏洩の疑いとの見方もできる。監視委は昨年12月20日に関電送配電から最初の報告を受けており、その間、今月13日に関電から内部調査の報告を受けているが、立ち入り検査までに1カ月以上を要しており、対応の遅さが際立つ形だ。

 

 その後、同様の顧客情報漏洩は東北電力、九州電力、四国電力でも発覚している。現行の子会社方式での送配電分離体制の構造的不備が露呈した形でもある。新電力との競争条件を確保するために、電力各社が抱えていた送配電設備を子会社に分離する際、当初は、公正な競争条件を確保するため、完全な法的分離が求められていた。しかし、当時の経産省は、子会社化への分社方式をもって「法的分離」と主張、国会でも十分に精査されない形で、不十分な送配電分離となっていた。

 

 報道によると、関電送配電は「顧客情報の管理システムでアクセス制限に不備があった。新電力の顧客情報を閲覧できないよう、システムを完全分離する」と説明しているという。だが、問題はシステムの分離ではなく、経営の分離である点は、より明確になった。地域独占の送配電会社が優先的地位を濫用しないよう、送配電会社の分割、新規参入も認める競争政策が必要だ。

 

 公正取引委員会は昨年12月14日に、大手電力会社と新電力の公正な競争条件になっているかを調べる実態調査に乗り出すと発表している。今回の大手電力傘下の送配電会社による情報漏洩事件は、明らかに新電力各社が競争上、不利な扱いを受ける構造になっていることを示す実例で、経産省、公取委の真価が問われる。https://rief-jp.org/ct5/130960?ctid=72

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230120_1j.pdf

https://kepco.jp/service/shinki/

https://www.meti.go.jp/press/2022/01/20230116004/20230116004.html