HOME12.その他 |ブラジル・アマゾン地域で、森林火災急増。年初来7万2843件。昨年比83%増。原因には、牧草地確保のための焼き畑や放火も(RIEF) |

ブラジル・アマゾン地域で、森林火災急増。年初来7万2843件。昨年比83%増。原因には、牧草地確保のための焼き畑や放火も(RIEF)

2019-08-23 18:56:26

Brazil1キャプチャ

 

  アマゾン流域での森林火災の広がりが国際的関心を呼んでいる。ブラジルの宇宙研究センターINPEの観測データによると、今年に入って火災は7万2843件に上り、前年比83%増と急増している。1月に政権についたボルソナロ大統領はアマゾン地域での農業振興を奨励、農家が牧草地確保のため、森林に違法に火を放つなどの行動が原因、と批判されている。

 

 年初来の火災発生件数は、衛星による観測データがとられるようになった2013年以降で最多。先週8月15日以来、新たに9507件の火災が発生したという。火災は主に世界最大の熱帯雨林地帯であるアマゾン川流域で発生している。

 

 アマゾン中心部のアマゾナス州は8月上旬に、非常事態宣言をした。北部に隣接するロライマ州はアマゾナス州から流れる森林火災の煙で、州全体が覆われてしまっているという。西部のペルーと国境を接するアクレ州も先週、「環境警報」を発した。

 

[ 「私はかつて(森林を伐採する)キャプテン・チェーンソーと呼ばれた。今はアマゾンに火をつける(古代ローマ皇帝)ネロと呼ばれている」とうそぶくボルサナロ大統領
[
「私はかつて(森林を伐採する)キャプテン・チェーンソーと呼ばれた。今はアマゾンに火をつける(古代ローマ皇帝)ネロと呼ばれている」とうそぶくボルサナロ大統領

 

 山林火災は中西部のマットグロッソ(MT)州や、アマゾン河口のパラー州などでも広がっている。「マットグロッソ」はポルトガル語で「深い森」を意味するが、長年の開発で現在は牧畜が中心産業となっている。アマゾン全体を同様に開発し、農業産業を拡大すべきとの主張もある。

 

 ボルソナロ大統領は、アマゾン地域での森林火災は、毎年起きるもので、今は「ケイマダ(Queimada)」と呼ばれる焼き畑の季節だと反発した。ただ、一部の農家が牧草地を確保するため違法に火を付けている動きがあることも認めている。

 

 INPEは今回の大規模な森林火災の拡大は、乾季に自然に起きる要因だけでは説明がつかないと指摘している。INPEの研究者、 Alberto Setzer氏は「アマゾン地域では気候は特に例年と大きな変化はない。降雨量も平年より少し低い程度」と指摘している。そのうえで、「乾季は火災が広がる条件にはなるが、火災の最初は人為による。故意か自然発火かの違いがあるが」と述べている。

 

 INPEの科学データと分析に基づく指摘には、大統領も「聞こえぬふり」はできない。INPEは7月に、6月中のアマゾン地域での森林減少が、前年同月比で88%増えたとのデータを公表した。これに対し大統領は、INPEのリカルド・ガルヴァン所長がうそをつき、政府に損害を与えようとしていると非難。ガルヴァン所長を解任する強権発動を振るった。

 

 しかしINPEのデータの正確性は95%に上り、ブラジル科学協会など複数の科学機関も、INPEのデータの正当性を擁護している。

 

 アマゾン火災は国際的にも関心を高めている。マクロン仏大統領はツイッターで、アマゾンの火災は「国際的な危機」として、24日にフランスで開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)で議論するよう呼び掛けた。ボルサナロ大統領はこれに対して、「ブラジルに干渉すべきでない」と強く反発している。

 

 この夏、地球上では、アラスカやシベリアなどの北極圏でも森林火災が急増している。北極の火災は温暖化の影響による気温上昇で自然火災が増えたとみられる。潜在的な原因は人為による温室効果ガスの増大だ。

 

 一方のアマゾン火災は人為による直接の森林火災。火災の結果、アマゾンのCO2吸収力は減少し、排出されたCO2やばいじん等で地球環境・生態系は確実に悪化している。「母なる地球」の悲鳴が聞こえそうだ。

https://www.climatechangenews.com/2019/08/21/record-72000-forest-fires-detected-brazil-year/