気候変動の激化による「国際的な気候移住」に公正に対応することを求める「グローバル気候移動原則(GCMP)」で合意。80カ国が賛同。第一原則は「留まる権利」を担保(RIEF)
2026-06-21 00:24:58
都市から地方への「移住」の動きがある一方で、地球レベルでは気候変動の進展で太平洋等の島嶼部諸国やアフリカの少雨地帯等では、海面上昇や暴風雨の激化、干害の拡大等により、他の地域・国への「移住」を余儀なくされる可能性が高まっている。こうした国際的な「気候移住」に、公正な形で対応し、かつ新たな雇用の確保、社会的統合へのアクセス等を秩序立って進めるための国際原則「グローバル気候移動原則( Global Climate Mobility Principles : GCMP)」が、国連主導で提唱された。気候移住は、気候変動によって「強いられる移住」となることから、同原則の第一原則には「留まる権利」を掲げ、その権利を実現するため各国が気候政策で協調することの重要性をうたっている。
6月15日から18日にかけて、ドイツ・ベルリンで、国連機関の「Global Centre for Climate Mobility(GCCM)」が同国のロバート・ボッシュ財団と共催の形で、「ベルリン気候移動フォーラム」を開催した。出席した80カ国以上の代表団等が「GCMP」の支持を表明した。80カ国には、14人の国家元首、60人以上の閣僚および世界各国の指導者が一堂に会した。
GCCMは2021年以降、すでに太平洋の島嶼部諸国や、干害に苦しむアフリカ諸国、ハリケーン被害が増大する中米カリブ海諸国など、地域ごとに気候適応策を推進するパートナーシップの枠組みを推進している。

今回、合意したGCMPは、気候変動の影響を最も受けやすい地域ですでに広がっている気候変動に起因する移住や避難の問題に対処するため、主導国グループが推進し、国連、世界銀行、および各地域の公的機関等の支援によってグローバルなパートナーシップを推進するための基本原則となるものだ。
GCCMの取り組み自体は、各国の慈善団体、市民社会組織、NGO、学術機関など、民間主導の多様なステークホルダーによって構成される地域ごとのパートナーシップとして推進されている。今回合意した原則は、そうした気候災害によって不利益を被る人々を支援する上で共通する「公正な取り組み」をまとめたものだ。
この枠組みは、移住を「最後の手段」と位置づけ、その第一原則として、現状の国々・地域等に「留まる権利」を明記している。そのために重要な点は、先進国を筆頭として気候変動の原因を創り出した温室効果ガス(GHG)排出国・同企業の責任を明確にする「気候正義」の考えを強調するところにある。会合に出席したマーシャル諸島の大統領、ヒルダ・C・ハイネ(Hilda C. Heine)氏は、気候正義の核心として「排出を止めなければならない」と、先進国、同企業の責任を強調した。
同枠組みは、国際気候資金の1%を、気候リスクにさらされているコミュニティに直接配分するよう求めている。今回の会合で、GCMPの枠組みが合意されたことについて、GCCMのマネージング・ディレクター、カマル・アマクラーネ(Kamal Amakrane)氏は「ベルリンでの会合は、多国間主義が依然として成果を上げられることを証明した」と手ごたえを語っている。
世界初の「グローバル気候移動原則(GCMP)は、移住のための「安全で、合法的かつ尊厳ある道筋」を求めている。そのうえで、可能であれば、気候危機が発生する前に人々の移住を行うべきであり、「技能訓練、公正な雇用機会、社会的統合へのアクセス」が確保されるべきであると指摘している。
同フォーラムにはトランプ政権の米国は参加していない。同政権は、パリ協定のほか、数十の国際機関や環境条約から脱退し、気候変動対策への資金提供も大幅に削減している。また、同枠組みは任意参加かつ法的拘束力はない。だが、米国でなくても、多くの国々が、人類起源の気候変動によって自国の土地から移住を強いられる人々に手を差し伸べる動きが広がり、そうした動きをGCMPとして広げる取り組みを支持していることを認めている。
その具体的な事例が、オーストラリアと太平洋の島国ツバルとが、2023年に署名した「ファレピリ連合条約(Falepili Union)」だ。同条約に基づき、希望するツバル国民には、オーストラリア政府から気候ビザが発給される。同ビザを取得すれば、豪政府から移住後に現地での生活と就労の権利が与えられるほか、教育や医療の支援を受けられる。
同移住ビザは、気候変動を正式な移住理由として認めた世界初の制度だ。「逃避」ではなく「尊厳のある移住制度」として、国際的にも注目を集めている。ビザの取得は年間280人までで、抽選により発給される。2025年6月下旬に第一弾となる申請の受付を開始。ツバルの住民のおよそ3分の1以上にあたる4,000人以上が応募したとされる。
GCMPの原則に署名した国々は、オーストラリアとツバルが結んだ条約のような、地域的な協定の締結を後押ししたいとしている。今回の原則の合意は、近代的な観測史上最も暑い3年間(2023~25年)が過ぎた後に結ばれた。EUのコペルニクス気候変動サービス(E3S)によると、2023年以降の3年間の世界の平均気温上昇は初めて産業革命前以来、1.5℃を超えた。
GCCMによると、世界の気温上昇が「1.5℃」を上回り続けると、世界中の氷河の融解が加速し、10億人以上が暮らす低地沿岸地域で海面上昇がさらに速まる。また2050年までに、アフリカ、カリブ海、太平洋地域で最大1億2500万人が避難を余儀なくされる可能性があるとしている。
(藤井良広)

































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