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フランス政府、新型コロナウイルスの影響で経営困難に直面するエールフランスへの救済資金の見返りに、鉄道代替できる短距離フライトの廃止条件。温室効果ガス削減につなげる(RIEF)

2020-05-10 00:05:40

Airfrance2キャプチャ

  新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各国の航空会社が経営困難に陥っている中で、フランス政府は航空大手エールフランスKLM救済で、同国が70億ユーロ(約8200億円)を融資する条件として、陸路の鉄道と競合する複数の国内航空便の廃止を求めていることを明らかにした。列車を利用できる区間の航空機使用を減らして温室効果ガス排出量削減につなげる考えで、日本でも日本航空や全日空への政府支援が必要になる場合、参考になりそうだ。

 エールフランスKLMは、2004年にフランスのエールフランスと、オランダのKLMが統合した持株会社。2社の3部門から成り立つ欧州最大の航空会社グループ。しかし、コロナウイルス感染拡大でEU域内での人の移動、交通が急減し、運航できているのは5%だけ。同社の推計では、2月~4月の間だけで、総額1億5000万~2億ユーロの損失を計上したという。

 このため、同社はフランス。オランダ両国政府に対して、救済を求めており、両国政府は、融資・同保証の形で90億ユーロ前後の支援策を固めている。フランス政府はこのうち同国が負担するエールフランス分への70億ユーロの融資等の見返りに「環境条件」を付す考えを明らかにした。

TGVは快適で速い。
TGVは快適で速い。

 経済・財政相の Bruno Le Maire氏がFrance  Inter radio のラジオ番組で述べた。同相は「エールフランスに『ブランク・チェック(白紙小切手)』を手渡すわけにはいかない。これを機に同社は、もっとも環境面で尊敬される航空会社になるべきだ」と強調し、鉄道との競合路線の見直し整理を求める考えを強調した。「コロナウイルスは、我々の経済発展モデルを、より環境に配慮したものにするために作り直す機会を与えてくれたともいえる」とも語った。

 廃止対象路線の候補については、「移動や旅行が鉄道で2時間半以内の区間ならば、その間を飛行機で行くことを正当化することはもはやできない」と述べ、鉄道の代替手段がある短距離フライトをターゲットとする考えを示した。パリからならば、ボルドー、リヨン、ナント、レンヌなどへのフライトが対象となる。ただ、同区間を乗り継ぐ国際フライトは対象外とする見込み。

 これらの区間は、航空機ならば1時間から1時間15分で到達するが、空港と街との往復の時間や空港での待機時間等を考慮すると、鉄道での2時間半の旅程と時間的には大差はないと考えられる。その一方で、乗客一人当たりのCO2排出量は大幅に削減される。

 フランス政府の計画では、エールフランスに対して30億ユーロを融資し、さらに40億ユーロを融資保証賭して供給する予定という。オランダ政府はKLMに対して20億~40億ユーロの間での資金供給を検討中と報道されている。

 EUでは域内企業に対する政府の補助供与は競争上の理由から欧州委員会の了承が必要だが、エールフランスKLMへの救済策は委員会の了承をすでに得ている。エールフランスは2005年~2030年の間に乗客一人当たりCO2排出量を50%削減と、2024年までに短距離フライトのCO2排出量を50%削減する等の削減義務を負っており、政府の提案はそうした削減計画とも整合する面がある。

https://www.railjournal.com/passenger/high-speed/air-france-ordered-to-curb-competiton-with-rail-in-france/#.XrIJGxiYaxk.twitter

https://www.bbc.com/news/world-europe-52527517