欧州で広がる森林火災や熱波等の気候災害の損害額、すでに30億ユーロ超(約5460億円)に達する。東京都の総面積の2.3倍を焼き尽くす(各紙)
2026-08-05 14:15:10
(上図は、最近の欧州での森林火災での損害額。過去最高は2021年だったが、すでに同規模の損害額が発生している=FT記事より)
各紙の報道によると、記録的な熱波等に襲われている欧州では、熱波や森林火災等による気候災害の被害額が、すでに30億ユーロ(約5460億円)に達したという。フィナンシャル・タイムズ(FT)の分析によるもので、フランスやスペイン、欧州のその他の地域を襲っている熱波や森林火災の影響の合計で、特に気候変動が原因となって引き起こされる火災による被害の拡大が軸になっているという。 森林火災シーズンの最初の2カ月間で約50万ヘクタールが焼失した。欧州委員会はEU全体での年間平均影響額を25億ユーロと推定しているが、すでにその推定を大幅に上回っている。
FTの集計によると、ポルトガル、ギリシャ、ルーマニアなどの被害が最も甚大だったユーロ圏5カ国だけで、これまでにすでに31億ユーロの経済的損失が生じている。FTは、欧州委の推計値の根拠となっている方法論と、フランス政府が算定している同様の方法論に基づいている。森林火災の損害については、焼失面積ではなく、焼失した地域を以前の状態に戻すための「復旧」コストで評価している。
消失した森林の再植林や維持管理にかかる1ヘクタール当たりの平均コストは、土地被覆の植生の種類や、森林を構成する樹木の樹齢等を反映するため、同じ欧州でも国によって異なる。このため、FTは、全体的な影響額は、今回の推計額よりも最終的にはるかに高くなるとしている。
日本の熊本で発生した地震による保険業界の損害額は気候災害等の大災害保険を扱うスイスの専門投資運用会社によると、30億~45億米㌦(約4800億~7200億円)の範囲になると推定している。同推計は損害保険に加入している個人・企業の保険金支払い額の推計額。2016年の熊本地震の保険金支払額は39億~55億米㌦と推定されており、一回り少ない理由は、2016年以降に地震対策で耐震補強や再建措置を実施したところが多く深刻な構造的破損は抑制される可能性があるためとしている。保険付与以外の損害額はもっと多くなる。https://rief-jp.org/ct6/167671?ctid=68

地震対策とは異なり、気候災害による熱中症対策や森林火災対応は、対象となる個人・地域社会の広さなどに加え、気候変動という地球レベルの影響の重さなどから、顕在化する前に、効果的な予防策(適応策)をとるのは容易ではないとされる。こうした欧州の気候災害被害については、保険会社、一般家庭、企業は、夏の最盛期に発生した財産や農作物の被害、および観光業への打撃による損失の算定を現在、算定中だ。FTでは、保険料の引き上げや保険適用外の財産の発生、観光客数の減少、消火設備への多額の支出等の、その他のコストは、今後徐々に顕在化していくとみている。
FTの今回の試算には、ギリシャで最近発生した山火事の影響が十分に反映されていないという。同国の首相は、財産を失った人々への国家支援を提供するため、被害状況の記録に専門チームが迅速に乗り出すと述べた。これとは別に、ライン川やドナウ川の水位低下により、冷却水不足に陥っているハンガリーやルーマニアの原発への影響による電力供給力の低下などの影響も反映していない。
スイス・チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)の気候経済学専門家サラ・マイヤー氏は、今年の森林火災による真の経済的損失は、2011年から2018年にかけてポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャの地域経済に森林火災が与えたGDP損失の年間平均(最大21億ユーロ)の3倍以上になる可能性があると述べた。さらに、「もし森林火災が都市にまで達することになれば、その額はそれをはるかに上回るだろう」と語った。
熱波と森林火災の両方の気候災害が広がるランスのジロンド県では、森林火災の広がりにより、同県に多い防衛・航空宇宙産業のジェットエンジンメーカーのサフラン、戦闘機メーカーのダッソー・アビエーション、ロケットメーカーのアリアン・グループなどの企業が生産を停止し、従業員を避難させざるを得なくなった。
同地域はワイン生産でも有名。ボルドーの有名なブドウ畑は今のところ大きな被害を免れているが、火災で広がる煙による汚染が収穫を台無しにするかどうかが懸念されている。アルカション湾でのカキ養殖も打撃を受けており、同県のGDPの7%を占める観光業も、引き続き混乱に直面している。同国ののポンテヴェ地区では、森林火災により4,800ヘクタールが焼失した。
同県商工会議所によると、県内の企業のうち、少なくとも4万社が森林火災による直接的な影響を受けており、7月30日時点で1万9,500社が完全に操業を停止している。また、7月27日時点で12万~15万人の従業員が、国が補助する短時間勤務制度の対象となっている。
スペインの森林火災も猛威をふるっている。火の手は、首都マドリードからわずか50kmの地点まで迫り、地方の町で住宅、事業所、車両を焼き尽くした。小規模農家を代表する「小規模農家・牧畜業者連合(Unión de Pequeños Agricultores y Ganaderos)」の試算によると、「利用可能」な土地(主に牧草地)の損失は1万8,500ヘクタールに上る。首都近郊の小規模農家は、猛烈な森林火災によって甚大な被害を受けている。
ドイツのBASF、コベストロ、エボニックといった大手化学企業は、ライン川沿いに工場を集中させている。同川もドナウ川と同様に、水位が過去最低の水準にまで低下しており、原料の搬送、製品の搬出に支障が生じている。
ただ、こうした気候災害の状況にもかかわらず、この被害が主要国のGDPに大きな打撃を与える可能性は低いとされる。英インペリアル・カレッジのイオアニス・クントゥリス准教授は、森林火災による最も重要なコストの一部――例えば、大気汚染に苦しむ人々の追加入院費用など――は金銭的に評価されておらず、現状の損害額にはほとんど計上されていないと指摘している。
コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスの欧州チーフエコノミスト、アンドルー・ケニンガム氏は、森林火災の被害が大きいフランスのジロンド県の場合、同県の生産高がフランス全体の生産高に占める割合はわずか2.5%でしかないことを踏まえ、政府の支援や保険金の支払いが復興への支出を押し上げることで、当初の打撃を相殺する可能性があると述べている。
(RIEF)

































Research Institute for Environmental Finance