トランプ政権主導の米領サモア沖海底のレアメタル団塊採掘事業が11月に始動。環境保護団体が同計画の差し止め求め提訴。日本も南鳥島沖深海でレアアースの採掘を進める構え(RIEF)
2026-08-27 21:52:18
(写真は、米領サモアの海底には、レアメタルなどを含んだ鉱物塊が幅広く点在している=米国海洋大気局(NOAA)のサイトから引用)
トランプ米政権の米国海洋鉱物管理局(Marine Minerals Administration:MMA)が、南太平洋ポリネシアにある米領サモア(American Samoa)沖の海底でレアメタル等の鉱物資源を開発するため、11月に開発会社向けに鉱区のリース入札を実施する計画を明らかにしたことに対し、サモアの文化と天然資源の保護を提唱する市民団体らが18日、同計画の差し止めを求める訴訟を、ハワイ地区連邦地方裁判所に起こした。市民団体らは同開発計画によって生態系に悪影響が及ぶことを懸念しており、環境アセスメントの評価項目に、シロナガスクジラやウミガメなどの絶滅危惧種に及ぼし得る影響の分析が一切含まれておらず違法と主張している。
MMAは米領サモアから東方のマヌア諸島方面に広がる3100万エーカー(1250万ヘクタール)の広さの水域に設定した鉱区について、11月にリース入札を実施し、落札した企業に貸し出す計画。落札企業は、鉱区内を探査する権利と、海底の鉱物を採掘する権利を得られる。事前調査によると、水域には、ニッケル、コバルト、マンガンなどのレアメタルや銅が交じり合った拳(こぶし)大の塊が、海底を覆うように転がっているとみられるという。
トランプ大統領は今年4月、「米国が国家管轄区域内およびその外における海底鉱物探査・開発のグローバルリーダーとなることを求める大統領令」に署名した。大統領は、自ら発した大統領令を踏まえて、採掘許可を監督する米国海洋大気庁(NOAA)に対し、それまでの方針を覆し、採掘企業への承認手続きを迅速化するよう指示した。

続いて、7月10日には、内務省が、海洋エネルギー管理局と安全・環境執行局を統合し、開発の旗振り役となる海洋鉱物管理局を設立。同局は早速7月16日に、米領サモア沖の国家管轄区域内での海底鉱物開発計画を発表した。米国がサモアにおいて開発計画を実施するのは、史上初となる。
さらにMMAは第2弾として、グアム島北方のミクロネシアある米国の自治連邦区である北マリアナ諸島連邦(Commonwealth of the Northern Mariana Islands)沖の同様の海底資源開発計画についても、8月17日に発表している。さらに、アラスカ州沖やバージニア州沖の水域での海底資源開発のための計画を進めることも明らかにしている。
海底の鉱物資源の採掘を巡っては、国連海洋法条約に基づいて設立された国際海底機構(ISA)が、「The Area」と呼ぶ “どこの国の管轄権も及ばない国際公海域の海底” における鉱物資源の採掘ルールを策定しようと議論を続けている。日本は海底鉱物資源の開発にかねてより積極的で、同じく積極的な中国、ロシア、韓国、インド、ノルウェー、ナウル、クック諸島、トンガと歩調を合わせて、早期のルール作りを求めている。
一方、フランスは逆に、生態系保護を掲げて「完全な禁止(Ban)」を要求している。これに対して、ニュージーランド、カナダ、イギリス、スイス、メキシコ、パラオ、フィジー、サモア独立国(Independent State of Samoa)、ミクロネシア連邦などは「議論の一時停止(Moratorium)」を主張している。また、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、オーストリア、ポルトガル、ブラジル、チリ、コスタリカ、エクアドル、バヌアツ、ツバルなどは、環境への影響が科学的に解明されるまで採掘手続きを休止すべきだとする「予防的休止(Precautionary Pause)」を求めている。こうした意見の対立状況から、ルール作りの作業は事実上、止まっている。
国際ルール作りは、あくまでも「どこの国の管轄権も及ばない国際公海域の海底」を対象としたもので、自国の領海内や排他的経済水域(EEZ)内の採掘を縛るものではない。だが、深海の生き物の生態はそもそも不明な点が多く、海底鉱物の採掘が生態系にどのような影響を及ぼすかも判明していない。そのため各国はこれまで、自国の領海内やEEZ内であっても海底資源の開発については、慎重に対応し、大々的な開発は控えてきた。
しかしここに来て、そもそも国連海洋法条約を批准していない米国が、国内法の外縁大陸棚土地法(OCSLA : Outer Continental Shelf Lands Act)」や環境アセスメントの手続きに則り、自国の排他的経済水域(EEZ)内での探査・採掘に着手すると主張して、積極的な開発に乗り出した。

海底鉱物の採掘を巡っては、日本も南鳥島の沖合の6000mの海底でレアアースの採掘に向け準備を進めている。日本の計画は、EEZ内の中であるため、国際法上、ISAが国際公海域の海底における鉱物資源の採掘ルールを作るのを待つ必要はない。
今年2月1日に、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が地球深部探査船「ちきゅう」を使い、6000mの海底からレアアースを含む泥を引き揚げって成分を分析したところ、54%がイットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの「中・重レアアース」と呼ばれる有用性の高いレアアースであることが判明した。この調査結果を受けて、日本政府は2027年2月から本格採鉱試験に入ることを決めている。同試験では、採鉱、船へ引き揚げ、南鳥島に運搬、脱水、本土へ輸送、分離精製、精錬と産業化につながる一連の流れすべてを実証するとしている。
米国や日本は、軍事・防衛や経済安全保障の上で重要なレアメタルやレアアースが豊富に含まれている海底鉱物を確保することで、レアメタルやレアアースの採掘と製錬・精製技術で世界をリードし、その輸出管理を「外交上の切り札」として使ってくる中国に対抗する狙いだ。
だが、環境保護の研究家や保護団体は、こうした各国による海底鉱物の採掘競争を厳しい目で見ている。米領サモアの東隣は、ISAで早期のルール作りを求めるクック諸島で、西側は議論の一時停止を求めるサモア独立国が隣接している。いずれの国の領海も繋がっている。海底での鉱物開発が大規模・広範囲行われるようになると、環境や生物多様性を巡る論議や法的紛争リスク、国家間の紛争が高まるとみられる。 (宮﨑知己)
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20260724/

































Research Institute for Environmental Finance