HOME8.温暖化・気候変動 |欧州のエアバスが、航空機エンジンメーカーのMTUエアロ・エンジンズと、民間航空機向けの水素燃料電池推進システム開発で合弁設立。現在のSAF方式の課題克服目指す(RIEF) |

欧州のエアバスが、航空機エンジンメーカーのMTUエアロ・エンジンズと、民間航空機向けの水素燃料電池推進システム開発で合弁設立。現在のSAF方式の課題克服目指す(RIEF)

2026-07-14 00:55:31

写真は、エアバスのサイトから引用)

 

   欧州の航空宇宙大手のエアバスと、航空機エンジンメーカーのMTUエアロ・エンジンズは、民間航空機として初めてとなる水素燃料電池推進システムの開発と商用化のための合弁会社を設立すると発表した。航空機からの温室効果ガス(GHG)の排出量は世界全体の2~3%を占めており、その削減策として持続可能な航空燃料(SAF)の使用や、蓄電池利用などの取り組みが行われている。水素燃料電池はそうした航空機の脱炭素化技術の一つ。同電池は、炭素を排出しない方法で生産できる可能性や、ジェット燃料に比べて単位重量当たりのエネルギー量が大幅に多い特性から、業界の一部ではより有望な長期的な解決策との見方もある。

 

 水素燃料電池技術は、水素と酸素の電気化学反応を通じて電気を発生させる。副産物としては水蒸気のみを排出する。これにより、飛行中の二酸化炭素(CO2)および窒素酸化物(NOx)の排出が排除され、航空業界の気候への影響低減に寄与すると期待されている。

 

 現在、SAFの混焼や電動化推進等の脱炭素化の取り組みが進められている。だが、SAFはジェット燃料への一定割合の混焼はできても、専焼化するには、原料の確保が容易ではないうえに、コスト面の課題を抱えている。そうした中で、エアバスはこれまでに、商業的に実現可能な水素航空機の開発を公約している。2020年には「ZEROe」プログラムを立ち上げ、水素燃焼および水素燃料電池のいずれかを基盤とした水素推進技術の実現可能性を模索している。

 

 同社は昨年(2025年)、水素エコシステムおよび技術の開発が予想より遅れていることを理由に、いったん、2035年までの水素動力航空機開発計画を延期したと発表した。しかし、その後、水素動力航空機を開発するコミットメントを再確認し、検討された一連の方法の中から、新型航空機の推進方式として燃料電池技術の採用を打ち出した。

 

実際に飛ぶのは、こんな感じのようだ=エアバスサイトから
実際に飛ぶのは、こんな感じのようだ=エアバスサイトから

 

 今回のMTUとの合弁会社設立は、その同社の「翻意」を受けて、航空向け水素燃料電池推進システムの開発、試験、認証、および商用化を加速することに焦点を当てる専門組織を設立するものだ。新会社において、エアバスは、商用航空機プログラムに関する知見と、燃料電池推進システムおよび液体水素に関する専門知識を提供し、MTUは、長年にわたる燃料電池技術の開発実績に加え、エンジンの設計、統合、検証、認証、ならびにメンテナンスに関する専門知識を提供する、としている。

 

 エアバスの未来プログラム責任者であるブルーノ・フィシェフ(Bruno Fichefeux)氏は「両社のそれぞれの技術と専門知識を専用の組織に結集させることで、われわれは先端研究を産業化し、認証可能な電気推進システムへと転換できる欧州の拠点を確立する。新会社は、次世代の航空技術における戦略的主権を確保すると同時に、長期的な『ZEROe』目標を達成する能力を強化する一助となるだろう」と意気込みを語っている。

 

 MTUエアロ・エンジンズのエンジニアリング・テクノロジー担当上級副社長、シュテファン・ウェーバー(Stefan Weber)氏も「今回のプロジェクトは、初の水素動力エンジン実現に向けた道のりにおける極めて重要なマイルストーンだ。これこそが真の欧州の技術的リーダーシップでもある。そのために、われわれは、開発や試験から認証、そして商用化に至るまで、燃料電池パワートレインのライフサイクル全体をカバーする会社を設立したいと考えている」「われわれの野心的な目標は、気候中立な航空に貢献する、新しく開発された安全で信頼性が高く、経済的な推進システムの道を開くことだ」と強調している。

 

 MTUは、ここ数カ月で、重要な節目となる技術開発を達成したとしている。同社の「フライング・フューエル・セル(Flying Fuel Cell)」の設計が確定したほか、実証機用のスタック製造を開始、eMoSys電気モーターの初試験の成功、またミュンヘンで最初の試験セルが稼働を開始したとしている。

                          (RIEF)

 

https://www.airbus.com/en/newsroom/press-releases/2026-07-airbus-and-mtu-aero-engines-to-create-a-joint-venture-to-develop-a-fully-electric-hydrogen-fuel-cell