第11回サステナブルファイナンス大賞インタビュー⑳サステナブルボンド賞:第一生命保険。「愛知県が発行した日本初の水害対策と地震対策に資金使途を限る『適応債』の設計と投資」(RIEF)
2026-04-30 17:28:34
(写真は、 ㊨が第一ライフグループ債券投資ユニット社債グループの安田三四郎氏と、㊧が第一ライフグループの資産運用会社バーテックス・インベストメント・ソリューションズの牛田雅人氏)
第一生命保険は、愛知県が発行した資金使途を水害対策と地震対策に限定した債券(各25億円=計50億円)を全額引き受けたことで、同県とともに、第11回サステナブルファイナンス大賞のサステナブルボンド賞に選ばれました。気候変動の進展により、年々リスクが高まっている自然災害への「適応」に対する民間資金の活用を拡大することが期待されます。第一ライフグループ債券投資ユニット社債グループ・ラインマネジャーの安田三四郎氏と、第一ライフグループの資産運用会社、バーテックス・インベストメント・ソリューションズのクオンツ運用部・トレーダー兼クレジットアナリストの牛田雅人氏に聞きました。
――今回のような形の投資は、いつ頃から考えていたのですか。
牛田氏 : 第一生命としては従前、サステナビリティの領域において世の中に良い影響を与える新しい投資ができないかと模索してきました。具体的にはSDGsの17の目標に対して、網羅的に、こういうアプローチをすれば、こういうことができるのではないか、という具合に論点を整理して、投資機会を得ようとしていました。2020年頃には、部内で防災対策に向けた投資をするのがよいのではないかという議論になり、証券会社を介して発行体のニーズをヒアリングしたこともありました。しかしこの時は、証券各社からの回答は、『地方自治体にはあえて防災に使途を絞って資金を調達しようというニーズがない』というものでした。私たち投資家としては起債がないと投資ができないので、その時は『分かりました』という感じでいました。
――世界に目を向けると、気候変動問題は近年、CO2の削減といういわゆる「緩和」から「適応」へと関心が移っています。2020年頃にすでにこうした移り変わりを感じ取っていたのでしょうか。

牛田氏 : 時代の潮流に乗ったテーマ債があると、もちろん世の中に対して良いことですし、債券市場の拡大発展にも資するのではないかということで、社内で防災事業関連への投資について議論していました。当時において「適応」という言葉は、個人的には恥ずかしながら、あまり聞いたことがなかった、というのが正直なところです。適応は昨今耳にする機会も多く、ホットワードになっているという認識です。
――その後、実際に、愛知県が発行する水害対策事業と地震防災事業を資金使途とした債券を引き受けました。その経緯を教えてください。
牛田氏 : 2024年9月に証券会社がアレンジした愛知県のIRの場に参加する機会がありました。通常債のIRの場ではありましたが、その後、第一生命の方から防災対策に向けた資金使途での起債について提案させて頂きました。従前、われわれとして防災対策が大事だと思っていたという話をして、一緒にどうでしょうかと申し入れたら、愛知県からぜひ一緒にと前向きな回答があり、話し合いがスタートしました。発行体が起債するにあたって開くIRは、われわれ投資家にとっては基本的に、投資の妥当性を判断する場なのですが、今回は直接対話で新しい投資案件を発掘する機会とすることができました。発行体と直接対話することの大事さを、この件を通じて改めて実感しました。
――資金使途として、水害対策事業はグリーンボンドの使途に相当しますが、地震対策事業のほうはグリーンボンドには該当しません。でも両債券は、発行額各25億円で、発行条件も同じでした。投資にあたってグリーンボンドのラベルには影響しないのですか。
牛田氏 : テクニカルな話で、グリーンボンド原則の中に地震という項目がないため、地震対策はグリーンボンドの適用は受けられないということです。過去、似たようなケースとしては東京都が発行した「コロナ債(通称)」があります。コロナなど伝染病のパンデミックはSDGsのフレームワークに入らないので、いわゆるソーシャルラベルがつかない形で起債されました。われわれとしては、投資家の観点からは、グリーンボンドなどのラベルがついているから投資をするわけではなくて、テーマが良いテーマであれば、ラベルの有無に関わらず投資をするべきだと判断しています。なので、水害対策事業を資金使途とした債券と地震対策事業を資金使途とした今回の債券発行は、われわれにとっては経済合理性でみてまったく一緒の商品なのです。
――金融業界や証券業界、自治体でずいぶん評判となりました。
牛田氏 : 反応は想定以上で正直驚きました。改めて「適応」はすごく世の中で重要視されているテーマだということがわかりました。過去の案件には専門的過ぎて分かりにくいところが少なからずあったと思っていますが、今回は直近で起きている大雨被害や地震への対策であったことから、皆さんが受け止めやすいものだったと感じています。TVや新聞などのメディアにて取り上げて頂いた効果もあり、同業他社の投資家だけでなく債券の発行体となり得る一般の企業からも問い合わせがありました。想像もしなかったような事業会社の方から、防災についてこういう技術があるので、そういうのをテーマにした起債はできるかどうか、ヒアリングさせてほしいといったお問い合わせもありました。本当に反響は大きかったです。
――世の中のお金の回り方に何か新しい流れができるような感じですね。
牛田氏 : そういうことを中長期的に願って、継続的に取り組んでおりますので、そうなると、とてもうれしいです。
――次のステップはどのような方向で進めますか。

安田氏 : 基本的にはこれまでの取り組みを継続していきます。われわれとしてはサステナビリティに対する一貫した姿勢をマーケットや世の中に見せていくということが大事で、特に気候変動における適応に関するテーマは続けていきたいと考えています。しっかり地域に貢献できるものであれば、今後もやっていきたいと思っています。それに加えて、新しいテーマも考えていきたいと思います。やはり世の中で必要とされて注目されるテーマは、変わりゆくものです。
そうした考えのもと、今後大事になるテーマであったり、必要性が高まる対策であったり、より社会に貢献できるのではないかと考えられるテーマを常に探していきたいと考えています。会社としては、気候変動対応を特に注力する分野として公表していますが、それ以外のものとしてはソーシャルボンドの範疇に入るテーマ、例えばヘルスケアや人権、少子高齢化などの社会課題の解決に貢献できるような債券が発行されるニーズがあれば、その後押しや投資を検討したいと考えています。
(聞き手は、宮﨑知己 =大賞のインタビューシリーズはこれで終了です)

































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