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大西洋の中深海層に住むイワシ類の70%強の体内からマイクロプラスチック検出。マグロなどの食物連鎖につながる魚類に広がる汚染。アイルランド大学等の若手研究者らが突き止める(RIEF)

2018-07-17 08:18:55

Ireland13キャプチャ

 

   アイルランドの国立大学地球海洋科学ライアン研究機関の研究者を中心とする国際的研究グループは、世界的に海洋汚染が深刻化する廃プラスチックの微粒子マイクロプラスチックが、陸地から遠く離れた大西洋の深さ300~600mに生息する深海魚の体内に高い確率で蓄積していることを突き止めた。深海魚からの検出率は全体の70%超と高く、プラスチック汚染が想像以上に深く、幅広く、広がっていることを示した。

 

 (写真は、広範に廃プラスチック汚染にさらされているイワシ類の一種)

 

 研究に参加したのは、同大学のAlina Madita Wieczorek氏、Liam Morrison氏、Peter Croot氏らのアイルランドと英国の自然科学分野の若手研究者たち。対象とした海域はカナダのニューファンドランドの東方約1200 km地点の大西洋北西部。海の深さは300~600mで漁業資源の豊富なところとして知られている。

 

研究チームの採取地域
   研究チームの採取地域

 

 研究チームは、同海域で2015年4~5月にかけて採取した中層遊離性の魚類7種、233匹の胃を解剖して、食性を分析した。対象の魚類は、ハダカイワシ類やドラゴンフィッシュなど資源量の多い魚で、マグロやイルカなどの餌として知られる。食物連鎖の重要な役割を果たしている。

 

 採取した233の検体は3.5cmから59cmの大きさ。それぞれの胃の内部をmicro-FTIR analysis等を使って詳細に調べたところ、全体の73%からマイクロプラスチックを検出した。特に深海にすむヨコエソ科のGonostoma denudatumという魚類からは100%検出された。またノコギリウナギ(Serrivomer beanii)からは93%と、いずれも高率で検出された。

 

Ireland2キャプチャ

 

 また、体長4.5cmの小さな一匹のハダカイワシの検体からは、13個ものマイクロプラスチックが検出されたという。233の検体全体から、452個のマイクロプラスチックを検出した。魚類1匹平均1.8個飲み込んでいたことになる。

 

  検出されたマイクロプラスチックは大きいものは、海洋投棄されたプラスチックボトルやバッグ、肌関係の化粧品容器等に使われるポリエチレン等が細分化されたものとみられる。

 

 研究チームは、これらの魚類の大半からマイクロプラスチックが検出されたのは、魚類が夜間に海面近くに浮上して食餌をする際に取り込んだ可能性が高いとみている。これまで中深層域に生息する魚類のマイクロプラスチック汚染に関する研究は限られていた。これらの魚類のプラスチック汚染が一般化していることがわかったことから、これらの魚類を餌とする上位魚類でのプラスチック汚染の蓄積が懸念される。

 

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2018.00039/full