「国連砂漠化防止条約(UNCCD)第17回締約国会議(COP17)」閉幕。アフリカが求めた「干ばつ議定書(PDRM)」、土地劣化に関する女性の関与の強化等は合意できず。米国が反対(RIEF)
2026-08-29 16:52:34
(写真は、UNCCDのサイトから引用)
モンゴルの首都ウランバートルで開催されていた「国連砂漠化防止条約(UNCCD)第17回締約国会議(COP17)」が28日閉幕した。恒常的に干ばつ被害を受けるアフリカ諸国等が、気候変動の進展等で干ばつ問題が拡大、深刻化する現状に対応するため、干ばつ対策に法的拘束力のある「干ばつリスク管理に関する議定書(PDRM)」の策定を求めたが、合意に至らず、次回のCOPに持ち越した。アフリカ諸国は、干ばつを単なる国家レベルの問題ではなく、地域的・世界的な対応を必要とする課題として位置づけるべきだとして、国連の議定書の策定を目指してきたが、米国等の先進国の反対で合意に至らなかった。
アフリカ諸国等の途上国側が求める「干ばつ議定書(PDRM : UN protocol on drought risk management)」は、 干ばつ問題を国連の議定書として位置づけることで、干ばつが発生してから国ごとに対応する現行の態勢から、干ばつや、それに伴う住民の移住といった問題に、対象地域を包括的にカバーして、事前に対処する予防的な支援メカニズムを構築できるようになると期待を込めてきた。https://rief-jp.org/ct12/168147
現状では、アフリカ諸国などでは、土地が定期的に乾燥し、作物の栽培や家畜の放牧ができないほど不毛になると、人々は生計を立てるために住居地を捨てて、他地域へ移住することが多い。これにより、干ばつに見舞われた土地の放棄・荒廃がさらに進むほか、移住に伴う社会的問題も懸念されている。こうしたことから各国は、これまで10年以上にわたって、干ばつを単なる国家レベルの問題ではなく、地域的・世界的な対応を必要とする課題として位置づけるため、国連の議定書の策定を求めてきた。

今回のUNDDCのCOP17の最大の課題は、この「干ばつ議定書」だった。10年以上にわたり、アフリカ諸国は、干ばつを単なる国家レベルの問題ではなく、地域的・世界的な対応を必要とする課題として位置づける国連の「干ばつリスク管理に関する議定書」の策定を求めてきた。議定書の設定により、干ばつが発生した際に、水を確保するための資金援助が拡大される道が開かれる可能性があるとの期待を込めてきたためだった。一方、米国をはじめとする先進国側は、法的拘束力につながる議定書ではなく、従来と同様に、より拘束力の緩い「フレームワーク(枠組み)」の設定を提案し、意見の対立が続いた。
会議日程が最終日に近づく中で、事態の進展が得られないことから、参加国の間から、交渉の一時中断を求める意見が示されたほか、26日の朝には、アフリカ諸国の代表者らが交渉の場から一斉に席を立って「抗議」の意思表示をする一幕もあったとされる。昼食時の議長国のモンゴルの代表団との会合を経て交渉は再開されたが、各国政府が今回のCOPで最終的に合意できたのは、議定書問題では次回のCOP会合(2028年)で交渉を再開するということだけだった。
「Climate Home News」の報道によると、アフリカ諸国グループを代表して発言したチュニジアの交渉担当者は、「正式な議定書があれば、各国は干ばつが発生してから対応する現状の対応から、干ばつや、移住といったその影響に対処するための予防的な支援メカニズムへと移行できるようになる」と述べている。会議にNGO枠で参加したWWFの淡水政策責任者であるクリスティン・コルビン(Christine Colvin)氏は「ホンジュラスから英国のハンプシャー州に至るまで干ばつが襲っている状況下では、プロトコルの先送りの結果として、今後2年間も問題を先送りするのではなく、プロトコルであれ枠組みであれ、具体的な対策が緊急に必要だ」と語った。気候変動の進展で、干ばつは先進国でも発生しているのだ。
議定書問題と同様に、先進国と途上国との間で対立した議題は、土地劣化をめぐるジェンダー問題への対応に議論が集中した。土地劣化が女性に及ぼす影響の測定、土地に関するCOPへの市民社会および女性の関与の強化等の議論だ。このほか、UNCCDと、先行する国連の気候変動条約や生態系条約との、より緊密かつ効果的に連携なども含まれていた。

米国は今回のCOPには代表(国務省の担当者)を送った。米国代表は会議の初日に、トランプ政権が議定書問題やジェンダー課題等について「それらの前提自体に異議を唱えており、いかなる交渉を行っても、これらの項目に関する合意に加わることはできない」と述べた。そのうえで、「したがって、これらを議題から削除することを要請する。そうすれば、われわれは議題を承認でき、貴重な交渉時間を節約できる」と強調した。米国務省の報道官はさらに、「つまり、ジェンダー関連の取り組みを含む社会的・政治的アジェンダに、限られた時間、注目、資源を割くのではなく、加盟国が(国連に)遂行させるために設立した具体的な業務を優先させることを意味する」と付け加えた。
これに対して、EUやブラジルは、米国の議題項目の限定化に反発した。ブラジルの交渉担当者は、自国がジェンダー問題等を「非常に重要視」していると述べた。EUもアイルランドの大臣、ティミー・ドゥーリー(Timmy Dooley)氏が、EUを代表して声明を読み上げ、「一部の当事者(米国を指すとみられる)が『建設的とは言い難い姿勢』を取り、『重要な問題に関する議論が開始されることさえ妨げている』」と非難した。議長国のモンゴルは、終始、会議の「成功」を最優先する姿勢をとり、各政府に対して、物議を醸した項目を除いた残りの議題を採択するよう要請した。日本政府代表の言動は報じられていない。
女性問題をめぐる議論では、EUはジェンダー問題を議題から外す米国等の動きを批判し、声明の中で、「持続可能な土地管理と強靭な農村の生計への貢献を認識し、COP17において女性遊牧民や牧畜民に注がれている注目」を歓迎すると述べた。またUNCCD事務局長を務める女性で元エジプト環境大臣のヤスミン・フアド(Yasmine Fouad)氏は28日、「(ジェンダー関連の)議題項目が阻止されたことは別として」と述べ、「自身とCOP17議長のバトムンク・バットセツェグ(Batmunkh Battsetseg)氏が女性としてCOPを主導し、ジェンダー・コーカス(交渉における女性を支援するグループの会合)に出席したことを誇りに思う」と述べた。
ファド氏は記者会見で冷静に、「女性たちがいなければ、われわれは土地を回復することも、希望を回復することも、生命を回復することも、さらには子供や孫たちさえも回復することはできないでしょう。われわれはこの議題を推進し続けていく」と宣言した。会議での議題項目からは、先住民族の活動確保の項目も削除された。これに対して、先住民族の代表者は、28日の閉会本会議で、先住民族グループとして「今回のCOPの議題から先住民族のための専用の場が削除されたことに深い失望を覚えている」と述べ、「土地を大切にする人々の声を排除して、土地を回復することはできない」と強調した。
今回のCOPでは、アジア開発銀行(ADB)や地球環境ファシリティ(GEF)等の国際公的金融機関が、土地劣化対策のための資金拠出を約束した。UNCCDの推計によると、新たな資金拠出の約束額は6億4500万㌦となった。ただ、世界的な土地回復の公約を達成するには、2030年まで年間推定3550億㌦が必要とされ、現在の投資額は約770億㌦にとどまっている。UNCCDによると、このうち、民間資金は世界全体の投資のわずか約6%を占めるに過ぎない。
UNCCDのチーフサイエンティストであるバロン・オア(Baron Orr)氏は会見で、今回のCOPで発表された取り組みの多くは官民パートナーシップであり、土地保護に取り組む企業が、そうしない企業に比べて不利な立場に置かれないよう、政府資金を用いて「公平な競争環境」を整えるもの、と述べた。同氏は、こうしたパートナーシップは「大きな機会」であると指摘し、特に「現在は公的資金が潤沢な時期ではなく、どの国でも公的資金は逼迫している」と付け加えた。
(藤井良広)
https://www.unccd.int/land-and-life/drought/drought-initiative
https://www.unccd.int/sites/default/files/2026-08/260821_GLO3_WP_Financing_Land.pdf

































Research Institute for Environmental Finance