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国際エネルギー機関(IEA)。新型コロナウイルス感染下でも、グローバルな新規再エネ事業は45%増の280GWと過去最大。21、21年も高水準の「再エネ・ニューノーマル」へ(RIEF)

2021-05-11 17:07:58

IEA002キャプチャ

  国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年中の世界の新規の再生可能エネルギー事業は、前年比45%増えて280GWに達した。新型コロナウイルス感染の拡大で、他のエネルギー需要が低迷する中で、1990年以来で最高の伸び率となった。IEAは今後、グローバルベースで、再エネが新規発電事業の90%を占める「ニューノーマル」が常態化するとみている。

 IEAは「グローバル産業において『ステップ・チェンジ』が生じている」と評価した。再エネがエネルギー全体を引っ張る形に変容しているという。

世界の再エネ事業の年間新規導入量の推移と予測
世界の再エネ事業の年間新規導入量の推移と予測

 

 再エネ事業のうち、新規の太陽光発電事業の導入量は前年比23%増の135GWだった。風力発電は同90%増の114GW。今後の推計では、2021年の年間導入量は再エネ全体で270GWに、22年には同280GWに達するとみている。この増加ペースは、過去最高だった2017~19年の増加率よりも、50%以上の拡大となる。

 21~22年の推計では、風力発電が20年の中国市場の急増の反動で、21年は前年比で30%減の見通し。ただ、導入規模の80GWは19年に比べると35%増。太陽光発電は投資コストの減少、各国での政策的支援等によって、21年は145GW、22年は162GWと引き続き増大する。水力発電は中国でのメガ開発で促進されるが、バイオエネルギー等は安定的で、再エネ全体の新規分の%程度にとどまる見通しだ。

再エネの種類別の新規導入量の推移
再エネの種類別の新規導入量の推移

 再エネ事業の拡大に、IEAはこれまでの先行き見通しを25%引き上げるという大幅な修正をした。とりわけ、中国、欧米市場での再エネ事業の上積みが大きい。

 中国は石炭火力によるCO2排出量で世界最大だが、再エネ導入比率もこれまで世界全体の40%台と最大比率を占めてきた。さらに2020年は初めて50%に達した。昨年12月が、政府の再エネ補助金の打ち切り期限だったことから、12月中に駆け込み需要が殺到、全体を底上げした。特に風力発電ではグローバルな新規導入量の3分の2の80GW分が中国だった。

 その反動で年が明けた今年第一四半期の中国市場での前年同期比需要は減退した。中国が今年中に新たな補助金等のインセンティブ政策を打ち出すかは不明だが、IEAは、年間を通して21年は45%増、22年は58%増とみている。22年以降は、習近平国家主席が明言した「2060年までのネットゼロ目標」に適合する新たな政策措置が導入されれば、再び増加基調になるとみている。

 米国は20年12月の製品税控除(PTC)の期限切れ前に駆け込み需要が殺到した。同制度はバイデン政権になって延長された。政府の支援制度の影響としては、ベトナムでも太陽光発電向けのFIT制度の打ち切りの影響で、駆け込み需要が起きた。

 日本については、太陽光発電で21GWのFIT承認案件を抱えるものの、これらは20年9月時点で操業状態に達していない。IEAはこれらの部分が21、22年に稼働することを期待する、と指摘している。

 IEA事務局長のFatih Birol氏は「各国政府は、クリーンエネルギーへの期待が高まっているこの機会をとらえて、太陽光や風力発電や送電網等のインフラ整備への投資を奨励するとともに、水力発電やバイオエネルギー、地熱発電等の他の再エネ技術の開発にも力をいれるべきだ。クリーンエネルギーの増大は、世界が『ネットゼロ』を達成するうえで主要な要素だ」と指摘している。

https://iea.blob.core.windows.net/assets/18a6041d-bf13-4667-a4c2-8fc008974008/RenewableEnergyMarketUpdate-Outlookfor2021and2022.pdf