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「太平洋ゴミベルト地帯」の廃プラ回収事業に取り組むオランダの非営利団体、この1年で合計100㌧の廃プラ回収。同じ作業を1000回繰り返せば、「ゴミベルト」は解消と強調(RIEF)

2022-08-07 23:58:56

OCT006キャプチャ

 

 オランダの海洋プラスチックゴミ回収の非営利機関「Ocean Cleanup」は昨年8月から実施してきた太平洋のプラスチックゴミ回収事業で、合計100㌧以上の廃プラを回収したと発表した。同団体が開発した新たな回収方法「System002」による成果だ。同団体は「太平洋ゴミベルト地帯」として知られる北太平洋の廃プラ滞留区域(GPGP)での廃プラ量を7万9000~10万㌧と推計しており、今回の回収作業を今後、1000回繰り返せば、北太平洋から廃プラを撤去できる、と強調している。

 

 Ocean Cleanupは2013年に当時19歳だったオランダのデルフト工科大学の学生ボヤン・スラット(Boyan Slat)さんが、太平洋に浮かぶ廃プラスチックを、自ら開発した器具を使って回収するアイデアを提唱して始まった非営利の国際活動だ。https://rief-jp.org/ct12/45222

 

Ocean Cleaupの創設者でありCEOのスラット氏
Ocean Cleaupの創設者でありCEOのスラット氏

 

 世界の海洋に放棄された廃プラスチックの大部分は、5大環流の中で渦を巻くように滞留している。これらは、漁業や観光業に毎年、数千億円もの損害を与えているほか、海洋生物の生命を奪い、食物連鎖に入り込み、イルカや鯨、さらには人間の体内にも取り込まれている。https://rief-jp.org/ct12/77989

 

 スラットさんの廃プラ回収計画は、海流の流れを利用して回収するもので、現在、技術改良したSystem 002 (愛称、Jenny)に発展している。同システムを使って、 2021年8月以来、北太平洋のカリフォルニア州沖からハワイにかけての「Great Pacific Garbage Patch : GPGP)」海域での回収作業を展開してきた。

 

 その結果、3000㎢以上の海域で45回以上の作業を実施、合計10万1353㌧の廃プラを回収した。同団体は第一段階のプロトタイプ版の回収機器で7173㌧を回収していることから、全体で10万8526㌧を回収したことになる。https://rief-jp.org/ct12/94608

 

 回収した廃プラ量は、ボーイング737-800sの2機半分の重さに相当する。同団体では、GPGP海域での回収可能な滞留廃プラの推計量は7万9000~10万㌧と見込んでいる。したがって、この1年に実施した回収作業を1000回繰り返せば、同地域の廃プラを全部回収できる計算だ。毎年1チームによる作業にとどめず、10チームが同時に作業を続ければ、100年で、100チームが取り組めば、10年で完了することになる。

 

Oceancleanup003キャプチャ

 

 さらに同団体は、現在回収システムのレベルアップ版として「System 03」をほぼ開発している。「03」はサイズで「002」の約3倍あり、効率性も高めている。稼働時間も長くとれるなどの改良の結果、「002」より10倍の回収効率が見込まれるとしている。また、回収時に課題となっていたウミガメや魚類等の海洋生物を巻き込むリスク対応も盛り込んでいる。

 

 同団体は、「03」をGPGPだけでなく、他の4大還流地域にも展開すれば、2040年までにグローバルな海洋に漂う廃プラの90%以上を取り除くことは可能と試算している。同団体は、こうした回収活動に必要な資金を、企業とのタイアップで導入している。今年4月には韓国の起亜グループが同団体とグローバルパートナーシップを結び7年間の協力協定を始めたほか、コカ・コーラも同パートナーとなっている。

 

海洋から回収した廃プラのヤマ
海洋から回収した廃プラのヤマ

 

 Ocean Cleaupの創設者のスラットさんは、学生時代にギリシャでスキューバダイビングをした際、「海の中には、魚よりプラスチックの方がたくさんあった」ことにショックを受け、海流の力を利用して廃プラを回収する画期的方法を思いついた。

 

 発足以来、世界中から集まったボランティアの作業グループと、クラウドファンディングの資金によって、事業は確実に拡大している。海洋や河川に漂う廃プラを眉をひそめて、首を振るだけでなく、一つひとつを拾い集める方法を根気よく実践する。「ゴミがあれば、回収すればいい」。スラットさん技術の改良を加えて、太平洋ゴミベルト地帯の解消に挑戦している。太平洋に面する太平洋国家の一つでもある日本の企業等も、何らかの協力を申し出てもいいのではないか。

 

https://theoceancleanup.com/updates/first-100000-kg-removed-from-the-great-pacific-garbage-patch/