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大同特殊鋼、同社初のトランジションボンド、9月に発行。100億円、期間5年の短期。2030年目標への貢献度、明瞭化されず。温室効果ガス排出量が最も多いScope3の目標設定もなし(RIEF)

2022-08-09 22:02:19

Daidoキャプチャ

 

 大同特殊鋼は9日、国内の特殊鋼専業メーカーで初めてトランジション・ボンド発行を9月に発行すると発表した。発行額は100億円、年限5年。同社は2030年にCO2排出量を50%削減(2013年度比)、2050年にカーボンニュートラル目標を掲げ、今回のボンドの資金使途もこれらの長期的な戦略に則って温室効果ガス削減に充当するとしている。だが、発行期限は5年と短く、同社の中期目標にどう貢献するかは十分に説明されていない。同社の温室効果ガス排出量Scope3は、Scope1と同2の合計より多いが、ボンド発行でScope3の削減にどう貢献するかも不明だ。

 

 同社は初のトランジションボンドの発行を、9月上旬とし、資金使途については、Scope1の温室効果ガス削減に資する「製造プロセスの脱炭素化(燃料の脱炭素化)」と、同2の「電力の脱炭素化」を掲げている。前者については、①製鋼設備の高効率化②鋳造・圧延設備の高効率化③脱炭素技術の導入に、後者については④CO2フリー電源への切り換え⑤再生可能エネルギーの導入、をあげている。

 

 「製品供給による脱炭素化」はScope3の対象になる。①EV・ハイブリッド車向けモーター用磁石の研究開発②電動化・自動運転に関する研究開発③リチウムイオン電池用負極材の研究開発④耐水素脆化用鋼の研究開発--等を列挙している。

 

 同社の現在の温室効果ガス排出量(2020年度)は、Scope1が423千㌧、同2が581千㌧、同3が1103千㌧と、同3が最も多い。同社の目標では2030年に同1を24%削減、同2を70%削減とするものの、同3の削減目標は示していない。最も排出量の多い同3の削減目標を定めずに、低炭素化に移行する移行計画に基づくトランジションボンドの移行効果とはどうなのかという疑問が生じる。


 同社はカーボンニュートラル目標等を設定し、今年6月にはTCFD提言に基づく情報開示も実施している。Scope3については、「カテゴリー1(購入した製品サ-ビス)」というサプライチェーン関連が73%と圧倒的に多い。その排出量削減のため、今年度から主要サプライヤーと の「パートナーズミーティング」を導入して同社向け製品のCO2排出量の算定、削減を行う活 動への取り組みを始めているとしている。

 

 また下流顧客向けのCO2排出量削減に貢献できる製品比率を高める製品開発に取り組むとも説明している。その点で、Scope3排出量削減を意識はしているようだ。だが、実際にはScope1~2とは異なり、同3の削減目標値は少なくともグリーン&トランジションファイナンス・フレームワークや今回のトランジションボンドの発表文の中では説明していない。

 

 しかし同社は、フレームワークで示したクライメート・トランジション戦略が、経済産業省が公表した2050年までの「トランジション・ファイナンスに関する鉄鋼分野における技術ロードマップ」と整合しているとし、それをもって今回の「トランジションボンド」の「移行性」を位置づける格好だ。ボンド発行期間中の削減目標ではなく、ロードマップに基づく超長期の技術的可能性が根拠になる形だ。ただ、そうした技術自体、トランジションリスクを抱えていることについての説明はない。

 https://www.daido.co.jp/about/release/2022/220809_transitionbond.html

https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/about/release/2022/220809_transitionbond.pdf