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水の途絶にさらされる中国の電力会社 (Bloomberg) 中国の5大電力会社は最大200億ドルの改造費用に直面している

2013-04-02 15:16:39

山東省・興隆荘(シンロンヂュアン)にある火力発電所の冷却塔
山東省・興隆荘(シンロンヂュアン)にある火力発電所の冷却塔
山東省・興隆荘(シンロンヂュアン)にある火力発電所の冷却塔


201342(日本時間)、香港‐中国の「5大」電力会社は、主に石炭を燃料とする500ギガワット以上の火力発電所を有し、操業している。同国の電力発電量は世界第2の規模を誇る。5大電力会社(中国華能集団、中国大唐集団、中国華電集団、中国国電集団、中国電力投資集団)のいずれも、水がやや不足している地域から非常に不足している地域、特に北東部の乾燥した工業地域にポートフォリオが集中しており、水供給が途絶する高いリスクにさらされている。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスが発表した報告では、こうしたリスクにさらされる機会と電力部門全体の取水量を大幅に減少させるには、政策面と産業界で最大限の努力が求められるほか、何十億ドルもの費用が発生し、ギガワット規模に及ぶ水効率の悪い発電設備の撤廃が必要になるだろうと論じている。これが「本当に」現実となった場合に、中国の温室効果ガス排出量が増加するのか減少するのかは、密閉冷却型石炭火力発電、開放冷却型石炭火力発電、ガス火力発電、再生可能エネルギー発電といった代替発電能力のうち、どの技術を採用するかに依存する。

 

何十年ものあいだ中国東部および北部に工業化が集中した結果、同国では電力需要と淡水資源の分布が”逆相関”する形になった。中国北部は国内火力発電能力の60%を有するが、淡水供給は20%に過ぎない。採炭と石炭火力発電には、膨大な量の水が必要となる。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析によると、2010年には採炭と石炭火力発電の2部門で合計980億立方メートルの淡水を取水した。これは、同国の全淡水取水量の約15%にあたる。

5大電力会社がこのまま開発を続ければ、中国の電力部門による取水量は、国全体の取水量を年間7,000億立方メートルに制限するという政府の2030年目標を25%超過するだろう。一部の地域では既に帯水層が満たされる前に採水が行われているため、電力部門がより多くの取水量を確保することは、単に困難であるにとどまらず、環境上持続不可能となり得る。

 

5大電力会社には、水不足のリスクを低減する投資上の選択肢がある。しかし、いずれの選択肢も、”効率性”、”地理的位置”、”費用”といった点で大きなトレードオフを孕んでいる。

 

効率性:5大電力会社は密閉サイクルあるいは空冷式システムを使用でき、これらの技術が要する取水量は旧式のワンススルー冷却システムよりかなり少ない。その一方、こうした冷却システムは発電所の熱効率を下げるため、結果的にメガワット時電力当たりの温室効果ガス排出量は増加する。風力発電や太陽光発電をさらに展開することも水の使用量を削減することにつながるが、こうした技術による発電は断続的でより多くの発電能力を設置する必要があるため、投資コストは上がる。

 

地理:広西、福建、江西などのより豊富な水資源をもつ南部地域に火力発電所を新設すれば、乾燥した北部の発電所より稼働停止に見舞われる可能性は少なくなる。しかしこれらの省には北部ほどの工業用電力がないため、電力会社は何千マイルもの距離を送電するか、電力の増加を待つ必要がある。

 

費用:政府が既存のワンススルー冷却型発電所を改造する大規模な施策を強行した場合、100ギガワット以上の資産が影響を受け、200億ドルの費用が生じるだろう。これには効率低下によって減少する10ギガワットの発電能力に相当する費用が含まれないが、この分の補填も必要となる。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの水資源アナリストでリポートの共著者であるMaxime Serrano Bardisa氏はこう語る。
今日、中国の発電能力の85%は水が不足した地域に位置し、その内15%は大量の水を必要とするワンススルー冷却技術に未だ依存している。しかし、中国で水資源が豊富にあった時代は終わった。企業と農業、都市部のあいだで、水資源の利用に関する競争が悩みの種となりつつある。

 

共著者のAlasdair Wilson氏は、こう加えた。
火力発電所はより高効率の技術を使うべきだが、そうすれば設備投資と運転コストはともに釣り上がる。水不足によって、中国で風力発電と太陽光発電の導入が今後も推進されると予想している。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの最高責任者であるMichael Liebreich氏は、
インフラの耐性に関する問題は、近年ハリケーン・サンディなどの目立った洪水や干ばつが増加していることを受け、課題として急浮上している。このリポートは、中国の5大電力会社が水の制限というリスクにさらされている点を強調しているが、これは世界の他の多くの電力会社や企業にとっても同様の課題だ」と語った。

 

http://www.bnef.com/japan/press/