バイオマス発電所の火災事故原因のベトナム産バイオマス燃料の輸出元は「サプライチェーン方式」で集荷。FIT制度にチェック機能がなく、損失は再エネ賦課金「過払い」で消費者負担(RIEF)
2024-09-11 01:19:45

(写真は、バイオマス燃料が原因で「爆発」事故を引き起こしたJERAの武豊火力発電所=youtubeから)
わが国で多発する大規模バイオマス発電所での爆発・火災事故の原因の多くが、ベトナム産の粗悪な木質ペレット等の混在によるとみられるのに、経済産業省が運営する固定価格買い取り制度(FIT)では、ほとんどフリーパス状態で輸入され、消費者が負担する再エネ賦課金が海外流出している。ベトナムの輸出業者の多くは、FITにチェック機能がないことを見透かす形で、自社産の燃料だけではなく、地方の中小製造業者らによる産地の異なる燃料も混ぜ合わせて供給する「サプライチェーン」方式をとっているという。役所の「杜撰」な体制が、消費者が支払う再エネ賦課金が海外に「吸い取られる構造」を作り出している。
関係筋によると、今年の7月にベトナムの大手バイオマス燃料供給元の「Uni Export Co Ltd」のメンバー企業である「Hoang Dai Vuong Co.Ltd(HDV)」社が、日本向けの輸出元として最大の輸出量になった。実は、同社自身の木質ペレットの生産能力は1カ月で1万㌧(10000MT)程度。同国国内から燃料をかき集めて、同月の輸出量は7倍の7万㌧になったという。同社から燃料を購入した日本の輸入元には、商社のK社、S社、H社、J社、燃料系B社、林業系S社の名が上がっている。https://rief-jp.org/ct5/148079?ctid=72
HVDが新たに日本向けの輸出事業者の大手となったのは、日本でも実績のある同国の「Uni Export」が、日本と同様にベトナムの木質ペレット燃料の輸入に依存している韓国で、同社製の燃料に粗悪品が多いとして、各発電所での「ブラックリスト」に乗せられたため、輸出元「ブランド」をHDVに切り替えたとの見方もある。
HDV社以外でも7月に日本向けの木質ペレットの輸出で、一社当たり4万~5万㌧の規模で輸出したベトナムの「大手」企業としては、Phu Tai Bio-Energy Corporation、Nguyet Oanh Joint Stock Company、Easwood Energy Joint Stock Company、Tinh Nhan Company Limitedなどの名前があがっている。
いずれの企業も、自社産のバイオマス燃料だけでは輸出需要に足りず、広くベトナム国内市場のバイオマス燃料製造工場などから、輸出用の燃料を集めるサプライチェーン方式をとっている。ただ、日本に輸出される際は、輸出元が自社ブランドで一括して日本商社等の輸入業者に手渡すという。契約に必要なFSC森林認証の手続きは、一部、サプライチェーンの国内事業者が自ら取得する例もあるようだが、輸出業者が一括して取得する場合が多いとみられている。
日本での輸入手続きでは、輸入契約書とFSC認証取得等の書類が基本的にそろっていると、サプライチェーン方式で集めた燃料が混在している場合であっても、契約事業者の納品として処理される。木質ペレットの場合は日本国内のFIT制度によって、発電電力ベースで1kWh当たり24円で買い上げられる。それより品質が劣るとされる一般廃棄物で同17円、建設廃材等の場合は同13円なので、ベトナム国内の事業所から燃料をかき集めて、日本向けに品質のいい「木質ペレット」として輸出するインセンティブが、ベトナムサイドで衰えることはないわけだ。
しかし、2022年1月には、当時、ベトナムの木質ペレット輸出大手だったAVP社が森林認証のFSCを偽造し、産業廃棄物等の不純物をペレットに混在させていた問題が発覚し、同年10月にFSCは同社に対する認証を取り消す措置をとる事態が起きている。https://rief-jp.org/ct10/129368?ctid=
FSCはAVPに対して、2022年10月から3年半の認証取り消しの処分を下した。だが、実際には2023年12月には、AVPに対して認証を再付与している。わずか1年でサプライチェーンも含む改善が出来たと判断したことになる。日本のFITで買い上げられたAVPの偽装ペレットによって、最大で年間100億~160億円前後のFIT資金(再エネ賦課金)がバイオマス電力事業者への「過払い」となったとの試算もある。https://rief-jp.org/ct5/129862?ctid=
昨年から今年にかけて、日本の各地で発生したバイオマス発電所(一部石炭混焼含む)の爆発・火災事故の原因となった発電プラントの火災事故でのベトナム側の輸出業者は次の通り。
▼今年7月発生の北海道石狩市・石狩新港の石狩バイオマス発電所はCellmark
▼今年1月に爆発事故を起こした愛知のJERA武豊火力発電所(バイオ燃料混焼)がEnviva USAのベトナム子会社(Phu Tai Bio Energy, Tin Nhan Co Ltd, Eastwood Joint Stock Company, Duong Lam Co Ltd等)
▼今年1月の千葉・袖ケ浦市での大阪ガス袖ヶ浦発電所がHDVとEnviva USAのベトナム産燃料
▼昨年5月と9月に二度にわたって火災事故を起こした鳥取・米子市の中部電力の米子発電所も同様にHDVとEnviva USA