HOME12.その他 |異常増殖のサバクトビバッタ、インドで増幅し、インド大陸東岸のオリッサ州にまで到達へ。同州では警戒警報。農作物に打撃リスク高まる。国連食糧農業機関(FAO)が最新報告(RIEF) |

異常増殖のサバクトビバッタ、インドで増幅し、インド大陸東岸のオリッサ州にまで到達へ。同州では警戒警報。農作物に打撃リスク高まる。国連食糧農業機関(FAO)が最新報告(RIEF)

2020-06-06 00:39:14

   国連食糧農業機関(FAO)はアフリカから中東・インドにかけて猛威を奮っているサバクトビバッタの最新情報を更新した。バッタたちはパキスタン・インドの各地に拡大し、夏の産卵に向けての移動を続けている。インドでは10日以内に同大陸東岸のオリッサ州に到達する見通しで、同州では各地で警戒警報が発令されている。一方、今回の異常発祥の発端となった東アフリカでも依然、増殖が続いている。雨季が6月で終わるアフリカと、これから雨季に入るインド等での雨量の度合いが、バッタの増減を左右する局面にある。

  (ビデオは、サバクトビバッタの大群が接近し、農業への被害増大を懸念するオリッサ州の農業相)

砂漠を超えて、宇宙から襲来したようなバッタの姿
砂漠を超えて、宇宙から襲来したようなバッタの姿

 6月4日付のFAOのlocust watchによると、イランからとアフリカからの2ルートでパキスタン、インド地域に侵入したバッタたちは、インドとの国境に近いパキスタンのラジャスタン州で春に産まれたバッタ等と合流する形となっており、モンスーン前の5月には、インドの北部州にまで進出した。インド北部にサバクトビバッタが襲来するのは1962年以来、58年ぶりのことという。http://rief-jp.org/ct12/103073

インド大陸を横断し続けるバッタたち
インド大陸を横断し、インド大陸東側のベンガル湾に迫るバッタたち

 インド、パキスタン地域に展開するバッタたちは、サイクロン・アンパンがもたらした雨と風の影響で勢力を増し、飛来距離を広げており、断続的に東インドに向けて進撃している。6月に入って南イランで繁殖した群れの来襲が想定されるほか、7月に入ると、乾季になる東アフリカからも来襲するとみられる。このため、各国当局は、地上からと、飛行機からの両面の駆除活動を展開しているが、バッタの進軍を止めるまでに至っていない。

 5月にパキスタンに侵入したバッタたちは、内陸に広がった群れは、バローチスターン州のパンジグルと州都クエッタの間の広大な地域に展開している。さらに、沿岸沿いに展開した群れは、同州の港湾都市であるパスニ一帯に広がっている。同地付近は乾燥が続いているので、バッタたちは食糧を求めてさらに東に移動中という。同国のチョリスタン砂漠からシンド州のターパーカーにかけてのインドとの国境地帯で、夏の産卵期を過ごすためとみられる。このためこれらの地域での駆除作戦を実施中。

 今後の見通しは、バローチスターン州で成虫化したバッタが増殖し、これにイランと東アフリカからのバッタが合流、チョリスタン砂漠等で新たに産卵から孵った若いバッタも加わって増大化し、7月にかけてインドをさらに東進するとみられている。

空一面を覆うバッタの大群
空一面を覆うバッタの大群

 そのインドでは5月4日にラージャスターン州のジャイサルメール(ゴールデンシティ)とジョードプル(ブルーシティ)の間でバッタが発見されて以来、各地を大群が動いている。同州のアジュメールには月半ば、マディヤ・プラデーシュ州には5月21日にそれぞれ確認された。さらにサイクロン・アンパンの襲来で、バッタたちは暴風雨に乗せられて、ラジャスタン州の州都ジャイプルに25日に、北部のウッタル・プラデーシュ州のナゴドにまで飛来した。

 すでにモンスーン前にインド入りした複数の群れは、マディヤ・プラデーシュ州のほか、ムンバイのあるマハラシュトラ州、ウッタル・プラデーシュ州、チャッティースガル州、さらにビハール州、ベンガル湾東岸に面したオリッサ州にまでたどり着く可能性がある。すでにオリッサ州では、10日以内に大群が襲来するとの予報が出ており、州の農業相等が対応に終われている。

東アフリカより、インド・パキスタンでの集中度が高まっている
東アフリカより、インド・パキスタンでの集中度が高まっている

 サバクトビバッタの大群が、インド大陸を横断する形になるわけだ。この間一帯の広大な穀倉地帯に大きな影響が出ることが懸念される。インド大陸の東岸にまで達した後、バッタたちがどう動くかは不明だが、産卵地を求めて西に戻るか、あるいは北インドに向かうか。さらに東の東南アジアにまで進路を取るか。

 ただ、バッタたちのインド大陸横断のピッチを早めたのは、サイクロン・アンパンによる強風の影響が大きかったとみられることから、今後、モンスーンの襲来が重なると、さらにバッタの進軍が広がる可能性もある。そもそも、東アフリカでバッタが大量発生したのも昨年後半の気候変動の影響を受けた長期間の豪雨の影響だった。気候変動の激化の影響で、サイクロン、モンスーンの巨大化も進んでおり、今後の展開については、目を離せない状況が続きそうだ。

 東アフリカのケニア、ソマリア、エチオピアでは、第二世代の大群が「バッタの帯」を形成している。これらの大群は、6月の第二週から少なくとも7月半ばにかけて、幼虫のバッタを伴って拡大し続けるとみられている。http://rief-jp.org/ct12/100455

FAOの今後の予想、西アフリアに広がる可能性。飢餓拡大のリスクも
FAOの今後の予想、西アフリアに広がる可能性も。飢餓拡大のリスク懸念

 現地当局による駆除作戦は継続して展開されているが、多くのバッタはケニアの北部からエチオピアに移動し、さらに南スーダンからスーダンへと横断している。これらのうちソマリアの北東部に展開した群れが、インド洋の北部を超えてインド・パキスタン地域に飛来しているという。

  中間点に当たるアラビア半島南端のイエメン北部に展開するバッタは、沿岸部と内陸部の両方に広がっており、紅海、アデン湾を経て、ソマリアやエチオピアとの間を行き来して移動しているという。彼らには国境はないのと、新型コロナウイルス感染の影響もないので、食糧と繁殖地を求めて、自由自在に移動しているわけだ。

http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html