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住友商事、新規の石炭火力発電事業で、バングラデシュ案件を除き、停止を宣言。「気候変動方針」を改定。株主総会での豪環境NGOの株主議案への投資家の賛同回避が狙いか(RIEF)

2021-05-07 18:54:13

sumitomoキャプチャ
 住友商事は7日、「気候変動問題に対する方針」に、新規の石炭火力発電事業等を行わないことを盛り込んだ改定版を公表した。一般炭鉱山開発でも「2030年に生産量ゼロを目指す」と事業縮小をうたった。石炭火力については、従来も「新規開発は行わない」としていたが、例外規定を設けていた。今回、例外はバングラデシュでの政府間事業のマタバリ3・4号機だけに絞るとした。

 同社は、豪環境NGOのマーケット・フォース(MF)から「パリ協定に沿った事業戦略」を求める株主議案の提案を受けている。今回の「気候変動方針」の改定は、株主総会を睨んで、欧米の機関投資家等に向けて気候変動対応をアピールする狙いがあるとみられる。https://rief-jp.org/ct7/112709
 改定のポイントは3点。まず、「発電ポートフォリオ」については、従来の「2035年石炭30%、ガス40%、再エネ30%」を「2035年の目標を石炭20%、ガス50%、再エネ30%」に改める。石炭を10%減らし、その分をガスに切り替える。
 「石炭火力発電事業」では、従来は例外規定として「地域社会等に不可欠で、日本国およびホスト国の政策に整合する案件は個別判断」とし、例外範囲を広くとっていた。今回の改定では、新規の発電事業に加えて建設請負工事も「取り組まない」とし、例外を両国政府間で検討が進められているバングラデシュの案件に限るとした。

 

 石炭火力事業からのCO2排出量は2035年までに60%以上削減(2019年比)し、2040年代後半には、すべての事業を終えて、石炭火力発電事業から撤退する、とした。
バングラデシュ・マタバリの石炭火力発電所建設予定地
バングラデシュ・マタバリの石炭火力発電所建設予定地
 新規石炭火力事業の「例外」としたバングラデシュの案件は、現在、建設中のマタバリ、1、2号機(合計発電量1200MW)と同規模の3、4号機を日本政府の支援で建設する計画。国際協力機構(JICA)がフィージビリティ調査支援中。発電所は超々臨界圧石炭火力(USC)。しかし、環境NGOや現地住民らは、汚染拡大につながるほか、パリ協定の長期目標と整合性がないとして反対を続けている。
 グローバルな債券調査・分析を専門とする非営利シンクタンク「Anthropocene Fixed Income Institute(AFII)」(スウェーデン)はJICAが同事業を支援していることから、JICA債を投資不適格に分類するなど、国際的にも議論の的になっている。
 「一般炭鉱山開発事業」では、従来は「現在の持ち分生産量を上限とし、新規開発に取り組まない」としていた。これを「今後は新規開発は行わず、2030年に一般炭鉱山持ち分生産量ゼロを目指す」とした。
 また同社グループの「気候変動緩和」に向けた中長期目標として、長期目標は「2050年の事業活動でのカーボンニュートラル化と、持続可能なエネルギーサイクル実現への挑戦」を明示。中期目標では、「2035年までに温室効果ガス排出量の50%以上削減(19年比)を掲げた。