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三菱商事、スイス企業と提携し、大気中のCO2を直接回収・除去して創出されたクレジットを企業に売却する仲介事業に乗り出す。「クレジット購入ファシリティ」を創設へ(RIEF)

2021-05-11 22:43:51

DAC001キャプチャ

 

 三菱商事はカーボン吸収事業で実績のあるスイスのサウス・ポール(South Pole)と提携し、「次世代カーボン除去購入ファシリティ」事業に乗り出す。CO2を直接大気中から回収除去し、石灰石のような炭酸塩鉱物に貯留することで生み出されるカーボン除去クレジットを企業等に仲介販売する。2030年までに3億~8億㌦(約320億~870億円)規模のクレジット販売を目指す。「2050年ネットゼロ」に向けた企業の取り組みが進むと、カーボンクレジット需要が高まるとみられており、森林等の吸収源クレジットを補完する期待もある。

 

 (写真は、DAC法で事業展開を進めている1PointFiveの設備)

 

 CO2の削減方法としては、再エネ、省エネ等のCO2フリー事業のほか、植林によって森林等のCO2を吸収する手法も知られる。これらに加えて、手っ取り早くCO2を減らす方法として、注目されているのが、大気中のCO2を直接吸収して除去する技術だ。欧米のベンチャー企業等が複数取り組んでいる。三菱商事らは、こうした技術を開発する事業者と、クレジットを求める企業を仲介するファシリティを提供する。http://rief-jp.org/ct4/72734

 

 サウス・ポールは長年、カーボン削減事業等に取り組んでいる。今回の両社の提携では、大気中のCO2を「Direct Air Capture (DAC)」法で吸収する事業者や、CO2を石灰石や地中等への貯留等技術を開発する事業者等をつなぎ合わせて、回収・除去の認証付きのクレジットを創出する。これらのクレジットを、CO2削減手段として、ネットゼロに向かう企業に対し、「直接回収除去クレジット」として仲介販売する。

 

 両社が提供するファシリティのポートフォリオには、DAC事業で世界最大の事業展開を目指す「1PointFive」(米)の事業も含まれている。1PointFiveの事業は年間100万㌧のCO2の回収・除去を目指し、年内に設備が完成する予定。同事業はこれまでのDAC事業よりも240倍も高い除去機能を有し、商業化が可能とみられている。

 

 DAC手法を使ったカーボン回収・除去技術は現状では、研究開発や設備建設に費用がかさむため、創出されるクレジットの価格は、CO2トン当たり50㌦強から400㌦と、かなりの開きと、金額の格差がある。このため、費用対効果でみると、森林クレジットよりかなりのコストアップになる。

 

 しかし、森林クレジットの創出には時間と土地の確保が必要だが、DACによる直接回収・除去方法は、設備のコストダウンさえ進められれば、いつでも、どこでもCO2を減らせるという利点がある。これらのクレジットは、現在のところ、削減コストが高くても、CO2回収・除去の完全性を重視する大手IT企業等が買い手の中心だ。三菱商事等は、今後、クレジット需要が多様な産業・企業に広がるとみられることから、顧客企業層の拡大を進めていくという。クレジットの購入需要が安定的に増えると、回収・除去コストの低下も見込める。

 

 サウス・ポールの共同創業者であるPatrick Burgi氏は「新設するファシリティは、カーボン回収・除去技術に対して安定的な資金の流れを作り出し、技術の開発を加速する。その結果、カーボン除去コストの削減につながる。われわれのファシリティを通じて認証付きのCO2除去クレジットを購入することで、ネットゼロの宣言企業は、カーボンクレジットのポートフォリオを多様化でき、カーボン除去ソリューションの技術開発の促進にも貢献できる」と意義を強調している。

 

 三菱商事の低カーボンタスクフォース担当のMasao Koyama氏は「サウス・ポールと協働できることを嬉しく思う。われわれはカーボン除去事業者から除去クレジットの購入企業の両方のステークホルダーが、この新たなファシリティが提供するビジネス機会にアクセスできるよう支援していきたい」と述べている。

 

 同社は別途、今年1月には、コンクリート建材にCO2を注入するカーボンリサイクル技術を開発したカナダの「カーボンキュア社(CarbonCure Technologies Inc.)」に資本参画し、同社技術の事業拡大に向けた業務提携を結んでいる。カーボンキュアのカーボンリサイクル技術は、生コンクリート製造時に回収したCO2を固定化・有効利用することでCO2の排出源であるセメントの使用量を削減し、CO2を削減するもの。CO2注入コンクリートの強度や信頼性は従来のコンクリートと変わらず、すでに北米市場を中心に広く商業利用されている。https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2021/files/0000046577_file1.pdf

https://www.southpole.com/news/south-pole-announces-development-of-new-facility-to-scale-up-the-next-generation-of-carbon-removals-together-with-mitsubishi-corporation