HOME13 原発 |韓国が国民参加の「討論型世論調査」で、建設途中の原発の建設再開を支持。今後の原子力政策は縮小方針。日本は5年前の国民調査で「脱原発」を選択。だが自民党政権は民意を無視(RIEF) |

韓国が国民参加の「討論型世論調査」で、建設途中の原発の建設再開を支持。今後の原子力政策は縮小方針。日本は5年前の国民調査で「脱原発」を選択。だが自民党政権は民意を無視(RIEF)

2017-10-21 23:09:48

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 韓国が原発政策に国民の意見を取り入れ、「現実的な」原発政策を選択した。文在寅(ムン・ジェイン)政権の脱原発政策で建設が一時中断した新古里原発5、6号の建設再開を、国民参加の「討論型世論調査」で支持する一方、今後の原子力政策は、原発「縮小」を求める判断だ。政府もこの選択を受け入れる姿勢。日本でも5年前に同様の調査を実施したが、現政権は国民の脱原発の選択を無視した形が続いている。民意尊重のプロセスでの日韓の差が浮き彫りになった形でもある。

 

 文政権の脱原発政策の焦点となった新古里原発5、6号は、すでに1兆6000億ウォン(約1600億円)が投じられ、29.5%が完成している。そこで、同原発の建設を中止するか工事を再開するかを国民的な議論で決めるため、「公論化委員会」を設置して議論を進めてきた。

 

 同委員会は、討論型世論調査を推進した。8月25日から9月9日に1次調査となる電話調査で2万6人の国民から回答を得て、その中から500人を抽出。うち478人が2次調査に参加した。今月13日に2次調査参加者の98.5%に当たる471人が2泊3日間の総合討論会で3次調査に参加し、討論会最終日の15日に4次調査を終えた。

 

  参加した国民471人に対する最終の4次調査で、建設再開を求める意見が59.5%、建設中断が40.5%となった。「公論化委員会」はこうした結果を踏まえて20日、同原発の建設再開を政府に勧告した。委員会の金知衡(キム・ジヒョン)委員長は、双方の差は19ポイントで「統計的に意味のある差だ」と指摘した。

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 また「全ての年齢層で調査を重ねるごとに建設再開の比率が高まった。20代、30代で上昇率が特に大きかった」と説明した。古里原発建設に投じている資金、安全対策、国全体の将来のエネルギー対策等をじっくり議論する中で、当該の2つの原発については、建設途中で中止するより、安全性を配慮して建設することを国民が選んだ形だ。

 

 回答者が判断の際に重視した要因別にみると、「安全性」が最も多かった。同時に、今後の原子力政策については、原発「縮小」を望む意見が53.2%と最も多く、「維持」の35.5%、「拡大」の9.7%を大きく上回った。このため、勧告書はエネルギー政策では脱原発を進めるようことを提言している。

 

 文在寅大統領はこれまで、同委員会の勧告案について「どのような結果が出てもその結果を尊重して決定を下す」と表明してきた。これを受けて、24日の閣議で建設再開を決定する見通しだ。ただ原発全体を縮小する政策は堅持するとみられる。

 

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 日本でも東京電力福島第一原発事故翌年の2012年、旧民主党政権下で、長期のエネルギー政策の制定を前提として、同様の討論型世論調査を実施した。韓国と同様に段階的に議論を深める方法をとった。まず①7月7日から22日にかけて無作為に選ばれた6849人を対象に世論調査を実施②8月4日から2日間の討論会に参加した285人が討論前に回答③討論後に回答、という手順だった。

 

 結果は、最初の世論調査で原発ゼロのシナリオを支持した割合は全体の32.6%。これが討論前の段階では41.1%となり、討論後に46.7%へと段階的に高まった。つまり、脱原発への理解は討論の進行で深まった。

 

 一方で政府が提案した原発比率15%シナリオを支持する割合は16.8%→18.2%→15.4%。20~25%シナリオの支持者の割合は13.0%→13.3%→13.0%と、いずれもほぼ同率で推移した。脱原発と一定の原発比率を支持する層の差は18.3ポイントで、今回の韓国の調査に近い「有意な差」だった。

 

日本で実施された原発政策をめぐる討論型世論調査の結果
日本で実施された原発政策をめぐる討論型世論調査の結果

 

 旧民主党はこうした調査も踏まえて、脱原発を政策に掲げた。だが、政策についての党内での電力労連系議員などからの異論のほか、経済産業省の難色、経済界の不満等を受け、国民は旧民主党の原発政策への不信感を高める形に変わっていった。その後、自民党政権に代わったが、この時の「国民の民意」は、無視された形で原発再稼働政策が推進されている。

 

 韓国で現在運転中の原発は24基。総発電量の約3割を原発が占める。文政権以前の李明博、朴槿恵両政権は原発増設とプラント輸出を国家の基幹産業に据え、特に朴政権は原発を36基に増やす計画を立てた。しかし、今年5月発足の文政権は新規原発の建設計画を白紙とし、老朽炉の運転を認めない脱原発方針を掲げている。

 

 討論型世論調査は、討論や質疑応答を通じて参加者の意見がどう変化したかを調べる世論調査。無作為抽出の対象者に討論会への出席を打診する時点と、討論会の前後でアンケートを実施し、意見がどう変わったか分析する。1988年に米国で考案され、これまで英国など世界で実施例がある。成功例の一方で、案件によっては効果が得られないとの報告もある。日本では2009~10年に、神奈川県藤沢市が総合計画の策定の際に初めて導入した。

 

http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2017/10/20/0500000000AJP20171020001300882.HTML

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201710/CK2017102002000285.html

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/kokumingiron/dp/120827_01.pdf